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71話 フリーパスダンジョン11
しおりを挟むシュッ!シュッ!シュッ!
「上の魔物に比べたら多少は強くなっているが、まだまだだな!」
俺はコボルトを狩りながらそう呟く。
「ヴオン!!」
そんな俺の前にコボルトウォーリアーが立ちはだかり、自慢の筋肉を使った拳による攻撃を仕掛けてくる。
バシッ!!
「ウォーリアーって言ってもこんなものか」
俺はあえてコボルトウォーリアーの拳を素手で受け止める。そして、その後間髪入れずにウォーリアーの首を飛ばす。
シュッ!
ウォーリアーを狩った俺に、マジシャンからの水の弾が飛んでくるが、軽く上体を逸らすことで躱す。
「水属性のマジシャンか、ッ!来たな!シーフ!」
俺がマジシャンの方に気を逸らした一瞬の間に、距離を詰めてきた存在に気づく。その正体は、黒い装束を見に纏ったコボルトだった。
「こりゃ、盗賊ってより忍者だな!」
不意を突かれたといっても、たかだかコボルトシーフの速さでは、俺を殺すまでにはいかない。俺は焦らずシーフを対処する。
「それぞれの力はまだまだだが、連携がやけに上手いな!まるでウルフ達の様だ!」
狩りがいのある相手にテンションが上がった俺は、周りの敵を一瞬で刈り取ると、マジシャンに向けて反転(跳)で距離を詰め、背後を取ると、マジシャンの首目掛けて絶殺剣を振り下ろす。
シュッ!
俺がまさにマジシャンの首を狩る瞬間、その瞬間を狙い澄ました様に、上からの刺客が俺を狙う。
ブシュッ!
俺はその攻撃を避けつつも、マジシャンの首を刎ね飛ばし、その刺客を掴む。
「気配が読みづらかったのはこいつか」
それは、真っ黒い体に、鋭い嘴をもつ魔物だった。
「こいつも見たことあるぞ。確かアサシンホークだったな。シーフといい、こいつといい、やけに連携がいいな。お陰で楽しかった」
その後、アサシンホークの首を落とすと、芽依の方に目を向ける。丁度芽依も終わった様だった。芽依はどうしても移動の速さが俺に分がある為、狩る時間が俺よりも遅くなることが多い。
「怪我はないか?」
「うん、ない。今回は楽しかった。シーフとかアサシンホークとかが不意を突いてくるのが、気を抜けなくていい。けど地力がまだまだ、そこが残念」
今回の戦闘は満足した様子の芽依と共に魔石を拾うと。
「やっぱり属性持ちの魔石は色が綺麗だな」
そう言いながら、俺はマジシャンの魔石を眺める。淡い水色である魔石は宝石の様だった。
「見て翔、アサシンホークとシーフの魔石も、淡い黒で綺麗」
そう言って芽依も俺に魔石を見せてくる。その魔石は淡い黒色をしており、光が透けるのて魔石全体が光る様な様子は本当に綺麗だ。
「本当だな。黒ってことは闇属性を持っているのかもな。ブラックウルフの様に気配を希薄にするのは大体闇属性って事だな」
そんなことを言いながら魔石を拾い終え、時間を見ると、14時前といった所だった。
「芽依、お腹空いたか?」
そう芽依に問うと、すぐ様頷きが帰ってきたので、休憩のできる場所を探し、遅めの昼飯を取ることにした。昼飯はサンドイッチだ。これも芽依のお手製となる。
「美味いな」
俺がサンドイッチの正直な感想を言うと、芽依が嬉しそうに微笑む。
「良かった」
「それにしても、コボルト達の連携は良かったな」
「うん、ウルフ達に似たものを感じた」
「そうだな。今後更に階層を降りていくと、どんどん魔物達の実力が上がり、かつ賢くなっていく。今のコボルト達の様に連携がうまくなったり、狡い手を使ってくる可能性もある。楽しみだな」
「うん、楽しみ」
以前までは楽しめていなかった戦闘を楽しんでいる自分に驚きつつも、昼食を食べ終わると、また探索を開始する。
「これが20層へと繋がる階段か、なんだか早かったか?」
昼食をとってから2時間もしない内に、18層、19層を探索し終えた事に驚く。
「うん、私の心眼が使う事でより精度が高くなってる気がする。前までは鑑定くらいしか使ってなかったけど、今は意図的に色々な使い方をして、慣れたのかも」
「そうか、芽依のユニークスキルが強くなるのは歓迎だな。心眼が強くなればなるほど、それは芽依自身を守る事に繋がるしな」
「うん、目指すは最強」
えっへんと顔は無表情に近いながらも胸を張る。雰囲気からドヤ顔な感じなんだろうと思いつつ、芽依の胸あたりからは顔を逸らし、話を続けながら階段を降りていく。
「16層~19層の魔物の感じからして、コボルト種の階層ボスが出てくるはずだ。確認されているコボルト種のボスは、コボルトマスターとコボルトキングがいる」
「うん、私も少しは知ってる、けど教えて」
「そうだな、コボルトマスターはウォリアーの上位種といった感じになる。ウォリアーよりも一回りも二回りも大きい体躯を持ち、より素早く力強くなる。
コボルトキングの能力は様々だが、やはり多いのは味方を鼓舞する力を持つものだろうな。他には剣を持つもの、魔法を使うものとまちまちだ。だからキングの場合、能力を決めつけずに冷静に対処することが必要だな」
「分かった。階層ボスがキングで、かつ味方を鼓舞する能力の時は、また真っ先に狙う?」
芽依の言葉に、少し考える時間を挟んでから答える。
「そうだな、その場合、今回は少し敵の数を減らしてからキングを狩る事にしよう。前回は相手の力が弱かったからごり押し出来たが、今後どうなっていくのかは分からない。だからまず数を減らし、確実にキングを狙いに行ける時を待つとする」
「分かった。私もそれはいいと思う」
俺の考えに芽依が賛同してくれる。
「よし、なら行くか!」
「うん!」
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