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第二章

24.同僚の相談と危険な状況 ③

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「信じないだろ。かなり上手くやってたようだからな」
「おまえは、何で知ってんだよ」
「偶然だ。おまえ以外の男と一緒にいるのを目撃した。気になって調べてみたら、他にも男がいたのがわかった」
「……調べたって」

 自分の利益にならないことは一切しない男なのに、そこまで行動を起こしていたことに驚いてしまう。

「オレが言ったところで、史人あやとが女と別れないのはわかってた。だから直接、オレがあの女と関係を持ったんだ。それを知れば身を引くだろ?」
「引かなかったらどうする気だったんだ」
「絶対に身を引く。現にそうだった。おまえはそういう奴だよ」
「意味わかんねー」

 矢神のためとはいえ、もっと違う方法があったのではないかと疑問が浮かぶ。
 誤解が解けなければ、嘉村と矢神の関係は険悪ムードのままだ。二度と会わなくてもいい人間ならまだしも、職場が同じで共に働いていく相手なのにリスクが高すぎる。
 たとえ信じてもらえなくても、自分なら絶対に説得の方を選ぶ。矢神はそう考えていた。

「そんなことはどうでもいいんだよ」

 嘉村がごくごくと喉を鳴らしながらビールを飲んだ後、テーブルの上に缶ビールを勢いよく置いた。

「遠野のことだ」

 彼の感情的になっている姿を見るのは珍しいことだった。だが、相手が遠野なら仕方がない。

「あいつ、また何かやらかしたのか?」
「いつからそういう関係になったんだ」
「関係?」

 部屋を貸していることだろうか。嘉村の言っていることがわからなくて、首を傾げながらビールを口にすれば、急に腕を掴まれた。 その拍子に持っていた缶ビールが床に転がり、カーペットを濡らす。
 だが矢神は、それをすぐに片づけることができなかった。嘉村に組み敷かれていたからだ。

「……ビール、こぼれてるぞ」
「いいよ、放っておいて」

 痛みを感じるほどの強い力で、嘉村は矢神の両腕を掴んでいた。
 彼女と付き合っていたのは矢神のため、だったとしてもこの行動はどういうことなのか理解ができない。

「いったい何なんだよ。文句があるなら口で言え」
「史人は、男もいけるなんて知らなかったよ」
「なに、言って……」

 矢神の話を聞かずに、嘉村は頬に唇を寄せてくる。

「おい、離れろ」

 嘉村から顔を背けて何とか抵抗を示すが、彼は止めようとはしない。

「遠野には許すのに、オレとは嫌だってことか?」
「何で遠野が出てくんだ、おまえの言っていることがわかんねーよ。ちゃんと説明しろ」

 彼の身体の下で手足を必死に動かすが、まるで意味がなかった。前の時もそうだが、体格はそんなに差がないはずなのに、嘉村のどこにこんな力があるのか。
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