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第二章

09.生徒との向き合い方 ①

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 教師の悩みは尽きない。
 自分の教師という立場を考えながら、生徒や生徒の保護者と信頼関係を築いていく。また学校内での教師同士の関係も大切だ。お互い助け合うことができる。
 だが、問題は次から次へと出てくるのが現状。どんなに真面目にやっていようとも、だ。
 教師というのは、本当に好きじゃないと続けていけない仕事なのかもしれない。



***



「長谷川先生、頭痛薬ありますか?」

 矢神は医務室に来ていた。朝から頭が痛くて、我慢できない状態だったからだ。

「珍しいね、矢神先生がここに来るなんて。休んでいく?」
「すぐ授業なんで」

 養護教諭の長谷川先生は、ふふっと笑った。

「いいじゃない、さぼっちゃえば? そういう先生もいるよ」

 その言葉に驚いた矢神は、受け取った頭痛薬を危うく床に落としそうになった。

「え、本当ですか?」

 更に長谷川先生が、可笑しそうに笑う。

「いるわけないじゃない。生徒はたくさんいるけど」
「驚かせないでください」

 小さくため息を吐いて医務室から出ようと思ったら、呼び止められる。

「待って、矢神先生」
「……なんですか?」

 振り向くと、真剣な表情で矢神を見据えてきた。

「あの……」
「最近、元気ないよね。生徒たちも噂してた」
「そんなことないですよ」
「何かあった? って、まあ、あの生徒たちをまとめるんだからいろいろあるだろうけど」
「大丈夫です」
「そう? 矢神先生、頑張りすぎるところあるからね」

 傍から見れば、元気ないように見えるのだろうか。表には出さないように気をつけてはいるのだが。

「ああ、そっか」

 長谷川先生は、何か思いついたように意味深な笑みを浮かべた。

「長谷川先生?」
「付き合ってた彼女にフラれたからか、そりゃあ元気なくすよね」

 言った覚えのないプライベートな情報が長谷川先生に知れ渡っていた。しかし、こんなことはよくあることで驚くようなことではない。

「……もう行っていいですか?」

 薬が欲しくても矢神は医務室に近づかないようにしていた。それは、こんな風に長谷川先生の相手をしなくてはいけないからだった。

「矢神先生、からかうと楽しいんだもの。彼女と別れたからって生徒に手を出したらダメだよ」
「え……?」
「真面目な矢神先生がそんなことするわけないか」

 長谷川先生は、書類に目を通しながらけらけらと笑う。
 彼女のいつもの冗談だとわかっていても内容が内容だけに上手く表情を作ることができなかった。
 何かを知っているんじゃないかと不安になる。
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