触れてしまえば、もう二度と~苦手な後輩教師(♂)に告白されて戸惑っています~

月音真琴

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第三章

07.驚くべき接触 ②

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「待ってください。何でそんなに怒ってるんですか。矢神さんに会いに来たって言うから家に入れたんですよ」
「だからって、勝手に入れるな。オレに聞いてからにしろよ」
「でも、ピザとか買ってきてくれて大荷物だったから、外で待たせるのも悪いなあと思って」
「だって、おまえ、食事の準備してたんじゃないのか? ピザと五目ちらし、そんなにたくさん食べられないだろ」
「大丈夫です。準備する前に彼女さんが来たので、ピザ食べられますよ。早く行きましょう」

 今度は遠野に急かされ、ダイニングルームに向かった。

「あ、来た、来た。早く食べよう」

 既に眞由美は席に着いていて、準備万端のようだった。

「ビール開けるね。遠野さんは、ピザ好きですか?」
「はい、大好きですよ」
「あーやも、ピザが大好物なの。いっつもピザが食べたいって言うよね?」
「え、ああ……」

 確かに矢神は、ピザが好きだった。眞由美と付き合っている時にも、よく二人で食べていた。

 だけど、一番の理由は、彼女がほとんど料理をしないというのが大きかった。特に仕事が終わってからは、彼女も疲れているだろうから、手料理が食べたいなんて言いにくかった。それなら、出来合いの物の方が簡単に食べられる。ただ、それだけのこと。

 長く付き合っていたはずなのに、そんなことも伝わっていなかったのかと実感する。
 当たり前のことだ。矢神は、彼女に一度だって、手料理が食べたいと言ったことがないのだ。わかってもらえるはずがない。
 ただ、言わなくても作ってもらえたら、どんなに嬉しかっただろうか。今更ながら、そんなことを思った。

 その日は、遠野と眞由美も話が弾んで、終始、和やかな雰囲気で終わる。矢神を除いては。
 仕事が終わってから、気分は五目ちらしを食べることでいっぱいだった。そのせいか、ピザは美味しいはずなのに、何だか満足できなかったのだ。


***


 それからしばらく、矢神の家に眞由美が来る日が続いた。

 会う約束をしているわけではなかったが、毎回夕食になるようなものを買ってきてくれて、遠野を含めた三人で、他愛ない話をして過ごす。

『あーやとやり直したい』

 そう言われたから構えていたが、何かしてくるわけでもなく、邪見な態度も取れなくて少し苦労した。

 だけど、一緒にいる遠野も、食事の準備をしなくていいから楽だと言っていたし、眞由美と楽しそうにしていたから、問題を先延ばしにしていたのだ。


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