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光の家
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中学に入学して早一週間。
学校生活にもようやく慣れて来て、光の家で一緒に生活する同級生の迅とさくらは、部活も決まり学校生活を満喫しているようだ。
それに比べて俺、臼井來は、ドクターストップで部活には、参加できないし。
今日から、注射も打たないといけないしで、学校から帰宅して絶賛逃走中だ。
俺は、内蔵が硬くなる難病を患っている。
成長と共に内蔵の機能が低下して硬くなり、その影響から、膀胱も機能しなくなり、今では尿を自力で出せなくなった。
それに肺も膨らみにくくなり、1日2回の吸入で肺を柔らかくしているが、いずれ人工呼吸器が必要になるんだとか…。
「らーい、そろそろ時間切れ。お前吸入もまだだろ。」
光の家での部屋担当の職員 工藤先生に捕まり、小脇に抱えられるように職員室の奥に連れ込まれた。
職員室の奥は簡易的にベッドが1床置かれていて、俺はここで度々処置を受けていた。
「ははは。ようやく来た。注射は直ぐに済むから、少しの辛抱だよ。」
光の家に常駐している男性医師の鷹木先生が待ち構えていて、安心させるように柔らかく目元を綻ばせた。
だけど俺はその笑みには騙されない!
「工藤先生にこのまま抱えといて貰おうな。背中消毒するよ。」
ガタイのいい工藤先生が膝の上に俺をうつ伏せに寝かせ覆い被さるように体を固定してくる。
「ま、待って!嫌だっ!鷹先生、逃げて悪かったって!」
足をバタつかせ抗議するも、背中にヒヤッとした物があたり、それが消毒だと気づいた瞬間に身を捩り、どうにか工藤先生の拘束から逃れた。
「ホントすばしっこい奴だなぁ。來、注射の時間決まってるんだから。」
「…分かってんよ!でも心の準備ができてねぇの!…吸入してからにする。」
「いいよ。いいよ。じゃあそうしようか。息苦しいと辛いもんな。」
そう言いすかさず吸入の準備をした鷹木先生は、吸入口を咥えさせてくる。
本当は吸入も副作用で動悸がするから嫌なんだけど、背中…腎臓に注射をされる方がもっと怖くて嫌だったから大人しく吸入を始めた。
30分の吸入は長くて退屈だ。
職員室の窓からは、中庭が見えて、L字型の建物の向こう端にある勉強部屋から、宿題を終えた小学生が出て来て外で遊んでいた。
「ただいまー!」
「おかえりなさい。」
職員室は、下駄箱と隣合っているため子供たちが帰って来た姿がよく見える。
そのまま先生に挨拶して、自室に向かったり、食堂におやつを食べに行く子がいたりする。
「來くん、今日のおやつ手作りクッキーだったよ!」
「…ふぅーん。」
小学2年生のゆきやが話し掛けてくる。
「僕はココアのが美味しかったよ。來くんは?」
「…はぁ。今話せないから、後にして?」
ピー…ピー…
ほら見ろ…。吸入口を離して喋ったら直ぐに機械が吸入できてないと報せてくる。
「ゆきやくん、お喋りはまた後にしよう。」
吸入機を勝手に触ると先生に怒られるから、黙って待ってたら先生が飛んで来て、ピーピー音を停止するボタンを押した。
「來くん、退屈だと思うけど後10分で終わるから、しっかりお薬吸っててね。」
「…ん~。」
吸入が終わりしだいどこに隠れようか…。
俺は、見えない所で何かされる事に何故かものすごく恐怖心がある。
それがトラウマなのかなんなのかは正直分からないけど、だから血尿が出始めて、腎臓に注射を打たないといけないって言われた時から全力拒否していたが、それでもやらないと良くならない。
分かっているけど、怖くて堪らないんだ。
学校生活にもようやく慣れて来て、光の家で一緒に生活する同級生の迅とさくらは、部活も決まり学校生活を満喫しているようだ。
それに比べて俺、臼井來は、ドクターストップで部活には、参加できないし。
今日から、注射も打たないといけないしで、学校から帰宅して絶賛逃走中だ。
俺は、内蔵が硬くなる難病を患っている。
成長と共に内蔵の機能が低下して硬くなり、その影響から、膀胱も機能しなくなり、今では尿を自力で出せなくなった。
それに肺も膨らみにくくなり、1日2回の吸入で肺を柔らかくしているが、いずれ人工呼吸器が必要になるんだとか…。
「らーい、そろそろ時間切れ。お前吸入もまだだろ。」
光の家での部屋担当の職員 工藤先生に捕まり、小脇に抱えられるように職員室の奥に連れ込まれた。
職員室の奥は簡易的にベッドが1床置かれていて、俺はここで度々処置を受けていた。
「ははは。ようやく来た。注射は直ぐに済むから、少しの辛抱だよ。」
光の家に常駐している男性医師の鷹木先生が待ち構えていて、安心させるように柔らかく目元を綻ばせた。
だけど俺はその笑みには騙されない!
「工藤先生にこのまま抱えといて貰おうな。背中消毒するよ。」
ガタイのいい工藤先生が膝の上に俺をうつ伏せに寝かせ覆い被さるように体を固定してくる。
「ま、待って!嫌だっ!鷹先生、逃げて悪かったって!」
足をバタつかせ抗議するも、背中にヒヤッとした物があたり、それが消毒だと気づいた瞬間に身を捩り、どうにか工藤先生の拘束から逃れた。
「ホントすばしっこい奴だなぁ。來、注射の時間決まってるんだから。」
「…分かってんよ!でも心の準備ができてねぇの!…吸入してからにする。」
「いいよ。いいよ。じゃあそうしようか。息苦しいと辛いもんな。」
そう言いすかさず吸入の準備をした鷹木先生は、吸入口を咥えさせてくる。
本当は吸入も副作用で動悸がするから嫌なんだけど、背中…腎臓に注射をされる方がもっと怖くて嫌だったから大人しく吸入を始めた。
30分の吸入は長くて退屈だ。
職員室の窓からは、中庭が見えて、L字型の建物の向こう端にある勉強部屋から、宿題を終えた小学生が出て来て外で遊んでいた。
「ただいまー!」
「おかえりなさい。」
職員室は、下駄箱と隣合っているため子供たちが帰って来た姿がよく見える。
そのまま先生に挨拶して、自室に向かったり、食堂におやつを食べに行く子がいたりする。
「來くん、今日のおやつ手作りクッキーだったよ!」
「…ふぅーん。」
小学2年生のゆきやが話し掛けてくる。
「僕はココアのが美味しかったよ。來くんは?」
「…はぁ。今話せないから、後にして?」
ピー…ピー…
ほら見ろ…。吸入口を離して喋ったら直ぐに機械が吸入できてないと報せてくる。
「ゆきやくん、お喋りはまた後にしよう。」
吸入機を勝手に触ると先生に怒られるから、黙って待ってたら先生が飛んで来て、ピーピー音を停止するボタンを押した。
「來くん、退屈だと思うけど後10分で終わるから、しっかりお薬吸っててね。」
「…ん~。」
吸入が終わりしだいどこに隠れようか…。
俺は、見えない所で何かされる事に何故かものすごく恐怖心がある。
それがトラウマなのかなんなのかは正直分からないけど、だから血尿が出始めて、腎臓に注射を打たないといけないって言われた時から全力拒否していたが、それでもやらないと良くならない。
分かっているけど、怖くて堪らないんだ。
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