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第2章 禁断の恋愛

10、十文字理沙は友達が増える

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「それにしてもあんたらはなんでそんなに仲良くなったわけ?」

抱き付く絵美と、抱き付かれる俺に投げ掛けられた理沙からの疑問だった。

「さぁ?なんでだろうな?お隣さんだから?」

正直、絵美とは距離を置いているはずなんだが、何故か毎回近付いてくるのだ。
初対面の時も、公園で別れたらもう会話する気も、遊ぶつもりもなかったし。

「わたしが秀頼君を気に入ったのは、凄かったからかな」

抱き付くのをやめて体勢を元に戻す絵美。
言葉を聞いた理沙は「凄い?」と聞き返す。

「何が凄かったの?」
「……」

じーっと絵美が無言で俺を見てくる。
俺と絵美だけのギフトは秘密なのをしっかり守ってくれて助かる。

「俺手品得意なんだよ」
「手品?」
「そうそう。絵美がかなり楽しんだらしくてね」

ギフトだけは伏せて手品のことだけ情報を開示する。

「へー、それ見たい!明智君の手品見たい!」

『手品できる』と言うと、見たいとかえってきやすい。
みんな手品やマジックは好きだからね。

「見せるのは良いんだが、今は道具がないからな。家に帰ってトランプで見せるよ」
「わかった」

帰ろうと引き返していると絵美が、俺に小声で質問してきた。

「ご、ごめんね。ギフト使うことになりそうで……」
「気にすんな、ギフト使わないでも簡単な手品はできるから」
「え?そうなんだ。でも、前と同じ手品だったらすぐできるんじゃ?」
「できるけど、ダメダメ。俺1人に対して同じ手品見せない主義だから。新鮮味とかワクワク感失うでしょ」
「なにそれ、素敵!」
「でしょでしょ」

手品で『これ前と同じやつ!』とかマンネリを思わせるのが凄く嫌いなのだ。
絵美がいなかったら同じく10円玉手品を理沙にしていたかもしれないが、絵美がいる以上同じ手品は見せない。
転生する前からのこだわりである。


―――――


2人を自宅へ招き入れる。
おばさんさんが「あらあら」と2人の女子を連れてきたことを嬉しそうに見ていた。

おばさんとは血の繋がりはないが、俺の結婚とかは楽しみにしているらしい(結婚の年齢まで生きていれれば良いが……)。

俺と血の繋がりがあるのは、叔父の方なのである。

「お邪魔しまーす!」
「お邪魔します」

絵美と理沙がおばさんに挨拶を済ませて、部屋へ案内する。
そして、本当に簡単なトランプを手品を披露する。

あなたが選んだカードはこれですね?、と指摘する種も仕掛けもわかれば誰でもやれる程度のもの。

「秀頼君すごーい」
「え?どうなっているんですか!?」

理沙の選んだカードはどれなのかを当てると、2人も大盛り上がりである。
やっぱり手品は驚かれるとやった甲斐があるというものだ。

「てじなーにゃ」
「え?本当になんなのそれ?」
「てじなーにゃ?……なんですかそれ?」
「ジェネレーションギャップに泣ける……」

絵美も理沙もそこだけウケが悪いのだ。
前世では知っている人にはウケたのになぁ。


『てじなーにゃ』
『豊臣君、それ懐かしいね!』
『懐かしいとか言うなよ!ジェネレーションギャップ感じるだろ』
『あははは』

そうそう、こんな感じであの子と盛り上がったりしたんだよ。
俺が死んでから、あの人何してんだろうな……?
まだ元気にしてると俺も嬉しい。
まぁ……、もう今さら俺のことなんて忘れてるかもだけど。
転生前の恋愛事情を引っ張んなよって感じだよな。
女々しいったらないぜ。
でもでも!
俺以外の男と付き合っていたり、結婚してたりするとか考えるとやきもきするー!
あの子と付き合いたかったよ、本当に……。


「その『てじなーにゃ』って調べても出てこないんですよ」
「兄さんと語りあってる萌え文化的なものですか?語尾ににゃと付けるネコ耳メイドみたいな」
「へー、秀頼君そんな話してるんだー」
「え、絵美さん?声怖くない?」

そっか、『悲しみの連鎖を断ち切り』の世界そのものに「てじなーにゃ」の単語が存在しないのか。
だから懐かしいとか言ってもらえんのか。
ジェネレーションギャップですらないのか、残念な知識を聞いたものである。

「でも、今日はありがとうね2人共。なんか1日で友達が増えた感じ」
「もう理沙ちゃんと友達だよ!ね、秀頼君?」
「まぁ、理沙がそう思ってくれるなら嬉しいかな」

タケルなしで理沙と会話したのはじめてだし。

「これからよろしくね、2人共!」

原作キャラである絵美もタケルも理沙も絡みたくないのに、みんな良い奴だから絡みたくなるんだよな……。
原作の流れになるかもしれないのが怖い。

でも、居心地の良い空間は壊したくはないなと今はそれだけ思うのであった。
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