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57話 これからのビジョン2

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「それでだ、本題に入るが、今日はただ芽依を家に呼んだわけじゃない」

「そうなんだ」

未発見ダンジョンについて話そうと決意をして、勢いよく説明のスタートを切ろうとした所で、芽依から淡白な返事が返ってきたおかげで、出鼻がくじかれたような気持ちになる。

「そうなんだって、まぁいいか。とにかく昨日は、今後の予定について話し合おうって事で話してただろ?」

「うん」

芽依が真剣な顔で頷く。

「今日はその続きの話をしたいと思う。昨日カフェでは話せないと言ったのには理由があってな。実は、俺の家には未発見ダンジョンがある」 

「え、未発見ダンジョン!?そんなものが、個人の家にあるの?」

芽依の食いつき具合が凄い。それだけ、未発見ダンジョンというのは驚くべき事だと言うことだ。

「実はあるんだ。そしてそれが、俺たちの今後に大きく関わる」

「どういうこと?」

未発見ダンジョンの珍しさは分かるようだが、それが俺達の今後にどう関わってくるのかは分からないようだ。

「町田ダンジョンに潜った時、何に1番時間を使った?」

俺は、未発見ダンジョンの利点について教えるために、芽依に質問する。

「んー、フロアボスの待ち時間?」

「そうだ、今後俺達がレベルを上げていくには、多くの魔物を倒す事、それも強い敵を倒す事が大事になる」

芽依が俺の言葉に頷いてくれる。

「ただ、強い魔物を倒すには下層に行かなければいけない。そして下層に行くためには、フロアボスを倒さないといけない。そこで問題となるのは、その待ち時間だ。

毎回毎回何時間もフロアボスを待つために時間を使うのは、早く強くなろうとする俺達には勿体無いと思うんだ」

「私もそう思う。

「でも、未発見ダンジョンなら潜るのは俺たちしかいない」

「!翔の言いたい事がやっと分かった。翔の家のダンジョンなら、待ち時間もなく、ひたすら下層に向かうことができるって事でしょ?」

「よく分かったな。だから今後の予定に俺の家にある未発見ダンジョンに潜っていく事を入れたいと思う」

「うん、私も翔に賛成。でも昨日会った私にそんな大事なことを話してもよかったの?」

芽依は心配そうに俺の顔を見てくる。そんな芽依に対して、俺は軽く笑いかけながら声を掛ける。

「それを言うなら、お互いの生命線であるステータスを見せあっただろ?今更気にすんなよ。それにな、確かに会ったのは昨日かもしれないが、もう芽依のことは信頼してるんだ。だからいい」

「、、、そっか、信頼してくれてありがと」

「おう、ただ、俺にも生活があるし、芽依も実家暮らしとは言え、冒険者をやると家族に伝えてから高校を辞めたわけだ。だから家のダンジョンに潜る事と、町田ダンジョンに潜りお金を稼ぐ事も継続して行っていきたいと思ってる」

「そうだね、お金は大事」

そういう芽依の言葉には、確かな重みを感じた。

(芽依はお金に対して、結構気持ちが強いよな)

「今のところ、家のダンジョンと町田ダンジョン、それぞれに潜る割合を1:1にしようと思っているんだが、どう思う?」

「私はもっと翔の家のダンジョンに潜る割合が多くていいと思う。確かにお金は必要だけど、レベルやスキルレベルを増やして、私自身のレベルアップを目指す事が今は大切だと思うから。まだまだ若い今のうちに、成長できるならしたい」

芽依が真剣に語る内容は、俺の心に刺さった。

(そうだよな、お金稼ぎは後々沢山できる、今は自分たちのレベルアップに集中するべきか)

「本当なら、全部レベルアップに注いでもいいと思うけど、それだと怪しまれると思う。それに翔のダンジョンで得たものも売却しないと邪魔だよね?だから、私は翔のダンジョンと町田ダンジョンを7:3くらいがいいのかなって思う」

俺は芽依が真剣に考えてくれていることに嬉しくなる。

「そう言われるとそうだな、それが理想だと思える。とりあえず、最初に決めたら必ずそうしなきゃいけないなんてルールなんてないんだ。最初は、芽依の提案してくれた7:3の割合で試してみよう。それでもし不都合があるなら、状況に合わせて変えていくでもいいか?」

「うん、問題ない」

「そうか、あとはそうだな、休みだが1日休みは週に1度、午前や午後だけの日を週に1日取るとかにするか?」

「私は、週に1度休みをもらえるだけで十分だよ?むしろ休みもいらないくらい」

芽依は、休みがあることに驚いているだった。

「なら休みは週に1度にするか、休みなしにはしない。ずっとダンジョンに潜っていると視野が狭くなるからな。たまには違う事をして、リフレッシュすることで効率も上がるしな」

俺の言葉に、芽依はなるほどと手を叩く。

「それは気づかなかった。ならそれにする」

「じゃあそうしよう。休みを取るなら何曜日がいいとかはあるか?」

「ない、翔が決めて」

予想以上に即答で返してくる。

「そうだな、休みが土日だと出かけるにしても人が多いから平日がいいよな。水曜日でどうだ?」

「理由も納得、それでいい」

「よし、決まりだな」

「なら、さっそくダンジョンに潜る?」

芽依を見ると、そわそわと落ち着きがなさそうにしている。

「なんだ?そんなにダンジョンに潜りたいのか?」

俺の言葉に、芽依はすぐに頷く。

「うん、強くなるの楽しい。それに翔の家にあるダンジョンは、どんなダンジョンなのかも楽しみ」

「翔のダンジョンとか変な名前をつけるな」

芽依がダンジョンに変なに前をつけるため、注意をすると、芽依は頬を膨らませる。

「えー、じゃあなんで呼べばいいの?」

芽依から質問されて、俺はすぐに答えることができなかった。

「そういえば、呼び方は決めてなかったな。いつも家のダンジョンって読んでたからな」

俺は、ダンジョンの名前を考えるため、手に顎を乗せて考える。

(そうだな、家のダンジョンでもいいが、もっと違う名前でもいいな。あっこれならいいかもな)

「こんなのはどうだ?フリーパスダンジョン。スカスカな家のダンジョンにピッタリだろ?」

「んー、長いけどそれでいい。私はフリダンって呼ぶ」

確かに少し長いが、そんなすぐに訳すこともないだろうと思ったが、芽依らしいといえばらしいので、俺は何も言わずにおく。


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