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第1章 覚醒

2、明智秀頼という男

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俺は発現したギフトの力に喜びを感じた。
これさえあれば、散々俺に暴力を振るってきた叔父に復讐ができるのだから。
そうだ、俺にはその力もその資格だって持っている。

神様から与えられたギフトを存分に使ってやろうではないかと思い立ち上がる。

「ひ、秀頼!大丈夫かい!」

そこへおばさんが俺のところへやって来た。
毎日叔父の暴力タイムが終わると心配しに来てくれる。
だが、彼女も叔父にはビビッているために大っぴらに俺の味方はできないのだ。

「大丈夫ですよおばさん。【それよりも、今日の夕飯はハンバーグがいいな】」
「そっか。じゃあハンバーグもこれから作ろうか」

おばさんについては好きでも嫌いでもない。
俺はこの夫婦に引き取られて人間嫌いになっていた。
でも、このギフトのおかげで俺は人間が大好きになれそうであった。

「叔父さん、【いまから心を入れ替えて俺に一生尽くすんだ。俺のためにマジメに働け。お前の娯楽には一切お金を使うことを禁ずる。当然暴力も禁ずる。反抗も禁ずる。俺に都合よく生き続けろ。】」

そうやってギフトの強制力を利用した。
おばさんは突然変わりだした叔父に驚いていたが、なぜこうなったのかは俺は教えないことにした。

――まるでクズゲスな明智秀頼みたいだな……。

「ん?」

いま、俺の思考にわけのわからないものが浮かんだ。
明智秀頼みたい?
そこでうーんと考え込んでいると脳内に色々な記憶が思い出されるのであった。


―――――


『悲しみの連鎖を断ち切り』。
それは俺が前世で1番はまっていたギャルゲーである。

十文字タケルという男が主人公の学園ものギャルゲーである。
当然ギャルゲーの主人公ということもあり、とにかくモテモテの主人公である。
そして、そのゲームの主人公のチャラ男の親友役として登場するのが明智秀頼という男である。

しかし、ただのギャルゲーの親友役であるならば問題はない。
というか、『悲しみの連鎖を断ち切り』は確かに恋愛要素もありイチャイチャ要素も強いのだが、実は鬱ゲー要素も遥かに高い。

その鬱ゲー要素を加速させる原因が何を隠そう、この明智秀頼である。
この男の存在のみで、対象年齢が爆上げされる。

表向きは十文字タケルの幼馴染の親友であるが、その裏では彼を嫌い暗躍するキャラクターであることが物語の後半で明かされる。
全ギャルゲー対象の『嫌いな親友キャラランキング』では殿堂入りをするレベルのクズでゲス男である。

『人に命令を下す』ギフト、通称『命令支配』を悪用し、とにかくヒロインを不幸に陥れる。

幼い時に、暴力に晒されて価値観が狂っているという背景があるが、『それを言い訳にしているみたいでムカつく。会社側がユーザーに同情させようとしているけど正直滑っている』と揶揄されるくらいに叩かれる存在。

ヒロインは可愛いし、絵もレベルが高い。
シナリオも凝っている。
ただ、明智秀頼が存在するというだけで低評価のクソゲーと呼ぶ者まで存在する。

こういったクズでゲスなキャラはネタキャラ扱いもされたりするのだが、こいつだけはネタキャラ扱いには分類されずにただただ不快なキャラとして有名である。
ゲームは知らないが、明智秀頼は知っているというレベルの知名度を誇る。

声優の演技も素晴らしいイケボだが、秀頼を演じた途端に他の声優の仕事が来なくなり、もっぱら秀頼専用声優になるという中の人にまで迷惑をかける存在。

そして、16~18歳までで大抵命を落とす。
なぜ命を落とす年齢にズレがあるのかと言うと、この『悲しみの連鎖を断ち切り』は全3部作という大作ゲームなのである。

シリーズごとに高校1年の学園生活を送る。
十文字タケルが高校入学から卒業を描写するのだ。

初代ではヒロインの個別ルートで死亡の運命を辿る秀頼。
だが、ヒロインとの誰ともくっつかなかったEDを迎えることで秀頼は延命。
セカンドでもヒロインの個別ルートでは死亡するが、同じく主人公がヒロインとくっつかないことで、秀頼も延命。
ファイナルシーズンでは必ず死亡の運命を辿る。

バッドエンドでは秀頼生存、ヒロインや主人公死亡EDも存在するが需要はない。

とにかく、そんなゲームの記憶が山の様にあふれ出してきた……。


―――――


「ウソ……、俺秀頼に転生しちゃった……?」

叔父に暴行された過去を持ち、『命令支配』で自殺をそそのかして死亡させた過去が初代で語られている。
どう考えても、これ俺のことだよな……。

「うわああああああ、どどどど、どうすればいいんだ……」

叔父に暴行されて思い出された前世の記憶と、ゲームの記憶。
当然、俺だって秀頼なんてキャラクター嫌いだよ……。

「めっちゃ危険な能力じゃんギフト……」

俺に宿されたギフトの能力は、神様から与えられた力ではなくて、悪魔から与えられた力と同意義なのであった……。
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