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06.はじめての名前呼び
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午後の授業が終わり、皇祐は教室から出ようとした。
その時、肩を叩かれ呼び止められる。
「コウちゃん!」
振り返れば、そこには小此木敦貴がいた。
「もう! さっきから呼んでるのに、無視するんだもん」
「……コウ、ちゃんって、僕のことか?」
「あれー? コウスケって名前じゃなかった?」
「そうだけど……」
「なら、コウちゃんでいいじゃん」
聞き慣れない呼び方に、困惑していた。
今まで自分を下の名前で呼ぶ人はいなかった。彼は、いとも簡単に距離を縮めてくる。
「オレのことは、敦貴って呼び捨てでいいよ。苗字は言いにくいからさー」
歯を見せてニッと笑った。何が楽しいのかわからなかったが、悪い気はしない。
「……敦貴、何かあったか?」
名前を呼ぶのは、何となく気恥ずかしくて、声が小さくなっていた。
「ああ、そうそう。コウちゃんも一緒にラーメン食べに行こうよ」
「ラーメン?」
「ほら、昼に言ってたじゃん。新しい店がオープンするって。これから予定あるの?」
いくつか習い事をしていたけど、この日はちょうど何も入ってない日だった。
「……ないけど」
そう答えてから、失敗したと思った。
敦貴の後ろに、こちらを見ている男子が数名いる。みんなで行こうとしていたところに、彼が皇祐の名前を出したのだろう。嘘でも用事があると言えば良かったのだ。
「僕が行っても……」
雰囲気を悪くするのは、わかっていた。それなのに、敦貴は強引に腕を引く。
「じゃあ、いいじゃん。行こうよ」
「敦貴……!」
みんなの前に、皇祐を連れ出した。
「コウちゃんも行くってー、早く向かおう。絶対混んでるもん」
彼らは何も言わなかったが、なぜコイツもついてくるのかといような微妙な空気を漂わせてた。そんなことも気づかず、敦貴は本当に楽しそうに、飛び跳ねるようにして喜びを表す。
ラーメン屋に向かう途中も、そのテンションのままだ。皇祐の隣を歩きながら、敦貴が一人で喋っている。前を歩く男友だち三名にも、すかさず話を振り、場を盛り上げていた。
それは自然にやっていることで、前を歩く男子たちが、皇祐がいることに対して不満そうにしているのは、まるでわかっていないようだった。
店にたどり着くと、敦貴の予想通り混んでいて、長蛇の列になっていた。ほとんどが制服を着た学生なのは、やはり価格が百円で安いからなのか。
「待つのめんどー。早く食べたいからイライラするんだけどー」
列に並んだ途端、仏頂面で敦貴が文句を言った。
「仕方ねーだろ、じゃあ、諦めるか?」
友だちの一人が、苛立ちを表情に出す。
「どのくらい待ってるか、誰か店に行って見てきてよ」
「アツキが行けよ」
「また戻ってくるのダルいもん……」
「じゃあ、おとなしく待ってろ」
皇祐は、敦貴たちのやり取りをハラハラしながら見守っていた。そのまま喧嘩になりそうな勢いだったからだ。
「コウちゃんは、待つの平気?」
急に話を振られたので、驚いて上擦った声を出す。
「ああ、平気」
「そーなんだ。それなら、順番待とうー」
面白くなさそうな顔をしていた敦貴だったが、友だちたちとも喧嘩することなく、おとなしくなったのでほっとする。
その時、肩を叩かれ呼び止められる。
「コウちゃん!」
振り返れば、そこには小此木敦貴がいた。
「もう! さっきから呼んでるのに、無視するんだもん」
「……コウ、ちゃんって、僕のことか?」
「あれー? コウスケって名前じゃなかった?」
「そうだけど……」
「なら、コウちゃんでいいじゃん」
聞き慣れない呼び方に、困惑していた。
今まで自分を下の名前で呼ぶ人はいなかった。彼は、いとも簡単に距離を縮めてくる。
「オレのことは、敦貴って呼び捨てでいいよ。苗字は言いにくいからさー」
歯を見せてニッと笑った。何が楽しいのかわからなかったが、悪い気はしない。
「……敦貴、何かあったか?」
名前を呼ぶのは、何となく気恥ずかしくて、声が小さくなっていた。
「ああ、そうそう。コウちゃんも一緒にラーメン食べに行こうよ」
「ラーメン?」
「ほら、昼に言ってたじゃん。新しい店がオープンするって。これから予定あるの?」
いくつか習い事をしていたけど、この日はちょうど何も入ってない日だった。
「……ないけど」
そう答えてから、失敗したと思った。
敦貴の後ろに、こちらを見ている男子が数名いる。みんなで行こうとしていたところに、彼が皇祐の名前を出したのだろう。嘘でも用事があると言えば良かったのだ。
「僕が行っても……」
雰囲気を悪くするのは、わかっていた。それなのに、敦貴は強引に腕を引く。
「じゃあ、いいじゃん。行こうよ」
「敦貴……!」
みんなの前に、皇祐を連れ出した。
「コウちゃんも行くってー、早く向かおう。絶対混んでるもん」
彼らは何も言わなかったが、なぜコイツもついてくるのかといような微妙な空気を漂わせてた。そんなことも気づかず、敦貴は本当に楽しそうに、飛び跳ねるようにして喜びを表す。
ラーメン屋に向かう途中も、そのテンションのままだ。皇祐の隣を歩きながら、敦貴が一人で喋っている。前を歩く男友だち三名にも、すかさず話を振り、場を盛り上げていた。
それは自然にやっていることで、前を歩く男子たちが、皇祐がいることに対して不満そうにしているのは、まるでわかっていないようだった。
店にたどり着くと、敦貴の予想通り混んでいて、長蛇の列になっていた。ほとんどが制服を着た学生なのは、やはり価格が百円で安いからなのか。
「待つのめんどー。早く食べたいからイライラするんだけどー」
列に並んだ途端、仏頂面で敦貴が文句を言った。
「仕方ねーだろ、じゃあ、諦めるか?」
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「アツキが行けよ」
「また戻ってくるのダルいもん……」
「じゃあ、おとなしく待ってろ」
皇祐は、敦貴たちのやり取りをハラハラしながら見守っていた。そのまま喧嘩になりそうな勢いだったからだ。
「コウちゃんは、待つの平気?」
急に話を振られたので、驚いて上擦った声を出す。
「ああ、平気」
「そーなんだ。それなら、順番待とうー」
面白くなさそうな顔をしていた敦貴だったが、友だちたちとも喧嘩することなく、おとなしくなったのでほっとする。
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