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60話 フリーパスダンジョン3

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十二層で変わった事といえば、ウルフが出るようになった事だ。このウルフも、感覚だと町田ダンジョン出会ったウルフよりも、3~4割程強い。

ウルフとゴブリンに敵対関係はないようで、ウルフはウルフ、ゴブリン種はゴブリン種のように別々で出るのではなく、一緒に協力して俺たちに襲いかかってくる。

「ダンジョンで出てくる魔物は、お互いに侵入者である俺達冒険者を狩る事を最優先にしているのかもな」

冒険者図書館でも、そのような記述を見た気がする。

「いいね、まとめて相手にしてあげる」

「芽依、どんどん戦闘狂になってないか?」

狩る気満々な芽依に対して、そうツッコミを入れると、芽依は少し考える素振りを見せてから話し始めた。

「そうかも、今は体を動かすのが楽しい。だけど、襲いかかってこないような魔物がいるなら、積極的に狩ろうとするほどの戦闘狂じゃない。来るならやる、それだけ」

「真剣な試合みたいなものか、といっても、俺も芽依の気持ちはわかる。敵を蹂躙する楽しさがいいとかじゃなくて、魔物との真剣勝負をする楽しさだよな」

俺の言葉に、芽依は首を何度も縦に振り、同意という意思を伝えてくる。

「これからレベルが上がって、ますますステータスが上がり、技術も上がると思う。普通の人から見ると強者の立ち位置だ。だが、そうなったとしても、慢心せず、初心の心を忘れないようにしような」

「うん、翔が傲慢になったら、殴ってでも止めてあげる」

芽依が自信満々な笑顔でそう言ってくれる。

「ありがとな、逆に芽依がそうなったら、俺が上には上がある事を教えてやるよ」

俺も自信満々の笑みでそう言うと、芽依はますます笑みを深めて、短く一言。

「望む所」


いくら3~4割ほど強くなったと言っても、ウルフはウルフなため、特に苦戦する事なく相手を狩っていく。

強くなった影響か、集団戦闘による多彩な攻撃にキレみたいなものを感じだが、ステータスの面で大きく上回る俺達が手こずることはなかった。

「おっ、またウルフの牙が出たな。ウルフの牙は持ち運び出来る大きさなところが良いよな。ゴブリンの棍棒とか、ドロップしても邪魔で持っていけないからな」

「うん、その分他の魔石を拾う方が簡単」

俺の言葉に、芽依も同意をしてくれる。

「一体一体の力はそんなに強くないが、ゴブリンやウルフの連携は、戦っていてそれなりに面白いな。これからの敵は、もっと色々な事をしてくると思う、だから気を引き締めていくぞ」

「うん、負けない」

芽依は自身の体の前に握り拳を作り、真剣な表情で頷く。

俺と芽依は、次の獲物を見つけるために、更に先へと進む。

「おい、あれを見ろよ。ホブゴブリンやアーチャーがウルフの上に乗ってるぞ?」

「本当だ、あれで速さを補っているんだね」

「そうだな、あれでゴブリン達に足りなかった機動力が、ウルフに足りなかった攻撃力が補われるってことか」

「でも、問題ない」

芽依の言葉に、俺も頷く。

「ああ、蹴散らしてやる。いくぞ!」

俺と芽依は、ウルフに乗って突っ込んでくるゴブリン種達を、自ら距離を詰める形で立ち向かう。

それに対してウルフ達は、驚いたものの、自分たちは機動力だと割り切っているのか、距離を詰める俺達に対して、ウルフ達も更に加速し距離を詰めてくる。

「おぉ、速いな」

互いに距離を詰め合った為、100mは離れていた距離が直ぐになくなる。そして、ウルフの上に乗っているホブゴブリンが俺に対して、持っている木の棍棒を振りかぶってくる。

ホブゴブリンの棍棒による攻撃を、左手の短剣で斬り伏せ、右の手の短剣でボブゴブリンの首を落とす。

「ッ!ガウッ!」

すれ違いざまの攻防によって、ホブゴブリンがやられた事に気付いたのか、移動に徹していたウルフが俺に対して爪による攻撃を仕掛けてくる。

速さも力も、どの面でもステータスが上回っている俺にとって、真っ直ぐ突っ込んでくるウルフの動きは、止まって見えるも同然のものだ。最小限の動きで、ウルフの攻撃を避け、続き様に絶殺剣でその首を落とす。

そのまま、俺に攻撃を仕掛けてくるウルフ・ホブゴブリンコンビを4組倒す。いつもよりも時間がかかってしまった。

「単体では、苦戦することなんてない相手だが、組み合わさると意外と厄介だなッ!」

俺に向かってきた魔法を、横に跳ぶことで避ける。

キンッ!

魔法を横に跳ぶことで回避した俺に、続け様に矢が飛んできたので、短剣で斬り落とす。

魔法と矢が飛んできた方を見てみると、ウルフに乗ったホブゴブリン4、アーチャー 1、メイジ 1が固まっており、先程の魔法と矢は、こいつらから放たれたものだろう。

俺は更に攻撃が来る前に、固まっているウルフ・ゴブリン達との距離を反転(跳)で詰める。反転(跳)によって、一気にウルフ・ゴブリンの背後に回る。

「ガウッ!」

「グギャ!」

「グギャ!」

突然後ろに現れた俺に気付いたアーチャー、メイジ、そいつらが乗っているウルフが驚いた声を上げる。その隙に、両手の短剣でウルフ、アーチャー、メイジを斬り伏せていく。一度起きた混乱が収まる事なく、驚いてる隙に斬り伏せ、そのまま全てを狩ることが出来た。

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