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19、惚れた弱味
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「あら、ウィリアム様? お久しぶりですわね」
「ウィリアム様、お目に掛かれて光栄です。ずっと社交界にお見えにならないから、私とても心配しておりましたの」
「ウィリアム、久し振りね。会いたかったわ」
「コーンウェル侯爵様……私……えっと……」
クリスティーナは、ウィリアムが会場に入ってから何人の女性に声を掛けられたか、覚えていない。
セクシーなご婦人から、年端の行かない乙女まで、ありとあらゆる女性がウィリアムに告白紛いの挨拶をしていく。
その度にウィリアムはそつなく返した後、クリスティーナを婚約者だと紹介し、女性達がクリスティーナを殺さんばかりの勢いで睨み付けて去って行く。
それに疲れたクリスティーナはしばらくウィリアムから離れてカミーユとグラスを持って隅っこの方で少し休むことにした。
「コーンウェル侯爵なんかに協力しなければ良かった!」
クリスティーナの横でカミーユが小声で言った。
さっきからこめかみに青筋を立てて憤慨している。
「カミーユ……私はウィルと結婚するつもりは無いのだから、彼にどんな交遊関係があっても気にしないわ」
「そうだとしても、よ。クリスティーナが居るのに失礼じゃない」
「そんなこと無いよ……」
ウィリアムがモテるのは分かっていた事だ。
「そりゃね、コーンウェル侯爵は家柄も良いし、兄弟もいないから、ゆくゆくは財産は全て彼の物になるし、文句が付けられない程のイケメンだし、モテる理由は分かるわ」
「そうだね……」
「それに、お母上はもう亡くなっているから、ややこしい嫁姑問題も無いしね」
「カミーユっ!」
「ごめん、今のは正直過ぎて失礼だったわ」
クリスティーナが小声でたしなめると、カミーユは悪びれもせずに続けた。
カミーユの言ったことは口に出すべき事ではないが、ウィリアムとの結婚を望む貴族令嬢達
の頭の中を掠めているのも事実だろう。
「ティナ、待たせてごめん。ずっと立ちっぱなしで疲れたでしょ? 少し休憩しよう」
ウィリアムはやっと一段落した挨拶の嵐の後、カミーユの鋭い視線をものともせず、クリスティーナの手を引いてバルコニーに出ると、蔦の彫刻があしらわれた大理石で作られたベンチに座った。
時々柔らかい花の香りを運ぶようにそよ風が通って、心地よい。
「念のために言っておくけど、僕はあの人達とは何の関係も無いから」
座るやいなや真剣な面持ちで言うウィリアム。
「そうなんだ。別にあったとしても、私がどうこう言う事じゃないわ」
可愛げの無いことを言ってしまうクリスティーナは自分で自分の気持ちがコントロール出来なくなっていく。
「ティナがそう思っても、僕にはティナだけだって、知ってて欲しい」
よくもそうペラペラと軽口が叩ける物だと見返すと、目線の先には寂しそうなウィリアムの顔があった。
「そ、そう言う風に言えば、私の気を引けると思ってるの?」
(あぁ、こんな事を言いたいんじゃないのに……)
「ティナのことをそんな風に思ったことないよ。いつも僕のしたことが間違ってたかな、とか、今のは嫌われちゃったかな、とか、そんな心配ばっかりしてる。今も、もう帰りたいって言われたらどうしようって不安だし。ティナとは駆け引きをしたくないし、出来ない」
「でも……」
「ティナを好きすぎて、自分でも時々おかしいって思う。でもやっと再会出来て、こうやって目の前に大好きなティナが居てくれて、このまま二人でどこかに行っちゃえたらいいのにって思ってる」
長い睫毛の下のエメラルドの瞳に、まるでこの世にクリスティーナしか存在していないみたいに見つめられて、視線が外せなくなる。
(本当に、ウィルと二人きりでこのまま……)
クリスティーナは自分の考えや思いを超えてウィリアムへの熱が溢れそうになるのを感じた。
「ティナにそんなに見つめられると、今すぐここでキスしたくなる。ねぇ、ここなら目立たないから、ちょっとだけキスしてもいい?」
ついさっきまでの真摯な光ではなく、熱に浮かされたようなウィリアムのグリーンの瞳に、急に我に帰るクリスティーナ。
「な、何言ってるのっ! こんな誰が見ているかわからない所で、ダメにきまってるでしょ。と言うか、人の目が無くても独身の男女が唇を重ねるなんてダメに決まってるわ」
「それなら誰も居ない所でならキスして良い?」とウィリアムに言われそうだとこの数日で学んだクリスティーナは、慌てて予防線を張る。
そんなクリスティーナの様子を見てウィリアムはクスッと笑った。
「じゃあティナが約束してくれた通り、帰りの馬車までご褒美のキスは待つね」
そう言って、クリスティーナの手を取るとキスを落とした。
「ウィリアム様、お目に掛かれて光栄です。ずっと社交界にお見えにならないから、私とても心配しておりましたの」
「ウィリアム、久し振りね。会いたかったわ」
「コーンウェル侯爵様……私……えっと……」
クリスティーナは、ウィリアムが会場に入ってから何人の女性に声を掛けられたか、覚えていない。
セクシーなご婦人から、年端の行かない乙女まで、ありとあらゆる女性がウィリアムに告白紛いの挨拶をしていく。
その度にウィリアムはそつなく返した後、クリスティーナを婚約者だと紹介し、女性達がクリスティーナを殺さんばかりの勢いで睨み付けて去って行く。
それに疲れたクリスティーナはしばらくウィリアムから離れてカミーユとグラスを持って隅っこの方で少し休むことにした。
「コーンウェル侯爵なんかに協力しなければ良かった!」
クリスティーナの横でカミーユが小声で言った。
さっきからこめかみに青筋を立てて憤慨している。
「カミーユ……私はウィルと結婚するつもりは無いのだから、彼にどんな交遊関係があっても気にしないわ」
「そうだとしても、よ。クリスティーナが居るのに失礼じゃない」
「そんなこと無いよ……」
ウィリアムがモテるのは分かっていた事だ。
「そりゃね、コーンウェル侯爵は家柄も良いし、兄弟もいないから、ゆくゆくは財産は全て彼の物になるし、文句が付けられない程のイケメンだし、モテる理由は分かるわ」
「そうだね……」
「それに、お母上はもう亡くなっているから、ややこしい嫁姑問題も無いしね」
「カミーユっ!」
「ごめん、今のは正直過ぎて失礼だったわ」
クリスティーナが小声でたしなめると、カミーユは悪びれもせずに続けた。
カミーユの言ったことは口に出すべき事ではないが、ウィリアムとの結婚を望む貴族令嬢達
の頭の中を掠めているのも事実だろう。
「ティナ、待たせてごめん。ずっと立ちっぱなしで疲れたでしょ? 少し休憩しよう」
ウィリアムはやっと一段落した挨拶の嵐の後、カミーユの鋭い視線をものともせず、クリスティーナの手を引いてバルコニーに出ると、蔦の彫刻があしらわれた大理石で作られたベンチに座った。
時々柔らかい花の香りを運ぶようにそよ風が通って、心地よい。
「念のために言っておくけど、僕はあの人達とは何の関係も無いから」
座るやいなや真剣な面持ちで言うウィリアム。
「そうなんだ。別にあったとしても、私がどうこう言う事じゃないわ」
可愛げの無いことを言ってしまうクリスティーナは自分で自分の気持ちがコントロール出来なくなっていく。
「ティナがそう思っても、僕にはティナだけだって、知ってて欲しい」
よくもそうペラペラと軽口が叩ける物だと見返すと、目線の先には寂しそうなウィリアムの顔があった。
「そ、そう言う風に言えば、私の気を引けると思ってるの?」
(あぁ、こんな事を言いたいんじゃないのに……)
「ティナのことをそんな風に思ったことないよ。いつも僕のしたことが間違ってたかな、とか、今のは嫌われちゃったかな、とか、そんな心配ばっかりしてる。今も、もう帰りたいって言われたらどうしようって不安だし。ティナとは駆け引きをしたくないし、出来ない」
「でも……」
「ティナを好きすぎて、自分でも時々おかしいって思う。でもやっと再会出来て、こうやって目の前に大好きなティナが居てくれて、このまま二人でどこかに行っちゃえたらいいのにって思ってる」
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