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9話:特権スキル①
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「うへへー、かいたくしゃ。かいたくしゃがいっぱいわーい」
そして、フォレスはマグヴァルガを手のひらに置いて契約の儀式を進めているのだった。
にっこにことしている彼女を難民たちの頭に運ぶ係である。
反対や反発の声は特に無く、次々と『開拓神』の契約者は増えていく。
「しかし、驚きました。まさか、この子が本当にスキル神だなんて」
一通りの作業を終えたところで、ルイーゼが驚きの声を向けてきた。
スキルを確認しての反応に違いない。
フォレスは同意の頷きを返す。
「あぁ、俺も驚いた。まさか、こんなところでスキル神に出会うなんてな」
「『開拓神』黎明をもたらすマグヴァルガですか……フォレス様に聞き覚えは?」
「無い。だがまぁ、この子の由縁なんてどうでもいい話だろうさ。俺たちに力を貸してくれているんだからな」
「そうですね。この状況で、スキルの有るか無しかは天と地の差です。本当にマグヴァルガ様には感謝の思いしかありません」
その謝意を伝えられた当人である。
マグヴァルガはにへらーとルイーゼに笑みを見せていた。
「えへへへ、かんしゃなんていらないよー? もちつもたれつ。かいたくしゃがいっぱいで、わたしすっごくしあわせー」
その言葉に何の偽りも無いに違いない。
見事にとろけそうな笑顔だった。
ルイーゼも、その笑みに釣られたように相好を崩す。
「ありがとうございます。マグヴァルガ様はどうにも私の知るスキル神とは違う方のようで」
「そうなの? よくわかんないけど……まぐちゃん! わたし、まぐちゃんだから!」
「そ、そうでしたね。正直、スキル神にちゃん付けとはなかなかですが……分かりました。がんばってマグちゃんと呼ばせていただきます」
「うんうん。それでよろしくー。えへへー」
ルイーゼとマグヴァルガの交流が進んでけっこうなことだった。
ほほえましいものであり、いつまでも眺めていたような気分にはなるが、実際はそうはいかない。
本題ということであった。
フォレスは肩のマグちゃんに横目で問いかける。
「それで、どうなんだ? パワー不足だったか。それが解消出来れば食料問題が解決出来るという話だったが、契約でそれは成ったのか?」
彼女は「ふふん」なんてかわいらしく鼻を鳴らして胸を張ってきた。
「かいしょうしたよー。ふふふふ。ちからがみなぎる……てりゃ」
そんなかけ声と共に、彼女はその場でくるりと回った。
そして、再び胸を張ってくる。
「ふふふ、まぐちゃんだい2けいたい。どう? ふぉれす、どう?」
非常に得意げな様子だった。
しかし、
(……あのー?)
「どう?」と言われましてもだった。
正直、なんの違いも分からない。
相変わらずのかわいいマグヴァルガがそこにいるだけだ。
しかし、愛しき彼女の問いかけなのだ。
どうにか失望させない反応を見せたいところだった。
「……そ、そうだな。マグちゃんのかわいさに一層の磨きがかかったような気がするな」
「おぉ! ふぉれす、わかるの?」
「わ、分かる分かる」
「うわー、やっぱりふぉれすだなぁ。まぐちゃん、ふぉれすすきー。だいすきー」
にへぇとしたほほえみを目の当たりにして、フォレスの胸中は幸せで一杯だった。
マグフヴァルガと笑みを交わし、「ふふふ」「ふふふふ」と笑い声も交わし続ける。
「え、えー、邪魔をするようで申し訳ないのですが、それで進展についてご説明いただけると……」
さすがはしっかりもののルイーゼだった。
幸せな心地を振り切って彼女に尋ねることになる。
「俺からもお願いするぞ、マグちゃん」
「はいはーい。じゃ、ふぉれす。すきるのかくにんいってみよー」
何か変化でもあるのだろうか。
フォレスは言われた通りに確認する。
〘特権スキル〙
『位階第一位特権』【成長促成(開拓)】
〘開拓系スキル群〙
+【採取系統】
+【建築系統】
+【栽培系統】
+【迎撃系統 】
「……なんか加わってるな」
マグヴァルガは嬉しそうに頷きを見せてきた。
「そう。まぐちゃん、ぱわーあっぷしました。だいいちのしと、ふぉれすにとっけんぷれぜんと」
フォレスは軽く目を見張ることになった。
プレゼント。
彼女から自身へのプレゼント。
そんなものに、思うところは1つだった。
(うわぁ、うれしい……)
フォレスは心の底からの笑みをマグヴァルガに向ける。
「ありがとう、マグちゃん。一生、一生大切にするから」
「えへへー。だいじにしてね? えへへー」
そうして「えへへ」「うふふ」と笑みを交わすのだが、ここでもやはりルイーゼだった。
「あのー、私たちにも分かるように話を進めていただけますと……」
当然すぎる要求であり、フォレスは頷きを見せる。
「どうやら、俺だけのスキルが増えたらしい。【成長促成】なるものだが」
「【成長促成】? 名前は違いますが『農業神』の特権スキルにそのようなものが存在したような……」
フォレスもそんな覚えがあった。
特権スキル。
スキル神に気に入られた契約者に与えられる、まさしく特権めいたスキルなのだが、『農業神』のそれが確かそんな雰囲気だったのだ。
「まぁ、試してみるか」
準備を進める。
『農業神』のものと同じであればという前提だが、まず畑を整えるのだった。
難民のほとんどが農民であれば、その辺りに手こずることはなかった。
『開拓神』の開拓系スキルもあれば、猫の額ほどの畑があっという間に出来上がる。
その上で、小麦の種籾を適当にまいて、近くの小川からの水を十分以上に土壌に染み込ませ……
「では、試すぞ」
告げると、周囲からは切実な期待の視線が集中する。
気持ちは非常に理解出来た。
マグヴァルガからのプレゼントが『農業神』のそれと同じであればだ。
この窮地を脱するための切り札になるに違いないのだ。
畑のうねに手をかざす。
魔術を行使する感覚にも似て、スキルの感覚が体に満ちる。
そして、行使する。
フォレスは思わず目を丸くすることになった。
そして、フォレスはマグヴァルガを手のひらに置いて契約の儀式を進めているのだった。
にっこにことしている彼女を難民たちの頭に運ぶ係である。
反対や反発の声は特に無く、次々と『開拓神』の契約者は増えていく。
「しかし、驚きました。まさか、この子が本当にスキル神だなんて」
一通りの作業を終えたところで、ルイーゼが驚きの声を向けてきた。
スキルを確認しての反応に違いない。
フォレスは同意の頷きを返す。
「あぁ、俺も驚いた。まさか、こんなところでスキル神に出会うなんてな」
「『開拓神』黎明をもたらすマグヴァルガですか……フォレス様に聞き覚えは?」
「無い。だがまぁ、この子の由縁なんてどうでもいい話だろうさ。俺たちに力を貸してくれているんだからな」
「そうですね。この状況で、スキルの有るか無しかは天と地の差です。本当にマグヴァルガ様には感謝の思いしかありません」
その謝意を伝えられた当人である。
マグヴァルガはにへらーとルイーゼに笑みを見せていた。
「えへへへ、かんしゃなんていらないよー? もちつもたれつ。かいたくしゃがいっぱいで、わたしすっごくしあわせー」
その言葉に何の偽りも無いに違いない。
見事にとろけそうな笑顔だった。
ルイーゼも、その笑みに釣られたように相好を崩す。
「ありがとうございます。マグヴァルガ様はどうにも私の知るスキル神とは違う方のようで」
「そうなの? よくわかんないけど……まぐちゃん! わたし、まぐちゃんだから!」
「そ、そうでしたね。正直、スキル神にちゃん付けとはなかなかですが……分かりました。がんばってマグちゃんと呼ばせていただきます」
「うんうん。それでよろしくー。えへへー」
ルイーゼとマグヴァルガの交流が進んでけっこうなことだった。
ほほえましいものであり、いつまでも眺めていたような気分にはなるが、実際はそうはいかない。
本題ということであった。
フォレスは肩のマグちゃんに横目で問いかける。
「それで、どうなんだ? パワー不足だったか。それが解消出来れば食料問題が解決出来るという話だったが、契約でそれは成ったのか?」
彼女は「ふふん」なんてかわいらしく鼻を鳴らして胸を張ってきた。
「かいしょうしたよー。ふふふふ。ちからがみなぎる……てりゃ」
そんなかけ声と共に、彼女はその場でくるりと回った。
そして、再び胸を張ってくる。
「ふふふ、まぐちゃんだい2けいたい。どう? ふぉれす、どう?」
非常に得意げな様子だった。
しかし、
(……あのー?)
「どう?」と言われましてもだった。
正直、なんの違いも分からない。
相変わらずのかわいいマグヴァルガがそこにいるだけだ。
しかし、愛しき彼女の問いかけなのだ。
どうにか失望させない反応を見せたいところだった。
「……そ、そうだな。マグちゃんのかわいさに一層の磨きがかかったような気がするな」
「おぉ! ふぉれす、わかるの?」
「わ、分かる分かる」
「うわー、やっぱりふぉれすだなぁ。まぐちゃん、ふぉれすすきー。だいすきー」
にへぇとしたほほえみを目の当たりにして、フォレスの胸中は幸せで一杯だった。
マグフヴァルガと笑みを交わし、「ふふふ」「ふふふふ」と笑い声も交わし続ける。
「え、えー、邪魔をするようで申し訳ないのですが、それで進展についてご説明いただけると……」
さすがはしっかりもののルイーゼだった。
幸せな心地を振り切って彼女に尋ねることになる。
「俺からもお願いするぞ、マグちゃん」
「はいはーい。じゃ、ふぉれす。すきるのかくにんいってみよー」
何か変化でもあるのだろうか。
フォレスは言われた通りに確認する。
〘特権スキル〙
『位階第一位特権』【成長促成(開拓)】
〘開拓系スキル群〙
+【採取系統】
+【建築系統】
+【栽培系統】
+【迎撃系統 】
「……なんか加わってるな」
マグヴァルガは嬉しそうに頷きを見せてきた。
「そう。まぐちゃん、ぱわーあっぷしました。だいいちのしと、ふぉれすにとっけんぷれぜんと」
フォレスは軽く目を見張ることになった。
プレゼント。
彼女から自身へのプレゼント。
そんなものに、思うところは1つだった。
(うわぁ、うれしい……)
フォレスは心の底からの笑みをマグヴァルガに向ける。
「ありがとう、マグちゃん。一生、一生大切にするから」
「えへへー。だいじにしてね? えへへー」
そうして「えへへ」「うふふ」と笑みを交わすのだが、ここでもやはりルイーゼだった。
「あのー、私たちにも分かるように話を進めていただけますと……」
当然すぎる要求であり、フォレスは頷きを見せる。
「どうやら、俺だけのスキルが増えたらしい。【成長促成】なるものだが」
「【成長促成】? 名前は違いますが『農業神』の特権スキルにそのようなものが存在したような……」
フォレスもそんな覚えがあった。
特権スキル。
スキル神に気に入られた契約者に与えられる、まさしく特権めいたスキルなのだが、『農業神』のそれが確かそんな雰囲気だったのだ。
「まぁ、試してみるか」
準備を進める。
『農業神』のものと同じであればという前提だが、まず畑を整えるのだった。
難民のほとんどが農民であれば、その辺りに手こずることはなかった。
『開拓神』の開拓系スキルもあれば、猫の額ほどの畑があっという間に出来上がる。
その上で、小麦の種籾を適当にまいて、近くの小川からの水を十分以上に土壌に染み込ませ……
「では、試すぞ」
告げると、周囲からは切実な期待の視線が集中する。
気持ちは非常に理解出来た。
マグヴァルガからのプレゼントが『農業神』のそれと同じであればだ。
この窮地を脱するための切り札になるに違いないのだ。
畑のうねに手をかざす。
魔術を行使する感覚にも似て、スキルの感覚が体に満ちる。
そして、行使する。
フォレスは思わず目を丸くすることになった。
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