女王様と犬、時々下克上

吉川一巳

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女王様と犬、時々下克上 13

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 お風呂の順番はいつも恭平さんが先だ。お客さんだからというのもあるし、私が後で入って、そのまま掃除をしたいというのもある。今日は飲み会で疲れてるし匂いも早く落としたいだろうから、と恭平さんは順番の変更を申し出てくれたが、私は丁重にお断りした。

 入浴を追え、体にタオルを巻いた私は、ドキドキと早鐘を打つ心臓をなだめるために深呼吸をした。

 よし、行こう。

 私は気合を入れると、思い切って脱衣所を出た。そして、恭平さんが待つ部屋に入る。

「奈緒ちゃ……えっ?」

 いつもしっかりとパジャマを着込んで出てくる私が、タオル一枚で出てきたことに、恭平さんはそれまで弄っていたスマホを取り落とし、ぽかんと目と口を開けた。

「ど、どうせ脱ぐなら一緒かなって思っただけです。それだけですから!」

 私は言い訳しながら頬に熱が集まるのを感じていた。

「えっと、あ、じゃあ、電気……」

「今日は、い、いいです」

「え、で、でもさっきは……」

「気が、変わりました。暗いところでも結構見えるって言われて……その通りだなって。じゃあ、もう、いいかなって、お風呂入りながら思ったんです」

 緊張で途切れ途切れになりつつ説明すると、ごくりと恭平さんが生唾を飲んだ。どうやらご褒美はお気に召してもらえたようである。

「あ……で、でも、待ってくださいね。髪、先に乾かさないと枕が濡れちゃう」

「あ、そうだよね。ちょっと待ってね」

 そう言うと、恭平さんはこたつから立ち上がり、勝手知ったる他人の家でドライヤーを取ってきた。

 恭平さんがいる時は、髪やメイクに関わる事は全てお任せしている。さすがプロだけあって、ブローの仕上がり一つとっても自分でやるのと大違いだから、つい甘えてしまうのだ。それに、恭平さんに髪を触ってもらうのは純粋に気持ちいいし。

 私は恭平さんの前にぺたりと座りに行った。







 目覚めた私の視界に入ってきたのは、電灯の光だった。

(まぶしい……)

 何で私、寝てたんだろう。直前の記憶を探った私は、またドライヤーの最中に意識が飛んだことに気付いて赤面した。

 やばい。恭平さん怒ってるかな……?

 謝ろうと体を起こそうとして、体に腕が巻きついていることに気付く。更に言えば私は全裸だった。

 ベッドではなく恭平さんのために用意したお布団の中だ。

 上から毛布をかけられ、後ろから恭平さんに抱きすくめられた状態で私は眠っていたようだ。

 期待を持たせて寝てしまったのがさすがに申し訳なくて、私は恭平さんの方を向こうと身じろぎした。すると体に回された恭平さんの腕がぎゅっと締まる。

「ちょっと、苦しいです」

「んー……あ、奈緒ちゃん、起きたの」

「ごめんなさい、私。寝ちゃったみたいで」

「いいよ。疲れてたんだろうし。俺も寝てた」

 ふわあと欠伸をすると、恭平さんは腕を解いてくれた。

 私は毛布で体を隠しながら上体を起こし、恭平さんの方を向く。

 素肌に触れる感触でわかってはいたが、恭平さんも全裸だった。

「さむっ。全部持ってかないでよ」

 眉をひそめた恭平さんに、毛布をぐい、と引っ張られる。するとぽろりと裸の胸をさらすことになった。

「もう見たし隠さなくても」

 反射的に腕で隠すと、恭平さんは唇を尖らせた。

「……どこまでしたんですか」

 尋ねると恭平さんは目をそらした。

 下半身に違和感はないので、恐らく最後までされてはない、と思う。別にされていてもそういう関係なんだし、特に目くじらを立てるつもりもないのだが。

「あ、明るい所で見た……だけ」

「ホントに?」

「ごめんなさい。オカズにして一発抜きました」

 叱られると思っているのか、恭平さんはしょんぼりと項垂れた。

 こんな姿を見せられたら、いじめないといけないような気分になってしまう。

「無駄撃ちしたんですね」

「む、無駄じゃないもん。精子は三日で悪くなるから三日に一度は出すべきなんだもん」

「何ですかそれは。そうなんですか?」

「そうらしいよ。オナ禁しすぎると精子が死ぬから、ためることに意味はないらしい」

「へえ……でもそれとこれとは関係ないですよね。今日はするつもりだったんだし」

「それは奈緒ちゃんが寝ちゃったから! さすがに寝てるところを襲うのは悪いと思って我慢したんだもん」

「しても良かったのに」

「え……?」

「私の中で出して欲しかったって言ったらどうします?」

 私は恭平さんの頬に触れた。丸一日をかけて伸びたひげが、決して濃くはないんだけどチクチクする。

 唇を寄せてついばむような口付けをしながら、私は恭平さんの鎖骨から胸へと手を滑らせた。

 くり、と出っ張りを弄るとツンと勃ってくる。ピンクベージュのささやかな乳首は、私のものよりもきれいな色合いでなんだか腹立たしい。やわやわと揉みながら全身を絡め、さりげなくアソコに太腿で触れると、既に熱を持って硬くなっていた。

「奈緒ちゃん、エロい……」

 恭平さんの瞳は欲情に潤んでいた。

「ねぇ、どんな風に一人でしたんですか? 教えてください」

 耳元で囁くと、恭平さんは頬を赤く染めた。

「無理。恥ずかしい」

「意識のない私の体を使ったんですよね? 私には知る権利があると思うんです」

「や、やだ……軽蔑される」

「ドMで苛められるのが大好きな変態の癖に、更に軽蔑されるような事やったんですか? これ以上に恭平さんの評価は下がらないから安心してさらけ出しちゃってください」

 にっこりと笑うと、恭平さんは傷付いたような表情になった。

「酷い。俺のことそんな風に思ってたんだ」

「でも、そんな風に蔑まれて興奮してますよね? 軽蔑されるのもご褒美じゃないんですか?」

 悪魔になった気分で囁きながら、私は恭平さんの性器をゆるやかに太腿で刺激した。

 恭平さんはうつむいて唇を噛み、私の体から身を離すと、毛布をめくった。

 何も身につけていない上半身全部が、恭平さんの前にさらされる。エアコンが付いているとは言え肌寒いが、私の体を食い入るように見つめる恭平さんの視線が心地良い。熱を帯びた視線にあてられて、私の体の中心もかあっと熱くなる。

「奈緒ちゃん、おっぱい勃ってる。見られて感じてる?」

 恭平さんが、私の乳首に触れた。むず痒いような電流が走る。

「ん、違います。寒いからですよ。……こんな風に触ったんですか?」

「うん。こうやって、摘んだり揉んだり、奈緒ちゃんのおっぱい、大きくてきれいだから」

「そう言えばユキちゃんは小さかったですかね」

 その分細くてすらりとしていてとてもキレイな人だったけど。

「付き合った中では奈緒ちゃんが一番大きいよ。形もきれいだし乳首の色も薄いし……はあ、ホント幸せ。癒される」

 ふにふにと揉みながら顔を埋めたり、頬ずりしたり、前に無茶苦茶にされた時もそうだったけど、恭平さんはなかなかのおっぱい星人である。

「私よりよっぽど恭平さんの方が色、キレイじゃないですか」

「キレイとか言われても嬉しくない。それに奈緒ちゃんのおっぱい、充分キレイでエロいから」

 そうだろうか。確かに色は薄めだが、恭平さんの方がよっぽどピンクだ。比べるとより茶色っぽくて恥ずかしい。

 美白クリームを塗るといいと聞いたことがあるので、こっそり買って試してみよう。私は恭平さんの乳首を観察しながら決意した。

 ぼんやりと別のことを考えていると、乳首を軽く甘噛みされた。痛くはないが、痺れるような刺激に、私は恭平さんを思わず睨む。

「これ、気持ちいい?」

 ちゅ、と胸を吸い上げながらの質問に、私はつんとそっぽを向いた。

「別に」

「ホントに?」

 そう言いながら触れてきたのは下腹部だった。

「はあ……明るい所で見る奈緒ちゃんの体、超エロい。たまんない。ここの毛まで薄いなんて反則だろ……」

 そう言いながら、下の毛を鑑賞しながら撫で回す。指先が気持ちいいところをかすめて体が跳ねた。

 恭平さんはぺろりと唇を舐めると太腿を持ち上げた。

 私の女の子の部分が恭平さんの前にあらわになる。

「濡れてる」

 割れ目をなぞられて私は体が動きそうになるのを必死で抑えた。

「寝てる時は濡れてなかったのにやらしい。見られて触られて感じてる?」

 これは女王様を屈服させる下僕モードになっているような気がする。よろしくない傾向だ。

 私は無表情を装って冷たい視線を恭平さんに向けた。

「私はどんな風に一人でしてたのかが見たいってお願いしましたよね。意識のない私にそんな風にぶつぶつ独り言を言ってたんですか?」

「ごめんなさい調子に乗りました」

 恭平さんは素直に謝った。

「ふざけてないで見せてくださいよ。どんな風に私をオカズにしたんですか?」

「それは……」

 恭平さんはわずかにとまどいを見せた。

「お、怒らないでね」

 前置きをしてから、指先で割れ目を広げてくる。そして、自分の性器をこすり始めた。

 敏感なクリトリスから入り口をなぞられ、漏れそうになる声を私は必死に堪えた。

 性器を食い入るように見つめる恭平さんの目は、まるで肉食獣のようだった。

 自分でしているところを見せろという、私の言葉がこの獣の鎖になっている事実が気持ちいい。

 ああ、すごく早い。

 恭平さんが自分を慰める手の動き。以前も思ったけれど、こんなにして痛くないのだろうか。

 かと思ったら、先走りに濡れた先端を、私の脛に押し付けてくる。

「こんなこと、してたんですか? 意識のない私の体に」

「奈緒ちゃん、ごめん。変態でごめん」

 ハア、ハア、と荒い息を吐き、欲望に潤む瞳で恭平さんは謝罪を繰り返した。

「本当に見て触ってただけ?」

「入れてない! 入れたかったけど……奈緒ちゃんに、嫌われたくなくて」

「我慢したんですか? いい子ですね」

 私は上半身を起こし、恭平さんのふわふわの頭を優しく撫でた。

「どうします? このままイくまで自分でしますか? それとも入れたい?」

「入れたい。入れたいよ。許してもらえるなら、奈緒ちゃんの中で出したい」

 うるうるとした懇願にゾクゾクした。

「いいですよ。来てください」

 頬に手を添えると、恭平さんはおずおずと私に覆い被さって来た。私は自分から足を広げて恭平さんの体を迎え入れる。

 短く荒い息を吐きながら、恭平さんは自分のものを手で支え、私の入り口に宛がってきた。電灯の明かりの元、くっきりと見えているであろうソコを食い入るように見つめながら、入り口を先っぽでくすぐるようになだめ、ゆっくりゆっくりと入り込んでくる。

 初めての前戯なしの挿入なのに、痛みはなく、恭平さんの形に広げられる圧迫感だけがあった。

「おくまで、はいった。すご、全部、食べられてる」

 最奥にこつんと先端が当たると、恭平さんはうっとりと呟いた。下腹部を見ると、確かに私のアソコには根元まで恭平さんのモノが入り込み、陰毛同士が触れ合っていた。

「っ、すごい、いいよ。ぎゅうぎゅう締めてきて、入れてるだけできもちい……っ」

 ひくんとアソコが収縮するのが自分でもわかった。すると、中で恭平さんのモノがぐんと反り返る。充分大きくなってると思ったのに、更に中の圧迫感が増した。

 恭平さんの端正な顔が至近距離に近付いてきた。かと思ったら、唇を奪われる。

 歯列を割って侵入してきた舌に、口腔内も犯される。その動きに合わせるかのように、先っぽがぐりぐりと一番奥に押し付けられた。まるで赤ちゃんの部屋をこじあけようとするかのような動き方だ。

 上も下も粘膜同士が触れ合って、なんていやらしいんだろう。こつんこつんと子宮口をノックされる度に、電流のような快感が全身に走る。

 きもちいい。もっと、もっと欲しい。

 締め付けようとする膣壁のはしたない動きが止められない。快感を貪欲に拾い、精液を搾り取るために収縮を繰り返して恭平さんのモノを食い締める。

 ぜんぶ、ほしい。

 恭平さんの赤ちゃんの素。実を結ぶ事は恐らくないけど、一番奥に出してもらってナカを全部恭平さんで染められたい。

 深く、大きく、激しく、強く。

 唇が開放されたかと思ったら、恭平さんの腰の動きが激しくなった。

「んっ、ふ、はぁ、これ、きもちいっ」

 自分のものとは思えない、甘えたような嬌声が漏れる。

「ここ、好きだよね、奈緒ちゃん。いいよ。もっとあげる。俺で、気持ちよくなってっ」

 ずんずんと気持ちいいところばかりを攻められて、私は身をよじった。また陰嚢が性器の後ろ側に当たっている。

「ここばっかやっ……だめ、やだっ」

「やだじゃないでしょ? いいんでしょ? ほら、早くいけ。俺ので、いけよ」

 いやだ、こわい。

 自分が自分じゃなくなりそうな感覚に私は恐怖を覚えた。

 このまま高みに上り詰めたらどうなってしまうんだろう。

「――――」

 視界が真っ白に染まった。ぎゅうう、と今まで以上に恭平さんのモノを締め付けてしまう。

「く、そっ」

 短い悪態の後、最奥にぐい、と亀頭が押し付けられた。かと思うとびゅくびゅくと何かが叩きつけられる感触があった。それがまた快感を呼び起こし、私の体はびくびくと痙攣する。

 最後の一滴が出尽くしても、恭平さんは奥に押し付けたまま静止していた。

 ……また、いかされちゃった。

 はあはあと眉を寄せ、険しい表情の恭平さんを私はぼんやりと見つめた。

「奈緒ちゃん、いけた……?」

「はい」

「よかった……急に締められて、持ってかれたから……」

 恭平さんは安堵の表情を浮かべると、中からずるりとアレを抜いた。変わりに私のアソコに指をあてがい、割れ目をぐ、と広げてくる。

「ふふ、出てきた。やばい、すごいエロい」

 中から精液が流れて出てくるのが自分でもわかる。

「恭平さん、いい事教えてあげましょうか?」

「何?」

「中に出されたら掻きだしても後から出てくるので、次の日は生理用ナプキンが手放せないんですよ。そしてトイレに行って下着を下ろす度に、すごくえっちな匂いがするんです」

 私の囁きに、恭平さんは頬を染めると口元を押さえた。

「そんな事、言われたら、またしたくなる……」

 下腹部を見ると、興奮したのか恭平さんのアレは元気を取り戻していた。

「してもいいですよ」

「……ホントに?」

「はい。今日は恭平さんのお休みなのに全然一緒に過ごせなかったから。たまにはご褒美です」

「じゃ、じゃあ、次は後ろからがいい」

「…………」

「だ、だめ……かな?」

「……いえ、いいですけど。四つん這いになればいいですか?」

 少しためらった後に答えると、恭平さんはごくりと生唾を飲み込んだ。
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