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第2章 禁断の恋愛

1、全力でギャルゲーを語り合う

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『秀頼くーん、あそぼー』

絵美が家に尋ねてくる音がする。
「あらあら、絵美ちゃんいっらしゃい」とおばさんは歓迎をして家に招き入れる。

おかしい……。
ゲーム内のキャラクターと絡む気はない筈なのに、なんで向こう側から遊びに来るんだろ……。
これがゲームの強制力というものか?

「ほら秀頼、絵美ちゃんが遊びに来たよ」
「来ちゃいましたー」
「帰ってくれよ……」

最近叔父さんから買ってもらったスマブラで遊んでいたのに、絵美の到来で中断をせざるを得なくなる。
何故ならコントローラーが1つしか持っていないからだ。
それに俺はもっとゲームをしていたい。
あと数ヶ月したら小学校が始まる。
学校が始まったらずっとゲームをしている生活なんか送れなくなる。
転生する前はゲーム卒業して恋愛するぜーって息巻いていたのにな……。
俺は明智秀頼ではなくて十文字タケルに転生したかったぜ……。
『悲しみの連鎖を断ち切り』で可愛いヒロインが山ほど居るんだよ!
サブキャラの絵美ですらそこそこ可愛い顔をしている。
ヒロインともなればもっと可愛かったり、美人が居る。

会ってみてええええええ!
推しと結婚してええええええ!

本編の秀頼まではないにしても、俺もちょっと主人公のタケルがムカついてきそうだ……。
あいつ、無能のクセにすっげーモテモテなんだよ。
なんで秀頼には女の影が絵美しかいないんだよ。
しかも操っているので絵美からの好感度はゼロ。
多分目の前の絵美からの好感度もゼロだと思われる。

「秀頼君、またゲームしてるー」
「あの……、ええじゃないっすか……」

公園で遊んで以降ちょくちょくと絵美は俺を遊びに誘う様になっていた。
なんかおかしい気がする……。
確かにゲームの秀頼はずっと絵美と一緒だった。
その原因はギフトで絵美の意思を操っていたからに過ぎない。

しかし、俺は絵美に対してギフトで意思を曲げる行為をしたつもりはない。
なんかが狂っている気がする。

気になる点として好感度ゼロで家に来るんだとしたら、好感度マックスならどんなイベントが待っているんだろう。

「でもじゃーん!いつもゲームしている秀頼君に合わせてコントローラーを買ってもらっちゃいましたー」
「え?コントローラーを買ったの?」
「うん。お母さんにコントローラーだけ買ってもらったの」
「俺の家のゲームをするためだけにコントローラーを買ったのか……」

どんな親だと、絵美の家族に対して無意識に突っ込んでいた。

「うん!たのしーよ!」
「接続されていないコントローラーだけ買ってもらっても楽しいのか……」

ブランコに座っただけで楽しんだり、滑り台を登っただけで楽しい感情になれる女だ。
コントローラーを握るだけで楽しいのだろう。

「でも秀頼君、色々なゲームを持ってるねー」
「ああ、毎年ギャルゲーが熱い」
「ギャルゲー?」

現在はストレス発散のためにスマブラをしているが、本来の俺はギャルゲーマーである。
しかし、どのゲーム屋を探しても『悲しみの連鎖を断ち切り』というゲームは存在しなかった。
インターネットにも、その名前では何もヒットをしなかった。

「なんか女の子がたくさん描かれてるねー」
「そのゲームさ、人見知りするお嬢様が可愛いのなんのって!ゲーム開始時は『あの……、男の人は苦手なのですいません……』って頭を下げられる出会いなのにさ、後半になる頃には『好き好き』って言ってくれるんよ。ひゃあああ、俺も好き!」

流石にPC版を買うことはできなかったので、コンシューマーで我慢である。
いいよね、お嬢様属性!

「……楽しくない」
「え……?」

滑り台に登るだけで楽しいと嬉しがる女が楽しくないというとかちょっと怖いぞ……。
何があったんだ!?

「どうした絵美!?」

風邪でも引いたのか、病気にでもなったのかとこちらが不安になる。
俺の額を手で触った後に、絵美の額を触る。
体温はそこまで差があるようには思えないが……。

「どうしたの秀頼君?」
「いや、風邪でも引いたのかと……」
「そういう時はこうするんだよ」
「え?」

絵美が自分の前髪を上げて、俺の額にくっつけてくる。
真正面に絵美の顔がある。
ど、どこで覚えてくるのこういうの……?

「……」
「……なんか絵美の額の温度上がってない?」
「はう……」

パッと額を離す絵美。
なんか本気で風邪でも引いたのかと心配する。

「ど、どこで覚えてくるのそういうの……?」
「お、お母さんが見ていたテレビで……」
「ふぅ……」

大きく深呼吸をしてざわついた心を落ち着かせる。
小学生に入る前の子供ですらこんな知識があるのか。
ギャルゲーの世界って怖い……。
風邪引いたらキスして治すんだよとか言われたら俺は無条件で惚れるかもしれない……。

「秀頼君、なんで風邪引いたと思ったの?」
「いや、いつも何しても『たのしー』って言う奴が『楽しくない』とか言ったらなんだと思うじゃん」
「だって、秀頼君が『好き』って……」
「え?」

絵美がゲームパッケージを見せてくる。
お嬢様専門の学校に、主人公の男が転校してくる内容のゲームである。

「そうそう、左端の子が人と話すのが苦手ってキャラなのに、積極的にキスとかイチャイチャしてくるんだよ!『あなただけは特別です』って……。いや、まいっちゃうよ!」
「……楽しくない」
「え?なんで?」

なんか今日の絵美は不機嫌だ。
そんなに家の中で遊ぶのが嫌なのだろうか……?
絵美はインドアの顔してアウトドア派なのかもしれない。

「ほらほら、この左の子可愛いでしょ」
「……ぜんぜん。絵じゃん」
「禁句だよ、禁句!」

ダメだ……。
絵美に取り繕うスキがない。
このゲームの世界だって十分絵の世界の様な気がするんだけど……。

「ほらほらよく見ろって。中身の可愛さは伝わらんかもしれんがイラストを見てくれって!この子さ、泣き黒子キャラだよ。目元の黒子とか可愛いじゃん」
「目元の黒子……?」
「そうそう、目元に黒子ある子って無条件に可愛いって思うじゃん」
「え?そ、そうかな?」
「女の子で目元に黒子あるってだけで可愛さ100倍増しだ!超好き!」
「そ、そんな……。恥ずかしいって……」

そうだ、叔父とおばさんにこんな話はできない。
でも、俺はギャルゲーを語り合う友人がいないのに飢えていたんだ。
そうか、これが推しを語り合う感覚なのを忘れていたよ!
前世のオタク友達元気にしてっかなー……。

「目元の黒子も可愛いし、好き好きって伝わってくるのが超素敵」
「そ、そんなことないって!照れるって秀頼君!」
「ミントちゃん最高おおおおお!」
「……は?」
「え?なんでそんなに絵美のテンション上がって下がってなの?」

中身がもうおっさんみたいなものだから、小学生以下の子供の気持ちが全く伝わらない……。
もう少しギャルゲーをやり込んで女の子の気持ちを理解しよう。
もう1周、ミントちゃんルート攻略します。

「このゲームちょっと捨ててくるね……」
「待って絵美ちゃああああああん!?」

全力で引き留めたけど、絵美の前でこういったゲームを出すのが禁止されてしまった……。
残念……。

今度は乙女ゲームを買ってきて、可愛い女主人公の話で盛り上がろう。
乙女ゲームなら絵美も喜ぶ筈だと思う。
今度に揃えておこうと誓うのであった。
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