侯爵令嬢の恋わずらいは堅物騎士様を惑わせる

灰兎

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第一章

33、後悔先に立たず

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ルートヴィッヒの嫌いなことは、『後悔』だ。
反省はしても後悔は極力しない様に生きる、そう言う人間だと己を過信していた。

しかし、一回りも下のエレオノーラに対して先程自分が取ってしまった態度には後悔しかない。
眠る前にエレオノーラが言い掛けた「ルートヴィッヒ様は……」の続きはきっと、自分もエレオノーラを好きかどうか聞きたかったに違いない。
それなのに、気付かない振りをしてしまった。
たった一言、自分もエレオノーラを好きだと言えば良かっただけなのに。
これではまるで恋愛初心者だ。
エレオノーラは心細そうな顔をしていた。


エレオノーラの寝顔を飽きることなく見ていられたり、仕事中にふと彼女の良い香りを思い出したり、窓の外を眺めている横顔を見て、今どんな事を考えているんだろうかと思ったり、そう言う事は今まで知り合った女性とは無かった。
数日前に自分はエレオノーラのことが好きなのだと自覚した矢先に、エレオノーラがイレーネの事で嫉妬をして、彼女も少しは自分の事を意識してくれたと思ったら、嬉しくて、キスをしてしまった。

エレオノーラに対して、その澄んだ瞳を見て言えないような情欲があるのも確かだが、それ以上に今は彼女の心が欲しい。
それなのに、キスは出来ても「好きだ」と一言伝えるのがこんなにも難しいとは思わなかった。

隣で眠るエレオノーラは疲れていたのか、もう既にすやすやと寝息を立てている。

(明日、エレオノーラにきちんと伝えなくては……)

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