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番外編 二回目の夜 01 ※

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「アリス様、今日は妻の役割を果たさせて貰えませんか……?」

 眠りにつこうとネージュが待つベッドに入ろうとした所、意を決した表情で話し掛けられ、アリスティードは固まった。

「……駄目ですか?」

「いや、そんな訳……! えっと、いいんですか……?」

 二回目の夫婦生活のお誘いに、アリスティードはおずおずと尋ねた。
 触れたいという気持ちはあれど、自分からは言い出せなくて、アリスティードはネージュとただ眠るだけの日々を過ごしていた。

 男のアリスティードには、女性が初めて男を受け入れた後の痛みが何日続くのかわからない。
 また、ナゼールに触られた事が相当な心の負担になっているらしく、毎日のようにうなされるネージュに、更に負担になりそうな事を強いるなんて到底できなかったのだ。

「アリス様がよろしければ……。明かりは……消して欲しいですけど……」

 ネージュはそう告げると、気まずそうに目を伏せた。

「ネージュの嫌がる事はしません。……消してきますね」

 アリスティードはそう前置きしてから、ベッド脇のテーブルに置かれたランプの火を落とした。

 すると寝室は闇に包まれる。
 だけど、カーテン越しに差し込む月明かりのおかげで、真の闇にはならないのは初めて結ばれた日と同じだ。
 ネージュは、寝間着の前のリボンを解いていた。
 彼女が身に着けているものは、そういう事を想定してか扇情的なデザインだった。
 だから、それだけで肌があらわになっている。

「アリス様、無理はされてないですよね……?」

 アリスティードが近付くと、ネージュはこちらを見上げておずおずと尋ねてきた。

「どうしてそういう発想になるんですか……」

 こちらはネージュに触れたくて触れたくて仕方なくて、ずっと我慢していたと言うのに。

「だって、毎日のようにうなされてアリス様を起こして……。私のような者を妻にして後悔されているのではないかと……」

 それ以上自分を下げるような言葉を聞きたくなくて、アリスティードは自身の唇でネージュの口を塞いだ。



   ◆ ◆ ◆



「ん……」

 はじまりは強引だったが、アリスティードの口付けは優しかった。
 侵入してきた舌が、ネージュの舌をくすぐるように絡めとる。

 ややあって、は……、と小さな吐息が聞こえ、唇が解放された。

「俺は無理も後悔もしていません。どれだけ我慢したと思ってるんですか」

「我慢……なさってたんですか……?」

「男はそういう風にできていますから」

「あ……」

 言われてみればそうだ。大きな街には必ずと言っていいほど娼館があるのは、男性にそういう欲求があるからだ。

「申し訳ありません、アリス様。私、そこまで考えが及ばなくて。我慢なさらないで下さい。私はあなたの妻ですから……」

「……あまり煽らないで欲しいです」

「え……」

 ネージュの戸惑いの声は、再び口付けで封じられた。
 そして、アリスティードはネージュの体を丁重な手付きでベッドに横たえ、覆いかぶさってくる。

 かと思うと、指先が下肢に伸びてきて、下着越しに、アリスティードを受け入れる場所をなぞられた。

「……っ」

 指先が性器の外側の敏感な部分を掠め、体が硬直する。
 ネージュの反応に、アリスティードは微笑むと、下着の中に不埒な手を侵入させた。

「濡れてます」

 囁きながら、アリスティードは入口に触れてきた。
 口付けだけで期待して、そんな状態になっている自分が恥ずかしい。

「まだ怖いですか?」

 羞恥に身を固くしたのを、彼は恐怖のためと勘違いしたようだ。ネージュはふるふると首を振った。

「怖くはないです。ただ、恥ずかしくて……」

 体を重ねるのは嫌ではない。むしろ、初めての夜に教えられた快楽に、期待している自分がいる。

「濡れてるのが?」
「……意地悪です」
「すみません。嬉しくて調子に乗りました」

 アリスティードは謝ると、つぷりと膣内に指を埋めてきた。

「んっ……」
「痛くないですか?」
「はい……。大丈夫です」

 二回目だからか、ネージュのそこは、初めての時よりもスムーズにアリスティードの指を迎え入れていた。
 それは彼にも伝わっているのか、緩やかな抜き差しが始まる。

 頬に、首に、愛おしげに唇を落としながら、アリスティードは膣内なかを慎重に慣らしていく。

「指を増やしますね」

 耳元で囁かれたと思ったら、膣内の圧迫感が増した。二本目が入ってきたのだ。

 膣内を広げたり、指をバラバラに動かしたり、時に敏感な陰核を親指で刺激されたり――。
 繋がるための準備をされているのだと実感すると、より羞恥心が増して、ネージュは口元を押さえた。

「辛くないですか?」
「はい」
「本当に?」
「ほんとうで……、っ、あ……」

 アリスティードの指先が、なんだかむずむずするところを掠めた。

「ネージュ……?」

 再び彼の指がそこに触れた。
 膣内の、お腹側の浅い所。

「あっ、やっ……!」

 刺激されたら腰が跳ねた。
 それを見たアリスティードは、執拗にそこを探り始める。

「やっ、だめ、アリス様……っ!」
「気持ち良さそうなのに?」
「へんになるっ……だから……」
「なって下さい」

 嫌だ。怖い。

「ゆびじゃなくて、も、きてくださっ……」

 ネージュはそこを弄られたくなかったので必死に訴えた。

「アリス様の、いれて……」

 そう告げた瞬間、アリスティードの雰囲気が変わった。
 指が引き抜かれたかと思ったら、膝を割られ、アリスティードの体が間に入ってくる。

 そして、下着の紐が解かれ、暴かれた大切な部分に、指よりもずっと熱く太いものがあてがわれた。

 アリスティードは、先端を入口にくっつけると、前後させ、中から分泌される蜜をまとわせる。

 こうやって潤すのは、痛みなく繋がるために必要な行為だと理解はできるのだが、互いの性器同士がキスをしているのだと思うと、あまりのいやらしさにいたたまれない気分になってきた。

 ――これから、もっとすごい事をするのに。

 ぐ……と男性器が潜り込んできた。
 膣口を通過する時に、少しだけ引き攣れるような痛みを覚える。
 だけどそれは、一番太い場所が通過すると落ち着いた。

「大丈夫ですか?」
「はい。平気、なので、奥まで来てください」

 はあはあと息を整えながら答えると、啄むような口付けが頬に降りてきた。
 そして、少しずつ膣の中にアリスティードが入ってくる。

 現在進行形で彼の形に広げられている。
 それが幸せで、ネージュはアリスティードの首に腕を回してしがみついた。

 やがて、指では届かなかった場所に彼のものが潜り込んできて――。

「あっ……」

 一番奥の突き当りにコツンと先端が到達して、ネージュは小さく悲鳴を上げた。

(ここ……)

 指で触れられている間、ずっとここがむずむずしていた。
 ずっと欲しかった場所に、ようやく刺激が貰えた。

 快感に、膣全体が収縮し、中にうずめられたアリスティードのものをぎゅうっと締め付ける。
 下腹部同士の触れ合いと、陰嚢が当たる感覚に、しっかりと根元まで飲み込んでいる事を自覚する。そして、彼の性器の凹凸も。

 アリスティードは、初めての時と同じように、ネージュが落ち着くのを待つつもりなのか、そのままの体勢でこちらの様子を窺ってきた。

「動いてもいいですか……?」

 ややあって、大丈夫そうだと判断したのか、どこか切なげに尋ねてくる。

「はい。お願いします……」

 ネージュが頷くと、抽挿が始まった。
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