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第一章
37.隣で食べる手作り弁当 ②
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矢神は弁当の蓋を開けて中を見る。しかし、すぐに蓋を閉めて遠野を睨みつけた。
「なんだこれ!」
遠野は口にいっぱいご飯を詰め込みながら喋りにくそうに、食べないんですかと言ったが、何かに気づいたように焦って口の中のものを飲み込んだ。
「もしかして嫌いなものが入ってましたか?」
「違う! ご飯の上に乗っているものだよ」
「海苔です」
「そんなことわかってるよ! なんでこんな……ゴーゴーって……」
弁当一つ食べるのも疲れる。矢神は脱力したように頭を抱えた。
二段式の弁当箱の蓋を開ければ、矢神の目の前に飛び込んできたのは、白いご飯の上に乗っていたGO!GO!いう海苔の文字。思わず恥ずかしくなって蓋を閉じてしまったのだ。
「矢神先生、それはお昼からもゴーゴーレッツゴー!って意味ですよ」
遠野が片腕を上げ、元気よく振り回す。たまに遠野のこういうノリについていけないと、矢神は感じることがあった。
「そんなの知るか! 普通の弁当にしろ!」
「わかりました。明日は普通のお弁当にします」
遠野は真面目な顔で頷いた。だが、これではまるで手作り弁当を自ら催促しているみたいだ。そのことに後から気づいても、今更作らなくていいとは言える雰囲気ではなかった。
海苔文字のGO!GO!はというと、蓋を開けて誰にも見られないうちに箸で掻っ攫うように急いで口に入れたのだ。
なぜ、こんな思いまでして遠野の作った弁当を食べているのか、自分がわからなくなりそうだった。
「海苔は好きじゃないんですね」
タコ形のウインナーを笑顔で頬張りながら、またしても喋りにくそうに言った。
「好きじゃないなんて言ってないだろ。勝手に解釈するな」
「じゃあ、お弁当のおかずは何が好きなんですか?」
「そうだな、甘い卵焼きかな」
「甘い卵焼き……」
ジャージのポケットから手帳を出したと思ったら、矢神の言葉を復唱しながらメモしている。
「なんだこれ!」
遠野は口にいっぱいご飯を詰め込みながら喋りにくそうに、食べないんですかと言ったが、何かに気づいたように焦って口の中のものを飲み込んだ。
「もしかして嫌いなものが入ってましたか?」
「違う! ご飯の上に乗っているものだよ」
「海苔です」
「そんなことわかってるよ! なんでこんな……ゴーゴーって……」
弁当一つ食べるのも疲れる。矢神は脱力したように頭を抱えた。
二段式の弁当箱の蓋を開ければ、矢神の目の前に飛び込んできたのは、白いご飯の上に乗っていたGO!GO!いう海苔の文字。思わず恥ずかしくなって蓋を閉じてしまったのだ。
「矢神先生、それはお昼からもゴーゴーレッツゴー!って意味ですよ」
遠野が片腕を上げ、元気よく振り回す。たまに遠野のこういうノリについていけないと、矢神は感じることがあった。
「そんなの知るか! 普通の弁当にしろ!」
「わかりました。明日は普通のお弁当にします」
遠野は真面目な顔で頷いた。だが、これではまるで手作り弁当を自ら催促しているみたいだ。そのことに後から気づいても、今更作らなくていいとは言える雰囲気ではなかった。
海苔文字のGO!GO!はというと、蓋を開けて誰にも見られないうちに箸で掻っ攫うように急いで口に入れたのだ。
なぜ、こんな思いまでして遠野の作った弁当を食べているのか、自分がわからなくなりそうだった。
「海苔は好きじゃないんですね」
タコ形のウインナーを笑顔で頬張りながら、またしても喋りにくそうに言った。
「好きじゃないなんて言ってないだろ。勝手に解釈するな」
「じゃあ、お弁当のおかずは何が好きなんですか?」
「そうだな、甘い卵焼きかな」
「甘い卵焼き……」
ジャージのポケットから手帳を出したと思ったら、矢神の言葉を復唱しながらメモしている。
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