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11.つまらない人間

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「僕のことは、ほっといてくれ」
「玉子焼き、もう一個食べたーい」

 後ろからお弁当を指差して、催促をしてきた。
 皇祐だけが気にしていただけで、小さいという話題は、彼の中では既に終わっていたらしい。
 敦貴は、どんな時も食べ物のことが一番のようだ。そのおかげで、この難を逃れることができたのだから、良しとしよう。

「……好きなもの食べていいよ」

 敦貴の方を向き直り、再び弁当箱を差し出した。

「ありがとー」

 美味しい物を食べていられるなら、敦貴は誰と一緒に居ようとも気にしないのかもしれない。だからって、どうして皇祐なのだろうか。

 最初は、お金をあてにしているのかと思っていた。過去にも、そのために近づいてきた人がいたから、彼もそうなのかと考えた。自分には、それぐらいの価値しかないことはわかっていたから。

 だけど、二人で店に寄っても、敦貴は自分の分は自分で払う。食べたいものがたくさんで、お小遣いをやりくりするのが大変だと嘆いていることもあった。だから、代わりに払おうとしたら、ひどく怒られた。

 それなら、どんな理由があって傍にいるのか。
 皇祐は、敦貴を満足させるような特別な美味しい物を持っているわけでもない。面白いことを言って笑わせることだって難しいことだ。

 自分の前で、幸せそうに物を食べている敦貴の姿を見るたび、なぜ彼がここにいるのか全くわからなくて、締め付けるように胸が苦しくなった。

「敦貴……」
「んー?」
「いつも僕のところに来るけど、友だちと食べた方がいいんじゃないか? 最近、一緒にいないだろ。僕のことは気にしなくていいから」
「なんでー?」

 敦貴が複雑そうな顔をした。

「僕は、つまらない人間だよ……」
「つまんなくないし……」

 むっとしたようで、目を細めて、不機嫌そうに口を曲げた。
 彼が黙ってしまったので、会話は続かなくなる。周りの楽しそうな笑い声や話し声が、やけに響いて聞こえた。二人の間に沈黙が流れ、息をするのも苦しく感じる。

 こういう時、気の利いたことが言えたら雰囲気も変わるのに、それをできない自分が悔しかった。いっそのこと、自ら一緒にいたくないと拒絶する方が、楽になれるんじゃないかと考える。
 その間に、予鈴が鳴ってしまった。

「あっ、敦貴、もう行かないと」

 いつもなら、予鈴が鳴る前には戻っていたから、皇祐は慌てた。急いで弁当を片づけて、教室に戻ろうとした。すると、立ち上がった敦貴に腕を掴まれ、強く引っ張られる。
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