ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

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第2章 禁断の恋愛

10、十文字理沙は友達が増える

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 綺麗……

 陽の光が水の中でキラキラ光って、魚の鱗にも反射してる。まるで、星の中泳いでいるみたい……

「アキ、聞こえる?」

「聞こえるよ、モアさん」

 少し遠いけど、モアさんの中性っぽい声がはっきりと聞こえた。

「そのまま潜ると、横に人工的な洞穴ほらあなが見えてくるはずだよ。精霊石はその洞穴の奥にある」

 洞穴の奥?

 それって、まさか――

「おい、それって、主の住処じゃないよな!!」

 ケイ兄さんの焦った声がする。実は、私もそう思ったの。

「そうだよ、そこは主の住処。でも、この時間帯なら巡回に出ているからいないはずだよ」

 耳元でモアさんの声がする。

 モアさん、はずは絶対じゃないんだよ。それに、音がしなくても、身体を動かす度に振動が伝わっていたはずだから、テリトリー内に侵入者がいるって考えるよね。だったら、巡回だとしても引き返すよね。

「アキ?」

 返事がない私を心配して、モアさんは名前を呼ぶ。

 後ろを振り返らなくてもわかる。だって、私を覆い被さるように不自然な影ができているから。

 ……あれ? 襲って来ない?

 一口でパクってされると思ったんだけど、攻撃仕掛けてこないね……もしかして、私を伺ってる?

 相変わらず、耳元はケイ兄さんの焦りと怒りが混じった煩い声がしているけど、そんなのどうでもいい。

 敵意は感じないけど……

 振り返るしか――

 パニックになって、背中を見せたまま逃げるのは悪手。野生動物も魔物も追い掛けて来て捕まえてなぶる。
 
「アキ、もしかして出会ったの?」

 モアさんの緊張感がない声がした。

「……そのまさか。今から振り返るところ」

「会っちゃったか~。身体強化掛けてるから大丈夫だね。大丈夫、食べられはしないから、安心して」

 すっごい、明るい声がした。同時に、ケイ兄さんのキレる声がしたけど、すぐに聞こえなくなった。

『……クロードだよね?』

「えっ!?」

 頭に直接響く声。声変わりする前の少年のよう声だった。私は反射的に振り返る。

 そこにいたのは、一頭の竜だった。

 その頭部だけで私より大きい。でも、全身の鱗がキラキラ光ってて、怖いと感じるより神々しく感じた。

 攻撃しない方がいいって……確かにそうだね、モアさん。自死行為だわ。

『クロードじゃないの?』

 また、頭に直接話し掛けてくる。不快ではないけど、不思議な気分。慣れるまで時間掛かりそう。
 
 それはそうと、可愛らしく頭を傾げても、迫力があるだけだよ!! でもここは、興奮させない方がいい。でも、嘘は吐けない。竜は人の心を読むって本に書いてた!! っていうか、この場でパニックにならない私凄くない!?

「……クロードって誰ですか?」

 おずおずと訊きなおす。

『知らないの? 君たち人族の中で、超有名人なのに? 君、もぐり? でも、クロードと同じ気配がするんだよね。僕が間違うくらい。君、何者? どうやって、ここに来たの? 何が目的なの?』

 矢継早に質問してくる。

 いつ攻撃してくるかわからないなら、ここは真摯な態度で接するべきよね。

「私名前はアキ。冒険者をしてます。ここを案内してくれたのは、エルフのスモアフラさん。目的は精霊石を取りに来ました」

 端的に、言葉を飾らず。訊かれたことだけ答える。

『スモアフラ? そうなんだ……』

 竜はそう呟くと、鼻先を私に近付けた。鼻息かな、水圧が地味に掛かって飛ばされそう。

 もしかして、匂い嗅がれてるの!?

『やっぱり、クロードだ!! すっごく、可愛くなったね!! ちゃんと、約束守ってくれた!! 僕、とても嬉しい!!』

 興奮しながら叫ばれると、頭が痛くなる。でも、そんなこと気にする余裕がなかったよ。だって、竜の両手で抱き締められたから。

 そしてそのまま、もの凄いスピードで私を抱えたまま竜は泳ぎ出す。

 モアさんが、身体強化を掛けてるか確認してきた意味わかったよ!! 掛けてなかったら、死んでるわ!!


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