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第三章
33.説得のために
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依田に連絡をした矢神は、彼と会う約束をした。
まるで、矢神が連絡をしてくることがわかっていたかのように話がトントン進む。
依田とは、少し会話をしたことがあるくらいだ。自分のことはほとんど覚えていないと思っていた。
それなのに電話をして「矢神です」と名乗っただけで、『ああ、矢神先生』とすぐにわかってくれる。
「遠野のことで話があるんですが」
単刀直入に伝えたら、彼は驚きもせずに言った。
『外で話す内容じゃないですよね。矢神先生の家でもいいですか?』
主導権を完全に握られていた。
正直なところ、自分の家に招き入れるのは避けたかった。
遠野の住んでいるこの場所を依田に特定されるのは嫌だったのだ。
答えをためらっていれば、電話越しから依田のククッと笑い声が漏れる。
『大丈夫です。ストーカーみたいな真似はしないので。それに、矢神先生の家は大稀から聞いてますよ』
こう行けばいいですよね? と道順を話す依田。
遠野が教えるとは思えなかったが、矢神の家を知っているのは本当のようだった。
依田が言うように、誰が聞いているかわからないところでは話をしたくないのは確かだ。
少し迷ったが、依田を家に呼ぶことを決める。
「わかりました。オレの家で話しましょう」
『早い方がいいですよね。今日はどうですか?』
そんなすぐに話す機会がやってくるとは思わなかったから戸惑った。だが、早いに越したことはないだろう。
幸い遠野は部活で帰りが遅くなる。帰ってくる前にケリをつけようと思った。
「じゃあ、19時頃でもいいですか。それまでには帰宅します」
『では、伺います』
電話を切って、矢神はふうっとため息を吐いた。
とりあえず第一関門を突破といったところだが、どう話をつけようかと再び悩むことになる。
まるで、矢神が連絡をしてくることがわかっていたかのように話がトントン進む。
依田とは、少し会話をしたことがあるくらいだ。自分のことはほとんど覚えていないと思っていた。
それなのに電話をして「矢神です」と名乗っただけで、『ああ、矢神先生』とすぐにわかってくれる。
「遠野のことで話があるんですが」
単刀直入に伝えたら、彼は驚きもせずに言った。
『外で話す内容じゃないですよね。矢神先生の家でもいいですか?』
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正直なところ、自分の家に招き入れるのは避けたかった。
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答えをためらっていれば、電話越しから依田のククッと笑い声が漏れる。
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