25 / 26
25.傍にいないのは寂しい
しおりを挟む
皇祐の言うことを守っているのか、敦貴は彼女と過ごしていたから、必然的に皇祐と一緒にいることは少なくなった。
敦貴と美咲が楽しそうに話している姿を見るのは辛かったし、彼が自分の傍にいないのは寂しい。
だが、敦貴と出会うまでは、ほとんど一人でいたのだ。慣れている。
きっと敦貴への気持ちはこのまま薄れていく――そう自分に言い聞かせた。
今まで通り、勉学に励めばいいのだ。
***
塾の帰り、いつもなら一人でゲーセンには行かないのに、フラッと立ち寄ってしまった。
限定ぬいぐるみのクレーンゲームのポスターが目に入ったからだ。
アニメのキャラクターらしいのだが、敦貴が欲しがっていたのを覚えていた。
クレーンゲームの経験はなかった。
でも、敦貴のために、どうしてもそのぬいぐるみが欲しかったのだ。
お金を入れて敦貴がプレイしていたのを思い出しながら、試してみる。慣れている敦貴でさえ、お小遣いがすぐなくなると嘆いていたくらいだ。
初心者の皇祐が、そう簡単に取れるわけがない。
あと少しで取れそうという状態を何度も繰り返していくと麻痺してくるのか、お金を注ぎ込んでしまう。
危険なゲームだと皇祐は恐ろしくなった。
財布の小銭は、残り1プレイできる分だけ。札を両替することも可能だったが、きりがないだろう。
――あと一回、これで諦めよう。
最後のお金を入れて、深呼吸をしてゲームに挑んだ。
何度もクレーンゲームのアームに引っかかっては落ちるを繰り返していたぬいぐるみ。
ちょうどいい場所にあったのか、今回は上手い具合にぬいぐるみを掴み、穴に落とすことができた。
「よし!」
思わずこぶしを握りしめ、小さくガッツポーズをしてしまう。
ぬいぐるみを手にして皇祐は、たかがゲームなのに感動していた。
同時に、このぬいぐるみを見た時の敦貴の嬉しそうな顔を想像して思わず笑みがこぼれる。
大きな身体でその場を飛び跳ねて、喜びを表すのが想像できた。
『コウちゃんが取ったの!? すげえ!』
皇祐がクレーンゲームをしたことに驚きながらも、目をキラキラと輝かせるのだろう。
けっこうな大きさのぬいぐるみだから、学校に持って行くのは目立ってしまう。
それなら放課後に敦貴の家に行って――。
そこまで考えて、すぐに思い直す。
――これを敦貴に渡すのはよそう。
関係を深めれば、また余計な感情が生まれる。
すでに、会いたくて話したくて仕方がないのだ。
今は何をしているだろうか。寝る前のおやつを食べているかもしれない。
「会いたいよ、敦貴……」
寂しさを埋めるようにぬいぐるみをぎゅっと握り締め、皇祐は自宅に帰るのだった。
敦貴と美咲が楽しそうに話している姿を見るのは辛かったし、彼が自分の傍にいないのは寂しい。
だが、敦貴と出会うまでは、ほとんど一人でいたのだ。慣れている。
きっと敦貴への気持ちはこのまま薄れていく――そう自分に言い聞かせた。
今まで通り、勉学に励めばいいのだ。
***
塾の帰り、いつもなら一人でゲーセンには行かないのに、フラッと立ち寄ってしまった。
限定ぬいぐるみのクレーンゲームのポスターが目に入ったからだ。
アニメのキャラクターらしいのだが、敦貴が欲しがっていたのを覚えていた。
クレーンゲームの経験はなかった。
でも、敦貴のために、どうしてもそのぬいぐるみが欲しかったのだ。
お金を入れて敦貴がプレイしていたのを思い出しながら、試してみる。慣れている敦貴でさえ、お小遣いがすぐなくなると嘆いていたくらいだ。
初心者の皇祐が、そう簡単に取れるわけがない。
あと少しで取れそうという状態を何度も繰り返していくと麻痺してくるのか、お金を注ぎ込んでしまう。
危険なゲームだと皇祐は恐ろしくなった。
財布の小銭は、残り1プレイできる分だけ。札を両替することも可能だったが、きりがないだろう。
――あと一回、これで諦めよう。
最後のお金を入れて、深呼吸をしてゲームに挑んだ。
何度もクレーンゲームのアームに引っかかっては落ちるを繰り返していたぬいぐるみ。
ちょうどいい場所にあったのか、今回は上手い具合にぬいぐるみを掴み、穴に落とすことができた。
「よし!」
思わずこぶしを握りしめ、小さくガッツポーズをしてしまう。
ぬいぐるみを手にして皇祐は、たかがゲームなのに感動していた。
同時に、このぬいぐるみを見た時の敦貴の嬉しそうな顔を想像して思わず笑みがこぼれる。
大きな身体でその場を飛び跳ねて、喜びを表すのが想像できた。
『コウちゃんが取ったの!? すげえ!』
皇祐がクレーンゲームをしたことに驚きながらも、目をキラキラと輝かせるのだろう。
けっこうな大きさのぬいぐるみだから、学校に持って行くのは目立ってしまう。
それなら放課後に敦貴の家に行って――。
そこまで考えて、すぐに思い直す。
――これを敦貴に渡すのはよそう。
関係を深めれば、また余計な感情が生まれる。
すでに、会いたくて話したくて仕方がないのだ。
今は何をしているだろうか。寝る前のおやつを食べているかもしれない。
「会いたいよ、敦貴……」
寂しさを埋めるようにぬいぐるみをぎゅっと握り締め、皇祐は自宅に帰るのだった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
恋した貴方はαなロミオ
須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。
Ω性に引け目を感じている凛太。
凛太を運命の番だと信じているα性の結城。
すれ違う二人を引き寄せたヒート。
ほんわか現代BLオメガバース♡
※二人それぞれの視点が交互に展開します
※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m
※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です
Endless Summer Night ~終わらない夏~
樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった”
長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、
ひと夏の契約でリゾートにやってきた。
最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、
気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。
そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。
***前作品とは完全に切り離したお話ですが、
世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***
アイドルですがピュアな恋をしています。
雪 いつき
BL
人気アイドルユニットに所属する見た目はクールな隼音(しゅん)は、たまたま入ったケーキ屋のパティシエ、花楓(かえで)に恋をしてしまった。
気のせいかも、と通い続けること数ヶ月。やはりこれは恋だった。
見た目はクール、中身はフレンドリーな隼音は、持ち前の緩さで花楓との距離を縮めていく。じわりじわりと周囲を巻き込みながら。
二十歳イケメンアイドル×年上パティシエのピュアな恋のお話。
君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》
市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。
男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。
(旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。
サンタからの贈り物
未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。
※別小説のセルフリメイクです。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる