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第一章
23.お気に入りの場所 ②
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「そういう場所があるっていいよな」
遠野も杏には気を許して、本当の自分を曝け出せるのかもしれない。
そんな杏との関係が少し気になった。昔からの知り合いと言っていたが、遠野とは年齢が離れている。どこで出会ったのだろう。
服を脱げば男だと知っているということは、ただの知り合いという間柄ではなく、それ相当の仲だということだ。
お互い男性が相手でも大丈夫みたいだから、そういう関係なのだろうか。
頭の中でぐるぐると回っていたが、何となく聞けずにいた。
それよりも、そんなことを気にしている自分に腹が立った。遠野が誰とどうなろうと関係ないのに、なぜかもやもやしている。
矢神は、グラスに並々と注がれた酒を一気に飲み干した。
「矢神クン、いい飲みっぷり!」
言葉を発したのは、料理を持ってきた杏だった。
「ほら、大ちゃん、ぼーっとしてないで注いであげなさいよ」
「あ、はい」
「いや、もう充分なんで……」
「これ食べたら、また飲みたくなるわよ」
その後、杏が何点か料理を作って持ってきてくれたのだが、本人の人柄とはかけ離れたような、どれも日本酒に合う美味しい料理だった。そして杏が言うように、料理だけじゃなく酒も進んでしまうから困りものだ。
一通り料理をテーブルに並べると、杏は客が来ないことをいいことに、遠野の横に座って一緒に酒を飲み始めた。
最初は遠野が杏のグラスに酒を注いでいたが、飲むペースが早いため、「気が利かない」と文句を言って手酌する始末。そのついでに矢神のグラスにも酒を注いで「どんどん飲んで」と勧めるから、飲まないわけにはいかなかった。
だけど、不思議と嫌な感じを受けない。杏は料理だけじゃなく話も上手で、こういう人だからこそ店を続けていられるのかもしれないと思った。
隠れ家的のお店で常連客も多く、重なる時には満席で座れない時もざらだという。ただ新規の客は少ないので、誰も来ない時もあってプラスマイナスなのだが、やっていけないことはない。
そのお店も今年で五年目。杏がずっと一人でやってきた。想像もできない大変な苦労があったはず。
それなのに、そのことをおもしろ可笑しく話すから、矢神は夢中になって聞いていた。
遠野も杏には気を許して、本当の自分を曝け出せるのかもしれない。
そんな杏との関係が少し気になった。昔からの知り合いと言っていたが、遠野とは年齢が離れている。どこで出会ったのだろう。
服を脱げば男だと知っているということは、ただの知り合いという間柄ではなく、それ相当の仲だということだ。
お互い男性が相手でも大丈夫みたいだから、そういう関係なのだろうか。
頭の中でぐるぐると回っていたが、何となく聞けずにいた。
それよりも、そんなことを気にしている自分に腹が立った。遠野が誰とどうなろうと関係ないのに、なぜかもやもやしている。
矢神は、グラスに並々と注がれた酒を一気に飲み干した。
「矢神クン、いい飲みっぷり!」
言葉を発したのは、料理を持ってきた杏だった。
「ほら、大ちゃん、ぼーっとしてないで注いであげなさいよ」
「あ、はい」
「いや、もう充分なんで……」
「これ食べたら、また飲みたくなるわよ」
その後、杏が何点か料理を作って持ってきてくれたのだが、本人の人柄とはかけ離れたような、どれも日本酒に合う美味しい料理だった。そして杏が言うように、料理だけじゃなく酒も進んでしまうから困りものだ。
一通り料理をテーブルに並べると、杏は客が来ないことをいいことに、遠野の横に座って一緒に酒を飲み始めた。
最初は遠野が杏のグラスに酒を注いでいたが、飲むペースが早いため、「気が利かない」と文句を言って手酌する始末。そのついでに矢神のグラスにも酒を注いで「どんどん飲んで」と勧めるから、飲まないわけにはいかなかった。
だけど、不思議と嫌な感じを受けない。杏は料理だけじゃなく話も上手で、こういう人だからこそ店を続けていられるのかもしれないと思った。
隠れ家的のお店で常連客も多く、重なる時には満席で座れない時もざらだという。ただ新規の客は少ないので、誰も来ない時もあってプラスマイナスなのだが、やっていけないことはない。
そのお店も今年で五年目。杏がずっと一人でやってきた。想像もできない大変な苦労があったはず。
それなのに、そのことをおもしろ可笑しく話すから、矢神は夢中になって聞いていた。
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