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第二章
03.深まる絶望 ③
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「もしかして、全てなかったことにするつもりですか? ほら、これ見てください」
ポケットから取り出した自分の携帯電話を矢神に見せてきた。画面には動画が映っているようだ。見えにくくて覗き込むようにすれば、飛び込んできた映像に思わず息を呑み、画面に釘付けになった。
「なっ……」
そこには、胸元をはだけさせたベッドに眠る矢神の姿が映し出されていたからだ。
「矢神先生でもこんな間違い犯しちゃうんですね。あはっ、その表情いいなあ。今、すごく動揺してますよね?」
あまりの衝撃的な事に、平常心を保つことができずにいた。
「あの日、あなたはひどく傷ついていました。自分のせいで生徒が卒業できなくて。なぐさめてくれるなら誰でも良かった、そんなところですか?」
記憶がないから、弁解のしようもなかった。
「責任取ってください」
「どうすれば……」
「ボクと恋人として付き合ってください」
「それはできない」
「男同士でも案外楽しいですよ」
「そうじゃない、生徒とはそういう関係にはなりたくない」
「でも、身体の関係は持っちゃったんですよね?」
言っていることがめちゃくちゃなのは、自分でもわかっていた。それでも生徒と付き合うことは絶対にできない。教師になった時に、そう自分で決めていた。
「違う形で、責任を取らせてもらえないか?」
「恋人じゃないと嫌です。じゃあ、もう少し時間あげますね。学校にばれても大変でしょ? どうするか考えておいてください」
最初の時とは違って楢崎の口元が嬉しそうに歪んだ。そして、鞄を持って軽やかに面談室を出て行く姿は、まるで別人のようだった。
自分のしたことに、頭を抱えるしかない。どうすればいいかなんて、何も思いつかなかった。生徒と関係を持った責任の取り方なんてわからない。楢崎が言うように、彼の恋人になるしか償える方法はないのか。正解があるなら誰か教えて欲しい。
***
「矢神先生?」
遠野に声をかけられて矢神は我に返った。いつの間にか自分の席についている。職員室に戻った記憶がなかった。
「顔、真っ青ですよ」
心配そうな遠野の顔。最近、こんな顔しか見ていないような気がした。
「たいしたことない……」
本当にそうなら良かったのだけれど、今のところ解決策は見つからない。
あの日、ホテルに誰かがいた形跡は確かにあった。今まで何もなかったから、考えないようにしていただけのこと。
行きずりの相手と関係を持つ。そんなことを自分がするとは思えなかった。
だが、あの時はまともじゃなかったのは覚えている。それでもまさか相手が生徒だったなんてことを予想できるわけがない。
整理がつかなくて何も考えられず、頭の中は空っぽになっていた。
ポケットから取り出した自分の携帯電話を矢神に見せてきた。画面には動画が映っているようだ。見えにくくて覗き込むようにすれば、飛び込んできた映像に思わず息を呑み、画面に釘付けになった。
「なっ……」
そこには、胸元をはだけさせたベッドに眠る矢神の姿が映し出されていたからだ。
「矢神先生でもこんな間違い犯しちゃうんですね。あはっ、その表情いいなあ。今、すごく動揺してますよね?」
あまりの衝撃的な事に、平常心を保つことができずにいた。
「あの日、あなたはひどく傷ついていました。自分のせいで生徒が卒業できなくて。なぐさめてくれるなら誰でも良かった、そんなところですか?」
記憶がないから、弁解のしようもなかった。
「責任取ってください」
「どうすれば……」
「ボクと恋人として付き合ってください」
「それはできない」
「男同士でも案外楽しいですよ」
「そうじゃない、生徒とはそういう関係にはなりたくない」
「でも、身体の関係は持っちゃったんですよね?」
言っていることがめちゃくちゃなのは、自分でもわかっていた。それでも生徒と付き合うことは絶対にできない。教師になった時に、そう自分で決めていた。
「違う形で、責任を取らせてもらえないか?」
「恋人じゃないと嫌です。じゃあ、もう少し時間あげますね。学校にばれても大変でしょ? どうするか考えておいてください」
最初の時とは違って楢崎の口元が嬉しそうに歪んだ。そして、鞄を持って軽やかに面談室を出て行く姿は、まるで別人のようだった。
自分のしたことに、頭を抱えるしかない。どうすればいいかなんて、何も思いつかなかった。生徒と関係を持った責任の取り方なんてわからない。楢崎が言うように、彼の恋人になるしか償える方法はないのか。正解があるなら誰か教えて欲しい。
***
「矢神先生?」
遠野に声をかけられて矢神は我に返った。いつの間にか自分の席についている。職員室に戻った記憶がなかった。
「顔、真っ青ですよ」
心配そうな遠野の顔。最近、こんな顔しか見ていないような気がした。
「たいしたことない……」
本当にそうなら良かったのだけれど、今のところ解決策は見つからない。
あの日、ホテルに誰かがいた形跡は確かにあった。今まで何もなかったから、考えないようにしていただけのこと。
行きずりの相手と関係を持つ。そんなことを自分がするとは思えなかった。
だが、あの時はまともじゃなかったのは覚えている。それでもまさか相手が生徒だったなんてことを予想できるわけがない。
整理がつかなくて何も考えられず、頭の中は空っぽになっていた。
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