Smile

アオ

文字の大きさ
上 下
35 / 55
3章

7

しおりを挟む




 「どう?僕のお願い」



 どうって、それしか私には選択がないんでしょうが。

 「鍵がないと無理だから君にはこの手しかないと思う。それに、安全だ。僕がいる限り」

 彼の真剣な瞳をみつめる。この人を信じていいのもか。
 
 「裏切らないよ。信じて」

 裏切られるのが怖くて人を信用しないより、

 人を信用して裏切られたほうがいい。

 どんな状況でも人を信じたい。

 「わかった。でもどうしてこの国を出てフォレットに行きたいの?」

 「ある人のため」

 ある人・・・・。

 「そう、僕の愛してる人のため。その人のためにはフォレットの国に行って国王と話をしたいんだ」

 「彼に何かをするの?」

 ロンに危険なことをするつもりなのか。それだったら許さない。

 「そんなことはしない。国王に力を借りたいんだ。多分僕一人で行っても信じてくれないだろう。

 ヒナを助けてヒナと一緒に行けば少しは話を聞いてくれると思うんだ」

 無理やりじゃなく、話し合おうとするその姿勢。

 決してわるい人じゃないって信じられるような気がした。

 「わかった。信じる」

 「じゃあ、行こう」

 え、もうですか。

 行動がすばやいというか、切り替えが早いというか。
 
 「うん。じゃないと、やつに行動読まれちゃうよ」
 
 「ヤツって?」

 「東の魔女、シーラ。あいつ、今の時間だったら寝てるから」

 寝てる・・・・。なんて、現実的な。

 「お肌に悪いからって。早寝なんだよ。だから、この時間に行動しないと」

 そか、そうだよね。お肌に悪い時間だもんね。私も気をつけないとねってなんだそれ。

 ツッコミどころはたくさんあるけど確かに早く動いたほうがいい。タイムリミットも迫ってる。

 「わかった。じゃあ、行こう」

 そういって部屋から出ようとすると首を捕まえられた。

 「あのねぇ、堂々とドアから出る人がいますか。部屋の外には警護のために兵士がうようよいるよ。

 こっちに秘密の抜け道があるからここから行くよ」

 テーブルの下に小さなドアがありそこから階段が見えた。

 おおー、忍者屋敷みたい。

 アラン王子はその階段を下りていった。

 中は、真っ暗だったけど、王子がブツブツ呪文を唱えてくれたら歩く数メートル先まで

 明かりが灯るようになった。

 しばらく階段を下りていくと廊下にでた。

 その廊下は道が四つに分かれたり五つに分かれたりと

 かなりわかりにくくなっていた。

 「迷路みたい・・・・」

 思わずつぶやく私に、

 「ちゃんとついてきてよ。ここは、賊が入り込んできても抜けれないように、

 わざとわかりにくくなってるんだ。

 この道を全部覚えてるのは僕ぐらいだ。後の王族のみんなは地図見ないと歩けないね」

 こわ~。おっかないなぁ。この国は。

 「どこの国もこんな道あるの?」

 「いいや、多分この国ぐらいじゃない?国王はなんせビビリだから、こんなことしないと

 毎日が怖くて仕方がないんだ。それに地下だけじゃないよ。

 王宮内にもいろんな仕掛けがあるんだ。あ、そこ、気をつけてね」
 
 アラン王子に指されたところはわかりにくいけど石が出っ張っていた。

 「それ踏むと大量の水が押し寄せてくるから」

 笑顔で言わないでほしい。そんな怖いこと。

 どうもあちこちに仕掛けがあって、ひとりじゃとても生きて出られそうにない。

 「大丈夫。僕から離れなければ安全だから。さ、早く行こう」
 
 促されてどんどん先に進んだ。

 一時間ほど歩いてある光が漏れているドアにたどり着いた。

 「しぃ。ここからは話したらだめだよ」

 そう言って彼はその光のほうへ様子を見に行った。

 私もその後についていく。

 ドアに耳をつけて音を探る。

 中では男が一人座っていた。ひょろひょろした男の人で

 一応甲冑をつけている。腰には刀らしきものが見える。

 あのくらいの人なら大丈夫かな。

 アラン王子をとんとんと指先でたたくと自分を指してそのあと見張りの男を指した。

 びっくりしていたけど、うなずいた。

 足元になんか落ちてないかな・・・・。あ、石発見。

 それを拾ってドアをこっそり開けてドアと反対方向のもう一つのドアのほうに向かって投げた。

 カツン。

 男は不思議がってドアのほうに向かった。

 その隙に私が男の後ろに立ち、首の辺りをガツンと一発お見舞いした。

 バタリと倒れてくれた。よかったぁ。一発で倒れてくれて。

 「そんなことも出来るんだ。」

 後ろからアラン王子がもそもそ出てくる。

 「ああ、こっちに来る前に、ちょっと訓練を受けたから」

 そう、勉強だけじゃなく武術のほうも教わった。なるべく、相手に危害を加えずに倒す方法をコーナンから

 もうみっちり特訓を受けたのだ。

 こんなにもうまく成功するって思わなかったけど。

 「ヒナ、こっち」

 アラン王子が指をさした方向には重々しいドアがあった。

 早速鍵で開けようとするとアラン王子に止められる。

 「ヒナ、ここの鍵にはある結界が張ってある。鍵を開けるとヤツにばれるようになってるんだ。

 だから空けたらすぐに王宮を出なきゃいけない。

 さっきみたいな道はヤツがいろいろ仕掛けるから危険すぎる。
 
 正面から出なきゃいけないよ。正面だと術よりもたぶん親衛隊の者達がやってくると思うから。

 どっちにしても危険だけどたぶんヒナにはこっちが安全だと思う。それでもいい?」

 アラン王子の話にちょっとぞっとしたけど、

 最初の計画ではそのつもりだったから覚悟は出来ている。
 
 「もちろん、アラン王子は味方なんでしょう?」

 彼の瞳をじっと見つめた。
 
 「うん。ヒナの味方。でも、僕は武術がてんでだめだからね」
 
 嘘のない瞳で答えた。
 
 一人でやるつもりだったけど味方がいるだけで心強い。しかも、相手のやり手王子ときた。

 うん、きっと大丈夫。

 そしてもうすぐ明け方だ。動物達も来てくれてる。

 重い鍵をガチャリと回した。 

 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。

ねんごろ
恋愛
 主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。  その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……  毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。 ※他サイトで連載していた作品です

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

処理中です...