5 / 136
第1章 覚醒
5、佐々木絵美
しおりを挟む
確かに、存在する。
『佐々木絵美』は『悲しみの連鎖を断ち切り』のサブキャラクターとして登場する。
そう、ヒロイン役ではなく、サブキャラなのだ。
影の薄いサブキャラまで俺は頭がまわっていなかった。
幼い顔立ち、左目の下の泣き黒子、身長も低い、短めのツインテールの髪型、それが絵美のビジュアル。
サブキャラなので、見た目による立ち絵の差分はほぼないぞんざいな扱い。
性格的には、『依存』のキャラクター。
ただし、主人公の十文字タケルではなくて明智秀頼に対して『依存』しているキャラクターである。
『わたしと秀頼君は、運命の赤い糸で結ばれているんだよ』、
公式サイトで紹介される絵美のセリフがこれ。
『初代・悲しみの連鎖を断ち切り』の登場する秀頼の彼女役である。
このセリフは、まだ鬱ゲー要素が皆無で体験版詐欺をやらかした共通ルートだったかのセリフ。
絵美がナンパで絡まれているところをさりげなく秀頼が助けるシーンでの彼女の発言であり、『秀頼の普段はチャラけているが、やる時はやる正義感のある親友役の男』と印象付けし、ミスリードを誘う描写のシーン。
しかも、初代の公式サイトでもその様な嘘の説明がされてあった記憶がある。
それで発売後に炎上するのである……。
こ、この女の子、バリバリの関係者じゃねーか!
確か秀頼の家の隣に住んでる設定とかあった様な……。
さっきおばさんが喋ってた話題のやつ!
ゲームが進行してるっ!
俺の意思とか決意を嘲笑うかの様に、ゲームが俺の現実に近付いてきている。
「よろしくね、秀頼君」
「あ、あぁ……」
しかも彼女だから相思相愛かと言われればそんなことはない。
秀頼から『あのバカ女が好みなわけないだろ?胸もないし、顔も美人じゃないしな。ただ都合よく俺のために動く駒が欲しかったんだ。だから『命令支配』で俺の彼女役って役割を立てた。それだけだよ』と、主人公に宣言されている。
確かに絵美は美人ではなく、可愛い寄りであるがあんまりな言い分である。
秀頼の彼女っていうフィルターがなければヒロインでも通じるキャラデザである。
『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズで不人気投票堂々の3位である(1位2位はぶっちぎりで俺と主人公)。
ヒロインへの嫌がらせ、秀頼への依存、2作目以降のあんまりな扱いからもはやネタキャラ扱いされるポンコツである。
俺は嫌いではないキャラだが、『幸が薄すぎるキャラやなー』くらいの印象しか残ってない。
「すごい、はじめてギフト見てわたし感動したよ」
「……それは良かったよ」
そのギフトで散々な人生を送ることになる彼女から、感動されるのは違和感しかなかった……。
本当に彼女は哀れな役割なのだから。
ゲームの製作陣からも愛のない扱いしかされない被害者だ。
「俺と絵美だけの秘密だ。俺のギフトはお父さんにもお母さんにも友達にも誰にも言ってはダメだ」
「うん!秀頼君との約束だね!」
この調子なら多分言わないだろう。
わざわざギフトを発動させる必要もない。
俺も人間を信頼したいしね。
「指切りだっけ?あれ、しようよ」
「……わかった」
「指折りげんまん、ウソ付いたら針千本のーます。指切った」
歌唱は全部絵美にしてもらい、俺は黙って指を預けた。
絵美がただ俺がギフトを使えることの口封じをするだけなので、俺は約束を破りようがない。
ただ子供が指切りとか好きなのは前世と変わらないなと思う。
「大事にするね、10円玉」
「好きにして良いよ」
どんなに大事にしたところで10円の価値しかないしね。
財布に入れてたら、ジュース買う時とかに使ってしまうだろう。
「じゃあ、帰るか」
「うん!」
俺と絵美は公園を後にするために歩きだす。
「わたし、今日引っ越してきたんだー」
「やっぱり隣の家の子か……」
「え?秀頼君の家隣なの!?これからよろしくね!」
「あ、あぁ……」
ぶっちゃけあんまり絵美と干渉する気はない。
ゲームにわざわざ巻き込まれる様なことはするつもりはない。
俺はただ、のらりくらりと『悲しみの連鎖を断ち切り』のゲームから抜け出してみせる。
「本当に隣の家なんだねっ!」
何が嬉しいのか絵美ははしゃいでいる。
呑気なもんだな、10年後には俺も絵美も死んでるかもしれないのに。
「あら、絵美!」
「あっ、お母さん!」
家の近くになると絵美のお母さんが向かいに来たのか外を歩いていた。
「片付け終わったから公園に迎えに行こうとしてからちょうど良かったわ」
「うん!」
なるほど、そんな理由で絵美が公園に来ていたのか。
逆に俺は公園に行かなくて部屋でゴロゴロしてた方が良かったかもしれない。
「そちらの子は?」
「秀頼君!わたしの家の隣だって!」
「あら?ということは明智さんのお子さん?」
絵美のお母さんからそう聞かれて「はい、よろしくお願いいたします」と挨拶を返しておく。
「礼儀正しい子ですね。絵美と遊んでくれてありがとうございます」
「いえ、こちらこそ楽しかったですから」
「また遊ぼうねー、秀頼君!」
「あ、あぁ」
正直ゲームのキャラクターと知ってしまった以上、もう一生遊びたくない人間ではあるのだが。
「絵美もずいぶん明智君に懐いた様で。これから娘をよろしくお願いいたします」
会釈して佐々木親子と別れた。
娘が不幸になるということは、あの人も不幸になるよな……。
絵美の末路、絵美の家族の末路を知っている。
その元凶は、全て俺なのだから……。
『佐々木絵美』は『悲しみの連鎖を断ち切り』のサブキャラクターとして登場する。
そう、ヒロイン役ではなく、サブキャラなのだ。
影の薄いサブキャラまで俺は頭がまわっていなかった。
幼い顔立ち、左目の下の泣き黒子、身長も低い、短めのツインテールの髪型、それが絵美のビジュアル。
サブキャラなので、見た目による立ち絵の差分はほぼないぞんざいな扱い。
性格的には、『依存』のキャラクター。
ただし、主人公の十文字タケルではなくて明智秀頼に対して『依存』しているキャラクターである。
『わたしと秀頼君は、運命の赤い糸で結ばれているんだよ』、
公式サイトで紹介される絵美のセリフがこれ。
『初代・悲しみの連鎖を断ち切り』の登場する秀頼の彼女役である。
このセリフは、まだ鬱ゲー要素が皆無で体験版詐欺をやらかした共通ルートだったかのセリフ。
絵美がナンパで絡まれているところをさりげなく秀頼が助けるシーンでの彼女の発言であり、『秀頼の普段はチャラけているが、やる時はやる正義感のある親友役の男』と印象付けし、ミスリードを誘う描写のシーン。
しかも、初代の公式サイトでもその様な嘘の説明がされてあった記憶がある。
それで発売後に炎上するのである……。
こ、この女の子、バリバリの関係者じゃねーか!
確か秀頼の家の隣に住んでる設定とかあった様な……。
さっきおばさんが喋ってた話題のやつ!
ゲームが進行してるっ!
俺の意思とか決意を嘲笑うかの様に、ゲームが俺の現実に近付いてきている。
「よろしくね、秀頼君」
「あ、あぁ……」
しかも彼女だから相思相愛かと言われればそんなことはない。
秀頼から『あのバカ女が好みなわけないだろ?胸もないし、顔も美人じゃないしな。ただ都合よく俺のために動く駒が欲しかったんだ。だから『命令支配』で俺の彼女役って役割を立てた。それだけだよ』と、主人公に宣言されている。
確かに絵美は美人ではなく、可愛い寄りであるがあんまりな言い分である。
秀頼の彼女っていうフィルターがなければヒロインでも通じるキャラデザである。
『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズで不人気投票堂々の3位である(1位2位はぶっちぎりで俺と主人公)。
ヒロインへの嫌がらせ、秀頼への依存、2作目以降のあんまりな扱いからもはやネタキャラ扱いされるポンコツである。
俺は嫌いではないキャラだが、『幸が薄すぎるキャラやなー』くらいの印象しか残ってない。
「すごい、はじめてギフト見てわたし感動したよ」
「……それは良かったよ」
そのギフトで散々な人生を送ることになる彼女から、感動されるのは違和感しかなかった……。
本当に彼女は哀れな役割なのだから。
ゲームの製作陣からも愛のない扱いしかされない被害者だ。
「俺と絵美だけの秘密だ。俺のギフトはお父さんにもお母さんにも友達にも誰にも言ってはダメだ」
「うん!秀頼君との約束だね!」
この調子なら多分言わないだろう。
わざわざギフトを発動させる必要もない。
俺も人間を信頼したいしね。
「指切りだっけ?あれ、しようよ」
「……わかった」
「指折りげんまん、ウソ付いたら針千本のーます。指切った」
歌唱は全部絵美にしてもらい、俺は黙って指を預けた。
絵美がただ俺がギフトを使えることの口封じをするだけなので、俺は約束を破りようがない。
ただ子供が指切りとか好きなのは前世と変わらないなと思う。
「大事にするね、10円玉」
「好きにして良いよ」
どんなに大事にしたところで10円の価値しかないしね。
財布に入れてたら、ジュース買う時とかに使ってしまうだろう。
「じゃあ、帰るか」
「うん!」
俺と絵美は公園を後にするために歩きだす。
「わたし、今日引っ越してきたんだー」
「やっぱり隣の家の子か……」
「え?秀頼君の家隣なの!?これからよろしくね!」
「あ、あぁ……」
ぶっちゃけあんまり絵美と干渉する気はない。
ゲームにわざわざ巻き込まれる様なことはするつもりはない。
俺はただ、のらりくらりと『悲しみの連鎖を断ち切り』のゲームから抜け出してみせる。
「本当に隣の家なんだねっ!」
何が嬉しいのか絵美ははしゃいでいる。
呑気なもんだな、10年後には俺も絵美も死んでるかもしれないのに。
「あら、絵美!」
「あっ、お母さん!」
家の近くになると絵美のお母さんが向かいに来たのか外を歩いていた。
「片付け終わったから公園に迎えに行こうとしてからちょうど良かったわ」
「うん!」
なるほど、そんな理由で絵美が公園に来ていたのか。
逆に俺は公園に行かなくて部屋でゴロゴロしてた方が良かったかもしれない。
「そちらの子は?」
「秀頼君!わたしの家の隣だって!」
「あら?ということは明智さんのお子さん?」
絵美のお母さんからそう聞かれて「はい、よろしくお願いいたします」と挨拶を返しておく。
「礼儀正しい子ですね。絵美と遊んでくれてありがとうございます」
「いえ、こちらこそ楽しかったですから」
「また遊ぼうねー、秀頼君!」
「あ、あぁ」
正直ゲームのキャラクターと知ってしまった以上、もう一生遊びたくない人間ではあるのだが。
「絵美もずいぶん明智君に懐いた様で。これから娘をよろしくお願いいたします」
会釈して佐々木親子と別れた。
娘が不幸になるということは、あの人も不幸になるよな……。
絵美の末路、絵美の家族の末路を知っている。
その元凶は、全て俺なのだから……。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~
月見酒
ファンタジー
俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。
そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。
しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。
「ここはどこだよ!」
夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。
あげくにステータスを見ると魔力は皆無。
仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。
「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」
それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?
それから五年後。
どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。
魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!
見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる!
「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」
================================
月見酒です。
正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
引きこもりが乙女ゲームに転生したら
おもち
ファンタジー
小中学校で信頼していた人々に裏切られ
すっかり引きこもりになってしまった
女子高生マナ
ある日目が覚めると大好きだった乙女ゲームの世界に転生していて⁉︎
心機一転「こんどこそ明るい人生を!」と意気込むものの‥
転生したキャラが思いもよらぬ人物で--
「前世であったことに比べればなんとかなる!」前世で培った強すぎるメンタルで
男装して乙女ゲームの物語無視して突き進む
これは人を信じることを諦めた少女
の突飛な行動でまわりを巻き込み愛されていく物語
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
前世の記憶を持った公爵令嬢は知らないうちに傲慢になってました。
白雪エリカ
恋愛
前世で大好きだった「恋の花が咲き誇る」略して恋咲って乙女ゲームの悪役令嬢に生まれ変わっちゃったみたいで!やばくないですか!?このまま行ったら私、国外追放か最果ての修道院なんですよっ!
…ってあれ、なんか知らないストーリーになってる!?そんなの私知らないし認めないから!!
素人が書く物語なので非難中傷はやめてください。
でも誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる