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第三章

20.消えたつながり ①

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 遠野と会話することがなくなってから、どれくらい経っただろう。
 部活顧問で帰りが遅い遠野とは、必ず共に食事をしていたのに、ある時から食事は一人でして欲しいと言われた。
 時間が合わないのなら、各自のペースで過ごした方が負担にならなくて済む。
 だから、朝食と昼の弁当の準備もしばらく休むように伝えていた。


***


 一人だけの時間は久しぶりで、気兼ねなく過ごせるから快適ではあった。だが、すぐに何か物足りなく感じる。

 遠野自身は、帰りにどこかに寄ってきているのか、矢神が起きている時には帰宅せず、夜はほとんど顔を合わせることがなくなった。朝になると、当の本人は早く家を出ているようで彼の姿はない。

 どんなに時間がなくても食事はきちんとする遠野だったが、これだけ家にいる時間が少ないと本当に食べているのか心配になった。
 そんなことを遠野に聞く機会もなく、学校でも業務連絡くらいしか話せていなかった。

 お互い忙しいから仕方がない。
 初めはそう思っていた。しかし、今まではたいした用がなくてもうるさいくらい声をかけてきていた遠野が、それを全くしなくなったことに気づく。

 家や職場で、まるで関わりたくないと言わんばかりの態度に、矢神は不審に思い始めた。


 ――避けられてるのか?


 思い当たる節はあった。
 遠野の知り合いである依田に連絡したか気になった矢神は、その話題を出した。

「そういえば、おまえ、依田さんに連絡したのか?」

 あれからしばらく経っている。連絡がつかなくて困るからとお願いされたのだ。連絡してもらわないと、矢神の信用問題にもなる。そう感じていた。

 すると、聞こえなかったのか、遠野は返事をしないでリビングから出て行こうとする。

「おい、聞いてるのか? 依田さん困ってたからさ」

 再度言えば、振り向いた遠野がひどい形相で怒鳴ってきた。

「矢神さんには関係ないですよね!」
「はあ? なんだよ、その言い方。連絡してないのかよ」
「連絡するかしないかはオレが決めます」
「連絡したくない理由でもあるのか?」
「オレのことは放っておいてください!」

 ピシャリと言われ、遠野はそのまま部屋に篭ってしまった。
 矢神にとっては深い意味はなく何気なく言った言葉だったが、彼にとっては地雷だったらしい。

 それからだ。遠野との会話も顔を合わす頻度も少なくなっていったのは。
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