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第三章
19.珍しい失敗
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今日の夕食は、茄子とピーマンの肉みそ炒めと冷奴だった。あれから30分もかからず、食事の用意ができたと呼ばれたのだ。
「ご飯は冷凍してたもので、味噌汁は即席で申し訳ないんですけど」
「十分だよ。オレがご飯炊いておけば良かったよな。気が回らなくてごめん」
「いいんですよ。料理担当はオレです」
一緒に住みはじめてから、いつの間にか遠野が料理担当になっていた。矢神がほとんど料理をしないからなのだが、毎回手間暇かけていることに申し訳なくなってくる。
「じゃあ、いただきます。これ好きなんだよな」
茄子はどちらかと言うと苦手の方だった矢神だが、遠野の作る茄子とピーマンの肉味噌炒めは大好物なのだ。
それを知ってか、頻繁にメニューに出てくる。
期待して思いっきり口に入れた矢神は、いつもと違う味に困惑した。飲み込んで、思わず言葉にしてしまう。
「なんか、これ……」
「どうしました? おいしくないですか? 急いでたから味見しなかったんですよね」
遠野も箸で口に運ぶと、目をギュッと閉じて表情を歪めた。
「ごめんなさい。砂糖を入れたと思ったんですけど、塩だったみたいです」
「珍しいな。やっぱり忙しいからじゃないか」
「本当にすみません。違うもの何か作ります」
その場を立ち上がろうとする遠野を慌てて止めた。
「待て、大丈夫だ。食べられるって。気にするなよ」
見ていられないほど落ち込む様子の遠野に、精一杯の励ましの言葉をかけた。
元はといえば、先に帰ってきた矢神が食事を作れるのなら、遠野に負担がかからないのだが。
「明日からオレが作ろうか? 簡単なものなら、なんとか……」
自信はなかった。それでも、これ以上遠野に無理をさせられないと感じていた。ネットで適当にレシピを見れば、何かができあがるだろう。
「矢神さんも忙しいじゃないですか」
「おまえよりは忙しくねーよ」
「でも、家賃払わない代わりにオレが料理担当なんですから」
「え? そんなの決めたっけ?」
「決めたわけじゃないですけど、オレが嫌なんですよ。明日からは気をつけますから」
「無理はするな。後片付けはオレがやるから、風呂入ったらさっさと寝ろよ」
「はい……」
肩を落としてガックリしている姿は、まるで捨てられた犬みたいだった。
疲れていたらこれくらいのミスはよくある。たいしたことじゃない。
いつもの明るさで笑い飛ばせばいいのに、余裕がないのだろう。
少し休めばいつも通りになるはずだ。
だが、矢神の考えは甘く、これだけでは終わらなかった。
「ご飯は冷凍してたもので、味噌汁は即席で申し訳ないんですけど」
「十分だよ。オレがご飯炊いておけば良かったよな。気が回らなくてごめん」
「いいんですよ。料理担当はオレです」
一緒に住みはじめてから、いつの間にか遠野が料理担当になっていた。矢神がほとんど料理をしないからなのだが、毎回手間暇かけていることに申し訳なくなってくる。
「じゃあ、いただきます。これ好きなんだよな」
茄子はどちらかと言うと苦手の方だった矢神だが、遠野の作る茄子とピーマンの肉味噌炒めは大好物なのだ。
それを知ってか、頻繁にメニューに出てくる。
期待して思いっきり口に入れた矢神は、いつもと違う味に困惑した。飲み込んで、思わず言葉にしてしまう。
「なんか、これ……」
「どうしました? おいしくないですか? 急いでたから味見しなかったんですよね」
遠野も箸で口に運ぶと、目をギュッと閉じて表情を歪めた。
「ごめんなさい。砂糖を入れたと思ったんですけど、塩だったみたいです」
「珍しいな。やっぱり忙しいからじゃないか」
「本当にすみません。違うもの何か作ります」
その場を立ち上がろうとする遠野を慌てて止めた。
「待て、大丈夫だ。食べられるって。気にするなよ」
見ていられないほど落ち込む様子の遠野に、精一杯の励ましの言葉をかけた。
元はといえば、先に帰ってきた矢神が食事を作れるのなら、遠野に負担がかからないのだが。
「明日からオレが作ろうか? 簡単なものなら、なんとか……」
自信はなかった。それでも、これ以上遠野に無理をさせられないと感じていた。ネットで適当にレシピを見れば、何かができあがるだろう。
「矢神さんも忙しいじゃないですか」
「おまえよりは忙しくねーよ」
「でも、家賃払わない代わりにオレが料理担当なんですから」
「え? そんなの決めたっけ?」
「決めたわけじゃないですけど、オレが嫌なんですよ。明日からは気をつけますから」
「無理はするな。後片付けはオレがやるから、風呂入ったらさっさと寝ろよ」
「はい……」
肩を落としてガックリしている姿は、まるで捨てられた犬みたいだった。
疲れていたらこれくらいのミスはよくある。たいしたことじゃない。
いつもの明るさで笑い飛ばせばいいのに、余裕がないのだろう。
少し休めばいつも通りになるはずだ。
だが、矢神の考えは甘く、これだけでは終わらなかった。
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