1 / 7
【R18】第1話
しおりを挟む
「うっ……うっ……」
短く、リズムを取るように俺の口から声が漏れる。
その音とアンサンブルを奏でるようにベッドが軋む。
「うっ!!」
「はぁ……はぁ……先輩。そんなに感じるんですか? もう、三回目ですよ」
俺の背後から、今年から面倒を見ることになった後輩、シモンの声が脳を揺さぶる。
既に俺の中で一度果てたはずのシモンの自身は、未だに春の若木のように張りを保っていた。
俺の蕾を初めて咲かせたその若木は、時に優しく時に激しく俺の内部を愛撫している。
今まで感じたことの無いような絶頂の中で、俺は自分に何が起きたのか、必死で思い出そうとしていた。
止めどなく訪れる快楽に溺れきってしまうことに抗うかのように。
☆☆☆
「ねぇ。私たち付き合わない?」
「冗談。俺たちは一度きりの関係のはずだろ?」
ことを済ませた後シャワーから出ると、ベッドに裸のまま伏せている女性がそんなことを口にした。
しかし、俺は相手の目を見ることもせず否定の言葉を返す。
今までにも何度かあったことだが、残念ながら俺には一向に興味のない事だった。
この部屋は朝まで取ってあるからと伝え、俺は女性を置いて一人部屋から出ていく。
通りにはまだまだ多くの人が、それぞれの人生を示すような姿で歩いている。
飲み過ぎたのか泥酔する者、それを介抱する者。
たった今仕事を終え真っ直ぐに帰路へと向かう者も居れば、大声を上げながらはしゃいでいる若者の姿もあった。
俺が先ほどまで居たバーから、男女が出てこちらに向かって歩いてくるのが目に付いた。
男性の腕は女性の腰に回っている。
きっと、彼らも俺と同じような流れなのだろう。
ふと、ショーウィンドウに移る自分と目が合う。
上等なスーツに包まれた整った顔立ちの青年が立っていた。
自分で言うのもなんだが、この恵まれた見た目のおかげで、今まで女性に不自由したことは無かった。
今まで関係を持った女性の数を挙げればキリがない。
だが、今までどんな女性と付き合っても、上手く言葉に出来ない不自然さを感じていた。
始めは相手に問題があるのだろうと気に止めてなかった。
いつか見つかるだろうと、多くの女性と付き合っては、結果別れることを繰り返していた。
そんなことを繰り返していくうちに、俺は付き合うということ自体億劫になってしまった。
いつからか、言い寄ってくる相手には既に特定の人が居ると断るようになる。
しかし完全に割り切れる訳でもなく、まるで自分は正常だと自分自身に言い聞かせるためだけに、定期的に行きずりの恋を繰り返していた。
「付き合うだって? 冗談。相性は最悪だった」
既に目の前に居ない女性に向かって、俺の心の声を漏らす。
自分のこの気持ちが何なのかも分からぬまま、満たされぬ心を抱えて、俺は自宅へ戻ろうと駅へと向かった。
「あれ? 透先輩。こんな時間に一人でどうしたんですか? 随分前に帰ったはずでは?」
聞き覚えのある声がして俺は顔をそちらへと向ける。
「シモンか。お前こそどうした? 一緒の時間に帰ったはずだが?」
目線の先には、幹部候補生として研修のため今月から俺の部署に配属された後輩のシモンが立っていた。
俺の直属の部下になり面倒を見ているが、前評判通り周りが嫉妬をするほどの後輩だった。
海外の有名大学を首席で卒業した後、現地の支社に入社。
そこで目覚しい成績を成して、そうそうに本社への異動が決まった様なやつだ。
俺も負けるつもりは無いが、おそらく出世街道をそのままかけ登っていくだろう。
それはシモンの種族、狼族としては異例のことだと言っていいだろう。
海外の多くでは既に表立った種族による差別は禁止されている。
しかし、島国である俺の国では未だに他種族への差別意識が強い。
それをものともしないほどの実績、そして才能をシモンは示しているのだ。
「同期の人達から飲み会に招待されまして。今終わったところです。先輩は? 少し酒の匂いがしますね。それと……」
「ん? ああ。そこのバーで飲んで、今から帰るところだ」
「飲んでた……一人でですか?」
「なんだ? ああ。そうだが。何かあるのか?」
俺はシモンの顔が少し歪んだようにも感じたが、気のせいだろうと嘘を付いた。
わざわざさっきの行為を知り合って間もない後輩に言うほど、俺は口が軽くはない。
「なんで……嘘つくんですか?」
「は? なんだと?」
「なんで嘘つくんですか!? 先輩からは女性の臭いがします! しかもこの前とは違った人の! その前とも!!」
突然俺の誰にも話したことのない事実を大声で叫ぶ後輩を前に、俺は声も出せず目を見開き立ちすくんでいた。
短く、リズムを取るように俺の口から声が漏れる。
その音とアンサンブルを奏でるようにベッドが軋む。
「うっ!!」
「はぁ……はぁ……先輩。そんなに感じるんですか? もう、三回目ですよ」
俺の背後から、今年から面倒を見ることになった後輩、シモンの声が脳を揺さぶる。
既に俺の中で一度果てたはずのシモンの自身は、未だに春の若木のように張りを保っていた。
俺の蕾を初めて咲かせたその若木は、時に優しく時に激しく俺の内部を愛撫している。
今まで感じたことの無いような絶頂の中で、俺は自分に何が起きたのか、必死で思い出そうとしていた。
止めどなく訪れる快楽に溺れきってしまうことに抗うかのように。
☆☆☆
「ねぇ。私たち付き合わない?」
「冗談。俺たちは一度きりの関係のはずだろ?」
ことを済ませた後シャワーから出ると、ベッドに裸のまま伏せている女性がそんなことを口にした。
しかし、俺は相手の目を見ることもせず否定の言葉を返す。
今までにも何度かあったことだが、残念ながら俺には一向に興味のない事だった。
この部屋は朝まで取ってあるからと伝え、俺は女性を置いて一人部屋から出ていく。
通りにはまだまだ多くの人が、それぞれの人生を示すような姿で歩いている。
飲み過ぎたのか泥酔する者、それを介抱する者。
たった今仕事を終え真っ直ぐに帰路へと向かう者も居れば、大声を上げながらはしゃいでいる若者の姿もあった。
俺が先ほどまで居たバーから、男女が出てこちらに向かって歩いてくるのが目に付いた。
男性の腕は女性の腰に回っている。
きっと、彼らも俺と同じような流れなのだろう。
ふと、ショーウィンドウに移る自分と目が合う。
上等なスーツに包まれた整った顔立ちの青年が立っていた。
自分で言うのもなんだが、この恵まれた見た目のおかげで、今まで女性に不自由したことは無かった。
今まで関係を持った女性の数を挙げればキリがない。
だが、今までどんな女性と付き合っても、上手く言葉に出来ない不自然さを感じていた。
始めは相手に問題があるのだろうと気に止めてなかった。
いつか見つかるだろうと、多くの女性と付き合っては、結果別れることを繰り返していた。
そんなことを繰り返していくうちに、俺は付き合うということ自体億劫になってしまった。
いつからか、言い寄ってくる相手には既に特定の人が居ると断るようになる。
しかし完全に割り切れる訳でもなく、まるで自分は正常だと自分自身に言い聞かせるためだけに、定期的に行きずりの恋を繰り返していた。
「付き合うだって? 冗談。相性は最悪だった」
既に目の前に居ない女性に向かって、俺の心の声を漏らす。
自分のこの気持ちが何なのかも分からぬまま、満たされぬ心を抱えて、俺は自宅へ戻ろうと駅へと向かった。
「あれ? 透先輩。こんな時間に一人でどうしたんですか? 随分前に帰ったはずでは?」
聞き覚えのある声がして俺は顔をそちらへと向ける。
「シモンか。お前こそどうした? 一緒の時間に帰ったはずだが?」
目線の先には、幹部候補生として研修のため今月から俺の部署に配属された後輩のシモンが立っていた。
俺の直属の部下になり面倒を見ているが、前評判通り周りが嫉妬をするほどの後輩だった。
海外の有名大学を首席で卒業した後、現地の支社に入社。
そこで目覚しい成績を成して、そうそうに本社への異動が決まった様なやつだ。
俺も負けるつもりは無いが、おそらく出世街道をそのままかけ登っていくだろう。
それはシモンの種族、狼族としては異例のことだと言っていいだろう。
海外の多くでは既に表立った種族による差別は禁止されている。
しかし、島国である俺の国では未だに他種族への差別意識が強い。
それをものともしないほどの実績、そして才能をシモンは示しているのだ。
「同期の人達から飲み会に招待されまして。今終わったところです。先輩は? 少し酒の匂いがしますね。それと……」
「ん? ああ。そこのバーで飲んで、今から帰るところだ」
「飲んでた……一人でですか?」
「なんだ? ああ。そうだが。何かあるのか?」
俺はシモンの顔が少し歪んだようにも感じたが、気のせいだろうと嘘を付いた。
わざわざさっきの行為を知り合って間もない後輩に言うほど、俺は口が軽くはない。
「なんで……嘘つくんですか?」
「は? なんだと?」
「なんで嘘つくんですか!? 先輩からは女性の臭いがします! しかもこの前とは違った人の! その前とも!!」
突然俺の誰にも話したことのない事実を大声で叫ぶ後輩を前に、俺は声も出せず目を見開き立ちすくんでいた。
25
お気に入りに追加
167
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
獅子王と後宮の白虎
三国華子
BL
#2020男子後宮BL 参加作品
間違えて獅子王のハーレムに入ってしまった白虎のお話です。
オメガバースです。
受けがゴリマッチョから細マッチョに変化します。
ムーンライトノベルズ様にて先行公開しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ぼくは男なのにイケメンの獣人から愛されてヤバい!!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
捨て猫はエリート騎士に溺愛される
135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。
目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。
お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。
京也は総受け。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる