朔の生きる道

ほたる

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父さんの日課

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父side

9時半に帰宅した俺は、スーツ姿で夕飯を食べていた蒼と隣りでパソコンを弄っている浬に迎えられた。

「ただいま。母さんは?」

「おかえり。母さん、今風呂入ってるよ。」

「…………。」

「そうか…。」

リビングの一角にマットレスが敷かれ朔が寝ているのに気がついた。
こんな早い時間に寝ているのは珍しい。

「朔、どうした?調子悪いのか?」

「あぁ…風呂でてんかん発作起こしたらしいよ。」

「それでか。」

「晩ご飯、冷蔵庫にあるからチンして食べてって。」

「分かった。」

一旦スーツを脱ぐためにリビングの隣りにある朔の部屋に行き着替える。

夜間にてんかん発作が頻発する朔。
夜通し投与している栄養剤が、逆流して嘔吐した時に気管に詰まらないように様子を見るため一緒に寝ていた。
元々俺が夜型だった事もあるし、日中は母さんに任せっきりなため、夜は朔の傍に居れるので苦ではない。

スウェットに着替えて、晩ご飯を温め直しご飯を食べる。
浬は反抗期で口を聞いてくれなくなったが、部屋に1人籠ることなくリビングで過ごしている辺り可愛げがある。

「おかえりなさい。お仕事お疲れ様。」

「ただいま。今日もありがとうな。ご飯美味いよ。」

風呂から出た母さんにお礼を言い残りを食べ終わった。

「…とー。」

「ん…?朔、ただいま。」

俺らの話し声で目を覚ましたのか、ボーとこちらを見ていた。

「部屋行くか?」

「もう…寝る?」

「朔の処置したら風呂に入って来るから、それから寝るよ。…よいしょ。」

体が怠いのか起き上がりたがらない朔を横抱きにして、部屋に連れて行きベッドに下ろした。

「朔、今日から学校だったんだろ?担任の先生どんな人だった?」

処置の準備をしながら今日の出来事を聞く。

「デカくてゴツい。でも優しそうな先生だったよ。」

「そうか。下脱がすな。……胃ろうカバー着けたのか。」

ズボンと紙パンツを脱がす時に捲れた服から、星柄の胃ろうカバーが見えた。

「うん。なんか制服着てたら擦れて赤くなってたから…。」

「制服かぁ…明日は遅番だから見れるな。おちんちん消毒するよ。」

仮性包茎の包皮を亀頭が露出するように剥き、尿道口から円を描くように消毒液の滲みた脱脂綿で拭っていく。

「……ッ、くすぐったい。」

「くすぐったかったか?」

くすぐったいと身じろぐ朔に笑いかけ、カテーテルに潤滑ジェルを着けた。

「おちんちんに管入りま~す。ちょっと痛いぞ。」

潤滑ジェルを先端に纏ったカテーテルを尿道口に押し当て、つぷりと肉壁を割り開くように奥へ進めていく。

「……ふっぅ…ちんこ痛い。」

手で陰茎を押さえて、カテーテルの挿入を妨げようとするのを腕で阻止して、ゆっくりと進める。

「知ってるよ。留置カテーテル少し太いもんな。」

昼間使っている導尿カテーテルよりも一回り太いカテーテルを夜の間挿入して過ごす為、圧迫感や痛みからもぞもぞと腰の位置を動かす朔。
これも日常茶判事なためスルスルと膀胱まで入れ、尿パックに黄褐色の尿が流れ出てきたのを確認して、カテーテルの側管にシリンジを繋ぎ蒸留水を注入して膀胱から抜けないように固定する。
朔の太腿にテープでカテーテルを止めて、紙パンツとズボンを履かせた。

「後はお腹のご飯な。」

「…ちょっとベッド上げる。」

「そうだな…。ベッド動くよ。」

発作の後で逆流する可能性を考慮して、ベッドのリクライニングを少し上げた。
栄養剤のパウチを点滴棒に吊るして、カテーテルの先を胃ろうに繋いだ。

「父さん風呂に入って来るけど、気持ち悪くなったらコール押してな?」

「うん。」

ちゃんと栄養剤が流れ、体内に投与され始めたのを確認して、点下速度を調整して部屋を後にした。



風呂から出て部屋を覗くと、すーすーと穏やかな寝息が聞こえていて安心した。
俺も朔の隣りのベッドに横になり眠りについた。

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