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25.傍にいないのは寂しい

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 皇祐の言うことを守っているのか、敦貴は彼女と過ごしていたから、必然的に皇祐と一緒にいることは少なくなった。

 敦貴と美咲が楽しそうに話している姿を見るのは辛かったし、彼が自分の傍にいないのは寂しい。
 だが、敦貴と出会うまでは、ほとんど一人でいたのだ。慣れている。

 きっと敦貴への気持ちはこのまま薄れていく――そう自分に言い聞かせた。
 今まで通り、勉学に励めばいいのだ。


***


 塾の帰り、いつもなら一人でゲーセンには行かないのに、フラッと立ち寄ってしまった。
 限定ぬいぐるみのクレーンゲームのポスターが目に入ったからだ。
 アニメのキャラクターらしいのだが、敦貴が欲しがっていたのを覚えていた。
 クレーンゲームの経験はなかった。
 でも、敦貴のために、どうしてもそのぬいぐるみが欲しかったのだ。

 お金を入れて敦貴がプレイしていたのを思い出しながら、試してみる。慣れている敦貴でさえ、お小遣いがすぐなくなると嘆いていたくらいだ。
 初心者の皇祐が、そう簡単に取れるわけがない。
 あと少しで取れそうという状態を何度も繰り返していくと麻痺してくるのか、お金を注ぎ込んでしまう。

 危険なゲームだと皇祐は恐ろしくなった。
 財布の小銭は、残り1プレイできる分だけ。札を両替することも可能だったが、きりがないだろう。

 ――あと一回、これで諦めよう。

 最後のお金を入れて、深呼吸をしてゲームに挑んだ。
 何度もクレーンゲームのアームに引っかかっては落ちるを繰り返していたぬいぐるみ。
 ちょうどいい場所にあったのか、今回は上手い具合にぬいぐるみを掴み、穴に落とすことができた。

「よし!」

 思わずこぶしを握りしめ、小さくガッツポーズをしてしまう。
 ぬいぐるみを手にして皇祐は、たかがゲームなのに感動していた。
 同時に、このぬいぐるみを見た時の敦貴の嬉しそうな顔を想像して思わず笑みがこぼれる。
 大きな身体でその場を飛び跳ねて、喜びを表すのが想像できた。

『コウちゃんが取ったの!? すげえ!』

 皇祐がクレーンゲームをしたことに驚きながらも、目をキラキラと輝かせるのだろう。
 けっこうな大きさのぬいぐるみだから、学校に持って行くのは目立ってしまう。

 それなら放課後に敦貴の家に行って――。

 そこまで考えて、すぐに思い直す。

 ――これを敦貴に渡すのはよそう。
 
 関係を深めれば、また余計な感情が生まれる。
 すでに、会いたくて話したくて仕方がないのだ。

 今は何をしているだろうか。寝る前のおやつを食べているかもしれない。

 「会いたいよ、敦貴……」

 寂しさを埋めるようにぬいぐるみをぎゅっと握り締め、皇祐は自宅に帰るのだった。
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