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第二話
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アモスを担当している試験監督官は、ルミスという若い女性教師であった。小柄だが、体の凹凸はしっかりとあり、顔も美人であった。この教師が受験者に声をかける。
「まず、筆記試験を始めます。制限時間は30分です」
問題が配られ、受験者が鉛筆を走らせる。問題といってもほとんどの問題は簡単で、ほとんどの受験者が難なくこなす。
「いまからランクカードを配るので、このカードに向けて力を加えてください。分からない事はどんどん質問してください」
明るい声で親しみをこめて受験者に接している。しかし、このカードが難題であった。アモスは力をこめ、カードに手をかざす。青白く発光すると、金色に輝くカードが出てきた。文字列が書き綴られていく。
【アモス 男
レベル 1
クラス S
体力 E
筋力 E
知力 B
魔力 A
攻撃魔法適性 B
防御魔法適性 B
回復魔法適性 S
製造魔法適性 SS
召喚魔法適性 SS
古代魔法適性 SS 】
(なんだこれ。他の人は青いカードなんだが…)
その金色のカードとは、実はすごいものなのである。クラスS以上。すなわち高レベルの冒険者でもなかなかたどり着かないクラスだ。特にこの召喚魔法適性SSというのは、大精霊などでも扱えてしまうものである。
ルミスが困惑するのも無理はない。このクラスであれば、将来は宮廷魔術長まで上り詰める可能性すらあるが、本人はそのことに気づいていない。ルミスは気を取り直して受験者に声をかけた。
「では、次に実技試験に移ります。この杖をもって、移動してください」
ルミスから渡された杖は、初心者用の杖であった。しかし、元の威力が高ければ、絶大な破壊力を生む。実技試験の内容は、的に魔法を放ち、壊すというもので、レベルが上がるごとに魔法抵抗力が強くなっていく。受験者は杖を握り、魔法を放っていく。アモスの順番が来た。アモスは杖を握り、教えられたとおりに魔法陣を展開する。しかし、それは他の受験者のものとは違っていた。他の受験者の魔法陣はほとんどが単純な円、ごく一部のものが円と四角を組み合わせた簡単なものだったのに対し、アモスの展開した魔法陣は、3重円の中に、いくつもの古代文字が刻まれていく。異変を感じたルミスは魔法陣を解除しようとする。しかし、通常の魔法解除では古代魔法は解除されない。魔法陣から古代魔法が放たれる。古代魔法は上級的をいとも簡単に貫き、その後ろの結界を壊したところでようやく消えた。それは全ての受験者とルミスは驚きを隠せなかった。実技試験は終わり、全ての受験者は帰宅する。合格の通知は、2日後に郵送されるようだ。その日の夜、職員会議が行われた。ザライル校長が口を開く。
「気になる生徒はいましたか?」
その質問に対しいくつか手が上がる。その中にはルミスも含まれていた。校長の席から近かった、ダンケという若い男子教師が一枚の紙を掲示する。
【シェルカ 女
レベル 10
クラス B
体力 A
筋力 B
知力 C
魔力 C
攻撃魔法適性 C
防御魔法適性 C
製造魔法適性 C
召喚魔法適性 C
古代魔法適性 C 】
「このシェルカという生徒は、魔法関係には弱いですが、戦士としての才能を感じられます。将来的には魔法戦士になることでしょう」
なるほど、などという声があちらこちらから聞こえてくる。そして、いよいよルミスの発表の番になった。ザライル校長には既に伝えている。そのときも、校長は驚いていた。
「わたしが今回目を付けた生徒はこのアモスという生徒です。この紙を見てください」
【アモス 男
レベル 1
クラス S
体力 E
筋力 E
知力 B
魔力 A
攻撃魔法適性 B
防御魔法適性 B
回復魔法適性 S
製造魔法適性 SS
召喚魔法適性 SS
古代魔法適性 SS 】
そういうと、情報が印刷された紙をルミスは配布する。それをみた全ての教師が驚愕する。ヴォリダラン教育センター始まって以来の成績だからだ。毎年、魔法適性がSSよりも上位クラスであるSSSの生徒は少なからず居た。しかし、古代魔法適性に関しては、SSはおろかBすら稀にいない。教師陣で古代魔法適性の最大値はSだ。
「こ、校長。この生徒はどうされますか?」
「どうするも何も、教育するしかないだろう。先生、できますか?」
校長に先生、と呼ばれたマジェスカは優雅に立ち上がった。服装は、魔法使い特有のゆったりとしたドレスだが、スタイルがよい事は分かる。
「私自身、クラスがSですので分かりません。また、私の教育でクラスがSSSになる可能性すらあります。あと、私は担任を持てないはずですが?」
「それについては授業だけ担当してもらう。もし、もしもだよ。クラスがSSSになると何が出来るんだ?」
この教師陣内はおろか、ヴォリダラン研究都市内に古代魔法適性がSSSのものはいない。
「ここからは私の推測になりますが……。おそらく、【レベルCCC-Ⅸ】の古代禁書を扱えるのではないかと・・・」
古代禁書、それは過去の大魔法使いが残した書物である。死ぬ間近に書き綴った本で、書きおわってすぐに亡くなったため膨大な魔力が込められているとされている。過去には、知識の無い職員が触り死に至った例がある危険な代物である。現在は、ヴォリダラン研究都市の地下レベルCCC-Ⅸに保存されており、だれも触ることは出来ない。
「また、この生徒についてはどの組に配属としますか?」
「それは、最上位組のAにきまっているだろ」
「しかし……」
そういうA組担当のルミスには一つの不安があった。
「しかし、アモスには問題点もあります。体力と筋力が非常に低く、今年の生徒で体力・筋力ともにEは一人のみです」
体力などがなければ持久戦などをすることは出来ない。そういう判断だった。しかし、反論が出る。
「体力については問題ないだろう。回復魔法も使えるのだから」
そのような意見で、会議の幕は閉じた。このあと、先生たちは合格通知を作る作業に追われることとなる。
「まず、筆記試験を始めます。制限時間は30分です」
問題が配られ、受験者が鉛筆を走らせる。問題といってもほとんどの問題は簡単で、ほとんどの受験者が難なくこなす。
「いまからランクカードを配るので、このカードに向けて力を加えてください。分からない事はどんどん質問してください」
明るい声で親しみをこめて受験者に接している。しかし、このカードが難題であった。アモスは力をこめ、カードに手をかざす。青白く発光すると、金色に輝くカードが出てきた。文字列が書き綴られていく。
【アモス 男
レベル 1
クラス S
体力 E
筋力 E
知力 B
魔力 A
攻撃魔法適性 B
防御魔法適性 B
回復魔法適性 S
製造魔法適性 SS
召喚魔法適性 SS
古代魔法適性 SS 】
(なんだこれ。他の人は青いカードなんだが…)
その金色のカードとは、実はすごいものなのである。クラスS以上。すなわち高レベルの冒険者でもなかなかたどり着かないクラスだ。特にこの召喚魔法適性SSというのは、大精霊などでも扱えてしまうものである。
ルミスが困惑するのも無理はない。このクラスであれば、将来は宮廷魔術長まで上り詰める可能性すらあるが、本人はそのことに気づいていない。ルミスは気を取り直して受験者に声をかけた。
「では、次に実技試験に移ります。この杖をもって、移動してください」
ルミスから渡された杖は、初心者用の杖であった。しかし、元の威力が高ければ、絶大な破壊力を生む。実技試験の内容は、的に魔法を放ち、壊すというもので、レベルが上がるごとに魔法抵抗力が強くなっていく。受験者は杖を握り、魔法を放っていく。アモスの順番が来た。アモスは杖を握り、教えられたとおりに魔法陣を展開する。しかし、それは他の受験者のものとは違っていた。他の受験者の魔法陣はほとんどが単純な円、ごく一部のものが円と四角を組み合わせた簡単なものだったのに対し、アモスの展開した魔法陣は、3重円の中に、いくつもの古代文字が刻まれていく。異変を感じたルミスは魔法陣を解除しようとする。しかし、通常の魔法解除では古代魔法は解除されない。魔法陣から古代魔法が放たれる。古代魔法は上級的をいとも簡単に貫き、その後ろの結界を壊したところでようやく消えた。それは全ての受験者とルミスは驚きを隠せなかった。実技試験は終わり、全ての受験者は帰宅する。合格の通知は、2日後に郵送されるようだ。その日の夜、職員会議が行われた。ザライル校長が口を開く。
「気になる生徒はいましたか?」
その質問に対しいくつか手が上がる。その中にはルミスも含まれていた。校長の席から近かった、ダンケという若い男子教師が一枚の紙を掲示する。
【シェルカ 女
レベル 10
クラス B
体力 A
筋力 B
知力 C
魔力 C
攻撃魔法適性 C
防御魔法適性 C
製造魔法適性 C
召喚魔法適性 C
古代魔法適性 C 】
「このシェルカという生徒は、魔法関係には弱いですが、戦士としての才能を感じられます。将来的には魔法戦士になることでしょう」
なるほど、などという声があちらこちらから聞こえてくる。そして、いよいよルミスの発表の番になった。ザライル校長には既に伝えている。そのときも、校長は驚いていた。
「わたしが今回目を付けた生徒はこのアモスという生徒です。この紙を見てください」
【アモス 男
レベル 1
クラス S
体力 E
筋力 E
知力 B
魔力 A
攻撃魔法適性 B
防御魔法適性 B
回復魔法適性 S
製造魔法適性 SS
召喚魔法適性 SS
古代魔法適性 SS 】
そういうと、情報が印刷された紙をルミスは配布する。それをみた全ての教師が驚愕する。ヴォリダラン教育センター始まって以来の成績だからだ。毎年、魔法適性がSSよりも上位クラスであるSSSの生徒は少なからず居た。しかし、古代魔法適性に関しては、SSはおろかBすら稀にいない。教師陣で古代魔法適性の最大値はSだ。
「こ、校長。この生徒はどうされますか?」
「どうするも何も、教育するしかないだろう。先生、できますか?」
校長に先生、と呼ばれたマジェスカは優雅に立ち上がった。服装は、魔法使い特有のゆったりとしたドレスだが、スタイルがよい事は分かる。
「私自身、クラスがSですので分かりません。また、私の教育でクラスがSSSになる可能性すらあります。あと、私は担任を持てないはずですが?」
「それについては授業だけ担当してもらう。もし、もしもだよ。クラスがSSSになると何が出来るんだ?」
この教師陣内はおろか、ヴォリダラン研究都市内に古代魔法適性がSSSのものはいない。
「ここからは私の推測になりますが……。おそらく、【レベルCCC-Ⅸ】の古代禁書を扱えるのではないかと・・・」
古代禁書、それは過去の大魔法使いが残した書物である。死ぬ間近に書き綴った本で、書きおわってすぐに亡くなったため膨大な魔力が込められているとされている。過去には、知識の無い職員が触り死に至った例がある危険な代物である。現在は、ヴォリダラン研究都市の地下レベルCCC-Ⅸに保存されており、だれも触ることは出来ない。
「また、この生徒についてはどの組に配属としますか?」
「それは、最上位組のAにきまっているだろ」
「しかし……」
そういうA組担当のルミスには一つの不安があった。
「しかし、アモスには問題点もあります。体力と筋力が非常に低く、今年の生徒で体力・筋力ともにEは一人のみです」
体力などがなければ持久戦などをすることは出来ない。そういう判断だった。しかし、反論が出る。
「体力については問題ないだろう。回復魔法も使えるのだから」
そのような意見で、会議の幕は閉じた。このあと、先生たちは合格通知を作る作業に追われることとなる。
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