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第一章
20、焦りと違和感と罪悪感と
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ルートヴィッヒのキスはいつも軽くても深くても唐突だった。
部屋で再び一人になると読書を再開する気になれなくてペタリと椅子に座り込むと、心のモヤモヤに思いを巡らせた。
結婚したら夫婦生活があって、自然と親密になっていくのだと思っていたエレオノーラは、ルートヴィッヒがキスはしてもそれ以上は何もしてこない事にさすがに危機感を感じ始めている。
最初こそフランツとの事もあったし、体調を気遣ってくれたりで、何も無いのだと思っていたけれど、もう結婚して2ヶ月も経った。
フランツへの気持ちが吹っ切れた訳ではないけれど、生まれ育った土地からあまりに遠くにやって来て、環境も違う生活を送り、毎日ルートヴィッヒの隣で眠っていると、さすがにフランツの事ばかり考えて日々を送ることも少し減っていた。
フリードリッヒは見掛けのクールさとは相反して、とても優しいし、いつも忙しいのにエレオノーラを気遣ってくれる。
隣で眠っている時の姿は彫刻みたいに整っていて人間離れした美しさだけれど、一度目を開けばそのアメジストの瞳は穏やかで、エレオノーラは少しずつルートヴィッヒに心を開いて行っていた。
恋ではなくて、情なのかもしれない。それでも、エレオノーラにとっては大切な感情に思えた。
ルートヴィッヒの方は自分の事を嫌いではないのだろうし、慣れない土地で少しでも過ごしやすいようにと日々心を砕いてくれてはいるが、彼自身の気持ちは全く分からない。
今までのルートヴィッヒの女性経験については知るよしも無いが、女嫌いと言う印象も特には受けない。
(男性は別に好意がなくてもそう言う事が出来るって言うし、やっぱり私が気を遣わせてしまってるんだわ……)
エレオノーラは今さらながら夫となった人の胸で、別の男性に失恋して泣くことがどれだけ失礼で、恥ずべき事なのか痛感した。
使用人達だって、自分達が未だに何もない事に気付いている。
(このままでは私だけじゃなくて、ルートヴィッヒ様まで非難されてしまうわ……)
部屋で再び一人になると読書を再開する気になれなくてペタリと椅子に座り込むと、心のモヤモヤに思いを巡らせた。
結婚したら夫婦生活があって、自然と親密になっていくのだと思っていたエレオノーラは、ルートヴィッヒがキスはしてもそれ以上は何もしてこない事にさすがに危機感を感じ始めている。
最初こそフランツとの事もあったし、体調を気遣ってくれたりで、何も無いのだと思っていたけれど、もう結婚して2ヶ月も経った。
フランツへの気持ちが吹っ切れた訳ではないけれど、生まれ育った土地からあまりに遠くにやって来て、環境も違う生活を送り、毎日ルートヴィッヒの隣で眠っていると、さすがにフランツの事ばかり考えて日々を送ることも少し減っていた。
フリードリッヒは見掛けのクールさとは相反して、とても優しいし、いつも忙しいのにエレオノーラを気遣ってくれる。
隣で眠っている時の姿は彫刻みたいに整っていて人間離れした美しさだけれど、一度目を開けばそのアメジストの瞳は穏やかで、エレオノーラは少しずつルートヴィッヒに心を開いて行っていた。
恋ではなくて、情なのかもしれない。それでも、エレオノーラにとっては大切な感情に思えた。
ルートヴィッヒの方は自分の事を嫌いではないのだろうし、慣れない土地で少しでも過ごしやすいようにと日々心を砕いてくれてはいるが、彼自身の気持ちは全く分からない。
今までのルートヴィッヒの女性経験については知るよしも無いが、女嫌いと言う印象も特には受けない。
(男性は別に好意がなくてもそう言う事が出来るって言うし、やっぱり私が気を遣わせてしまってるんだわ……)
エレオノーラは今さらながら夫となった人の胸で、別の男性に失恋して泣くことがどれだけ失礼で、恥ずべき事なのか痛感した。
使用人達だって、自分達が未だに何もない事に気付いている。
(このままでは私だけじゃなくて、ルートヴィッヒ様まで非難されてしまうわ……)
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