Smile

アオ

文字の大きさ
上 下
33 / 55
3章

5

しおりを挟む


 私は迷っていた。

 差し伸べられた手をとるかとらないか。

 迷っているうちに相手の手が私の手をとって倒れていた私を引き上げた。

 「君・・・。大丈夫?」

 明らかに、高級そうな身なりをしているこの男性。

 白地に金の刺繍があちこちに入った服なんて普通は着れないだろう。年齢は二十歳ぐらいだろうか。

 深いエメラルドグリーンの切れ長の瞳に長い金髪を一まとめにしている。
 
 そしてあまりにも綺麗な顔をしすぎてなんだか現実味がない。

 ロンも綺麗な顔をしているが、この人はまた違う綺麗さというか、

 ちょっと近寄れない冷たい感じがする。

 私の中の野生のカンがかかわらないほうがいいと言っている。

 「あ、ありがとうございます」

 おずおずと立ち上がって早々にこの場から去ろうとした。

 が、相手は手を離してくれそうにない。

 「あの・・。手を離して頂けませんか?」

 日向は困った。相手がなかなか手を離すどころか、顔をまじまじとみられ、

 逃げられないのだ。

 「君、最近来たの?名前は?」

 「ヒナと申します。昨日からここでお世話になっております」

 下手に逃げると怪しまれるだろう。ちゃんと挨拶して立ち去れば良い。

 相手もそれに納得したのか日向の手を放してくれた。

 が、しかし。

 「ねえ、後から僕の部屋に来てくれない?いい物みせてあげるよ」

 なにを急にこの人はいってるんだろう。

 それに初対面で何者かもわからんのに部屋に行けるわけがない。

 きっと誰もがこの人を知っているぐらい有名な人なんだろうけど、

 あいにく私はこの国の人間じゃないんだけどな。

 立場上、人に命令するのに馴れている口調だし、

 なんだか、変な人にぶつかったみたい。

 しばし困惑していると、くすくす笑い出した。

 「別に君を襲うつもりはないよ。ただ、今の君が一番ほしいものと思うけど」

 私が一番ほしいもの?というか、私が何者か知ってるの?

 頭の中はハテナマークだらけになっている。
 
 「そうだなぁ、真夜中に来たほうが面白いかもね。待ってるから」
 
 そういうと、手をヒラヒラと振りながら鼻歌を歌い去っていった。

 「何者なのよう・・・」

 取り残された日向はつぶやいた。

 大体、真っ黒な髪と、瞳はニコに茶色に染めてもらった。だから、見かけはこっちの人間とかわらないはず。

 言葉も、問題ない。

 だから、正体はばれてないはずだけど・・・・・。

 誰かに相談したくても、もちろん携帯はないから相談できないし。

 困った。どうしよう・・・・。

 










 そのころ、ニコはルルにいきさつを話していた。

 「で、私たちが国を脱出するときに隠れ蓑になるようなでかいことをやってほしいのよ」
 
 「でかいことねぇ・・・・」

 ルルは考え込んだ。

 「あら、あなた火薬系の魔法は誰よりも優れてたじゃない。どかーんとさ。好きなようにやって」

 ニコの適当な言い方にルルは吹き出した。まったく、師匠は相変わらずだ。

 「どかーんて。それにそんなにでかいことするには費用が・・・」

 「うん、大丈夫。フォレット国で領収書切ってて」

 領収書って・・・・・・・。

 でも、面白そう。ニコには恩があるし。ここで、フォレット国に恩を売ってて損はないだろう。

 「それにね、今後ルルが起こすであろう事に関しても協力するってさ」

 さすが、太っ腹だね。あの国王。

 でも、私が計画してることなんで読んでるのさ。

 うちの情報はかなり厳しく漏れないようにしているというのにどうやって情報収集したのやら。

 まったく、恐ろしい人だね。

 今から作るとしても数時間はかかる。でも、間に合わないわけではない。

 そこに運ぶ時間も踏まえるとギリギリ・・・・・か。

 「わかったわ。その代わり、師匠も手伝ってよ。少しは火薬類持ってきてるんでしょ?

 ピン!みんなに呼びかけて計画を伝えな。一群には発光系の火薬を集めさせて、

 二群にはそれを運ぶ車を用意させて。三軍には王宮の様子をもらさずこっちに報告させて。

 四群にはでかいのあげるポイントのチェックと整備を」


 ピンと呼ばれた大男は久々のルルのわくわくした表情にニヤッと笑いながら

 「了解」

 とだけ言ってすぐに自分の仕事に取り掛かった。

 

 


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

You Could Be Mine ぱーとに【改訂版】

てらだりょう
恋愛
高身長・イケメン・優しくてあたしを溺愛する彼氏はなんだかんだ優しいだんなさまへ進化。 変態度も進化して一筋縄ではいかない新婚生活は甘く・・・はない! 恋人から夫婦になった尊とあたし、そして未来の家族。あたしたちを待つ未来の家族とはいったい?? You Could Be Mine【改訂版】の第2部です。 ↑後半戦になりますので前半戦からご覧いただけるとよりニヤニヤ出来るので是非どうぞ! ※ぱーといちに引き続き昔の作品のため、現在の状況にそぐわない表現などございますが、設定等そのまま使用しているためご理解の上お読みいただけますと幸いです。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

処理中です...