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2、この国は多分もうダメです
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この国は存亡の危機にあった。
原因は王家にある。
エルシリア王国の主たるエルシール王家。
もちろんのこと、エルシリアにおける最大勢力だ。
ただ、主の資質があれば、その潜在能力がまったくもって活かされていないのが問題だった。
国王の興味は、酒色と贅沢にしかない。
有能な人材に金を費やす気などはまったくの皆無。
もはや国王の周辺には、皇太子を含めた彼の遊び相手しか残っていなかった。
これではどうしようもない。
広大な領地も強大な武力も飾り物に等しい。
諸侯からすれば、これで王家を支配者と認められるわけが無かった。
ただの泥舟の主だ。
であれば、すでに他国と結ぶ動きも出ていた。
現に、敵国の介入を許しての反乱により、エルシリアはこの数カ月大きく揺れに揺れ動いたばかりであり、
(そのための婚約だったはずなのだがなぁ)
リディアはげんなりと天を仰ぎ続ける。
そのはずだったのだ。
リディアの生家、ヴィクトル公爵家は王国有数の大家である。
獅子の血脈と呼ばれる武勇の家系であれば、当主にもその嫡男にも覇気と実力は十分以上。
そのヴィクトル家が王家の後ろ盾になることで、国内の平穏を保つ。
その象徴がリディアとユスクの婚約のはずなのだ。
であればこそ、リディアは「うーむ」だった。
婚約を破棄すると言われたところで、もう面倒臭いからどうぞとは口にはしにくい。
「……あー、うん。ひとまずですが、陛下にご相談されてはいかがかな?」
きっとまぁ、このバカ皇子の独断先行だろう。
そう理解しての提案だったが、どうにも雲行きは怪しかった。
ユスクは自信満々の笑みを見せつけてくる。
「お父上の助けを期待しているようだが、ふふん。残念だったな。当然、この話にはお父上も大賛成だ。お前のようながさつな男女を王妃にするわけにはいかないからな」
リディアは再び天を仰ぐのだった。
(やっぱり、もうこの国ダメかなぁ……?)
この思いはお茶会の参加者たちにもあるようだった。
蒼白な顔をして、次から次にと大広間を後にしていく。
自らの家と領民を守る責務があれば、それが当然のことだ。
これからの混乱を予期して、急いで領地に戻ろうとしているに違いなかった。
(しかしまぁ、うん)
彼らとこのバカ皇子を比較してなんともげんなりだった。
どんな小領主であっても、普通はそう動くのだ。
危機にあっては、守るべきものを守るべく動くのだ。
しかし、このバカ皇子と言うべきか、バカ王家。
自らが危機にあることにも気づいていないようだった。
「ふふふ、どうだ? そして、これが私の新たな婚約者だ。可憐で美しく……分かるか? お前のような女では無いのだ。これが王妃の資格というものだぞ?」
周囲の状況を気にするでもなく、ユスクはうっとりと新しい婚約者とやらの頬を撫でている。
もう好きにしてくれとは思ったが、さてはてだった。
この婚約の破綻は、この国の崩壊の始まりを意味する。
婚約を取り決めた父のためにも、せめて先送りさせるべきではあったが……
「おい、リディア! 早く頷くがいい! 泣いて請うても許しはせん! お前などを我が王家の王妃になどと冗談ではないからな!」
とのことらしい。
泣いて請う気など無かったが、何を言ったところでこの皇子を心変わりさせることは難しそうだった。
(……あとはお父上にお任せするか)
リディアはため息をついた上で、「承知しました」と短く応じた。
原因は王家にある。
エルシリア王国の主たるエルシール王家。
もちろんのこと、エルシリアにおける最大勢力だ。
ただ、主の資質があれば、その潜在能力がまったくもって活かされていないのが問題だった。
国王の興味は、酒色と贅沢にしかない。
有能な人材に金を費やす気などはまったくの皆無。
もはや国王の周辺には、皇太子を含めた彼の遊び相手しか残っていなかった。
これではどうしようもない。
広大な領地も強大な武力も飾り物に等しい。
諸侯からすれば、これで王家を支配者と認められるわけが無かった。
ただの泥舟の主だ。
であれば、すでに他国と結ぶ動きも出ていた。
現に、敵国の介入を許しての反乱により、エルシリアはこの数カ月大きく揺れに揺れ動いたばかりであり、
(そのための婚約だったはずなのだがなぁ)
リディアはげんなりと天を仰ぎ続ける。
そのはずだったのだ。
リディアの生家、ヴィクトル公爵家は王国有数の大家である。
獅子の血脈と呼ばれる武勇の家系であれば、当主にもその嫡男にも覇気と実力は十分以上。
そのヴィクトル家が王家の後ろ盾になることで、国内の平穏を保つ。
その象徴がリディアとユスクの婚約のはずなのだ。
であればこそ、リディアは「うーむ」だった。
婚約を破棄すると言われたところで、もう面倒臭いからどうぞとは口にはしにくい。
「……あー、うん。ひとまずですが、陛下にご相談されてはいかがかな?」
きっとまぁ、このバカ皇子の独断先行だろう。
そう理解しての提案だったが、どうにも雲行きは怪しかった。
ユスクは自信満々の笑みを見せつけてくる。
「お父上の助けを期待しているようだが、ふふん。残念だったな。当然、この話にはお父上も大賛成だ。お前のようながさつな男女を王妃にするわけにはいかないからな」
リディアは再び天を仰ぐのだった。
(やっぱり、もうこの国ダメかなぁ……?)
この思いはお茶会の参加者たちにもあるようだった。
蒼白な顔をして、次から次にと大広間を後にしていく。
自らの家と領民を守る責務があれば、それが当然のことだ。
これからの混乱を予期して、急いで領地に戻ろうとしているに違いなかった。
(しかしまぁ、うん)
彼らとこのバカ皇子を比較してなんともげんなりだった。
どんな小領主であっても、普通はそう動くのだ。
危機にあっては、守るべきものを守るべく動くのだ。
しかし、このバカ皇子と言うべきか、バカ王家。
自らが危機にあることにも気づいていないようだった。
「ふふふ、どうだ? そして、これが私の新たな婚約者だ。可憐で美しく……分かるか? お前のような女では無いのだ。これが王妃の資格というものだぞ?」
周囲の状況を気にするでもなく、ユスクはうっとりと新しい婚約者とやらの頬を撫でている。
もう好きにしてくれとは思ったが、さてはてだった。
この婚約の破綻は、この国の崩壊の始まりを意味する。
婚約を取り決めた父のためにも、せめて先送りさせるべきではあったが……
「おい、リディア! 早く頷くがいい! 泣いて請うても許しはせん! お前などを我が王家の王妃になどと冗談ではないからな!」
とのことらしい。
泣いて請う気など無かったが、何を言ったところでこの皇子を心変わりさせることは難しそうだった。
(……あとはお父上にお任せするか)
リディアはため息をついた上で、「承知しました」と短く応じた。
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