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第四章

08. 未来への選択 ②

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 いろいろ考えて、悩んで苦しんで、やっと伝えようと決めたのに。
 口下手だからダメなのか。
 そうだとするならば、もうお手上げだった。

「なんなんだよ、おまえ! オレのこと好きなんじゃねーの?」

 気持ちばかりが焦り、ほとんど八つ当たり状態だった。

「なんで怒ってるんですか。大好きですよ」
「だったらわかるだろ! オレたち、付き合おうって言ってんの!」

 優しくもない怒鳴るような声で言ってしまい、矢神は後悔する。
 もっと違う言い方があるのは理解していた。だが、照れくさくて動揺からこんな風になっている。
 遠野の方は少しの間フリーズした後、驚きの声を上げた。

「ええ!? なんでそんな展開になるんですか?」
「だから……」
「もしかして、杏さんの罰ゲームですか? あの人そういう遊び大好きなんですよね」

 遠野がテーブルに置いていた自分の携帯電話を手に取る。

「杏さんにはオレから言っておきますから。適当にあしらうぐらいでいいんですよ」

 本当に罰ゲームだと思っているようで、遠野は杏に電話しようとしていた。

「待てって! オレの話を聞けって」
「もう、矢神さん優しすぎます」

 携帯電話を持つ遠野の手を掴んだら、自分の手が少し震えていて驚いた。
 どうやら緊張しているようだ。
 一度深呼吸をして、遠野の顔を見上げた。まっすぐと見てもう一度言う。

「罰ゲームじゃなくて。オレが出した結論。オレたち付き合おう」
「……矢神さん、オレのこと好きなんですか?」

 それを聞かれると答えにくいから困る。

「ごめん……そういうんじゃないんだ。独占欲。遠野が誰かと一緒になるとか考えると嫌な気持ちになる。オレのそばにいて欲しい」

 自分で言ってて恥ずかしくなり、遠野から視線を外して俯いてしまう。
 
「わがまま言ってるのはわかってるんだ。遠野はオレに好意を持ってくれて、オレも遠野に対して同じ気持ちならいいんだろうけど、違うから……」

 遠野はこんな話を聞いて嬉しいのだろうか。ただ矢神自身の気持ちが楽になるだけなのでは。

 遠野に対する想い、自分はどうありたいのか、遠野にとって一番何がいいのか。
 きちんと整理したつもりなのに、結局何が言いたいのか自分でもよくわからなくなっていた。

「ただ遠野とはこれからも一緒にいたい。だから、きちんと付き合うという形の方がいいと思ってる。今、オレが出せる答えはこれ」

 遠野は初めから矢神に答えを求めていなかった。付き合うとか望んでいないのかもしれない。
 ここまで言って、急に遠野の答えを聞くのが怖くなった。
 ましてや好きでもないのに付き合うとか意味不明なことを言っているのだから。
 
 
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