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3章
12
しおりを挟む数日しか離れてないのに、こんなにロンが恋しかったなんて。
この人の腕の中がこんなに安心するなんて。
「大丈夫・・だった?怪我とかしなかった?」
そっと優しく頬をなでながらロンは聞いてきた。
「うん、大丈夫」
「よかった・・・」
そういってまたぎゅっと抱きしめた。
ごめんね。いっぱい心配かけたね。
「あの~。風邪引くと思うんですけど」
後ろから、アラン王子が申しわけないように声をかけた。
「あいつは・・・・」
ロンの表情が険しくなる。
そうか、ロンはアラン王子のことを知ってるんだ。
私を隠すように立ちはだかってアラン王子を睨む。
「あ、あの、アラン王子は助けてくれたの」
ロンの袖を引っ張って後ろから告げる。
「あいつが?」
信じられないという表情で私を見つめる。
「そう、助ける代わりにロンにあわせてほしいって頼まれたのよ」
私たちの話にニコニコしているアラン王子。
しばらくロンは考え込んでいたけど、
「わかった。とりあえず、城に戻りましょう」
そういって一同を見まわした。が、視線があるところに止まった。
「あれは・・・」
あ、野獣さんね。真っ白なんだけど今は雨と泥で大変なことになってる。
なのでかなり印象は凶悪な感じになってしまってるけど尻尾はフリフリと可愛い。
でもびっくり・・・だよね。
「ええと、成り行きで一緒に行きたいと」
申しわけなくて下を向いてしまった。
「いいよ。そのかわりみんなを傷つけないように話しつけてね」
ぽんぽんと頭をやさしくなでてくれた。
ううう、やさしいなぁ。すきだなぁ。
思わずにやけてしまった。
「あの、イチャつくのは二人の時にしていただきたいのですが・・・」
申し訳ないようにアラン王子が小声で言った。
しまった、みんながいるんだった。
ごめんなさい。
「じゃあ、城に行きましょう。あと数時間走りますが大丈夫ですか?」
私はわたわたしてたのに、しれっとロンが皆に告げる。
一同、うなずいて城に向かった。
城に戻って皆濡れ細っていたのでお風呂に入ってから話をすることになった。
私は自分より先に野獣さんを入れることにした。
最初は嫌がってたけど、お湯の温かさが気に入ったのか、
おとなしく洗われてくれた。
「うーん。野獣さんと呼ぶのも変だね。名前は?」
耳の後ろをゴシゴシと擦りながら聞いてみた。
『今まで名前なんかなかった。』
そうか。そうだよね、人間にひどいことばっかりされてたんだものね。
「じゃあ、私がつけてもいい?」
ザバーッと上からお湯をかける。
『つけてくれるの?』
うーん。なんにしよう。考えながらゴシゴシとタオルで拭いた。
じっと彼を見つめる。
綺麗な青い瞳・・・。青・・・。海・・・・。
「海と書いてカイと読む。どぉ?」
『カイ?』
まんざらでもない顔をしてくれた。
ブルブルブルッと全身震わせて水分を飛ばす。
『いいね。気に入った。』
久しぶりに制服に袖をとおしてなんだかくすぐったい。
でもやっぱりこの姿が一番落ち着くな。
髪をポニーテールにして気合を入れる。
身支度を整え、カイとともにロンの部屋に行く。
ロンは私から離れようとしない。
どこに行くにも私にぴったりくっついている。
「まるで、刷り込みされたひよこみたい」
くすっと笑う私を尻尾でバシッと背中をたたかれた。
いったいなぁ。
私たちのやり取りをロンの部屋の前で警備をしている人たちがかなり驚いていた。
「あ、お疲れ様です。この子はカイっていいます。皆さんに危害は加えないので安心してください。
それと、ロンいますか?」
かなり引きつった表情でこくこくとうなずきとおしてくれた。
まあ、何度も見れば馴れてくるでしょ。
コンコンとノックする。
中から「どうぞ」とロールの声が聞えた。
「ロン。お待たせ・・・・て私が一番みたいね」
部屋を見渡すとロールとコーナンだけがいた。
「あ、ロール、師匠、ただいまです」
こっちに帰ってきて挨拶まだでした。
「おかえりなさい。ご無事で何よりです」
「おかえり。大変だったな」
師匠が頭をなでてくれた。
師匠が褒めてくれるなんてめったにないので素直にうれしい。なのでデレデレしてしまった。
「ゴホン」
「グルルルルル・・・」
後ろからうなり声がふたつ。
「このくらいでやきもち焼いてどうするのですか。心の狭い・・・」
ボソッとでも聞えるようにロールが言う。
「あのねぇ」
「ヒナタに触れていいのはオレだけだ」
その発言に今度はカイがロンのほうにうなっている。
はははははは・・・・。ロンが二人に増えた。
うれしいやら大変やら。
ロンとカイがにらみ合っていたらまたもやノックの音がした。
「失礼します。アラン王子とニコ様をおつれいたしました」
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