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33話 冒険者登録3
しおりを挟む「おいおい、何俺達のこと置いて行こうとしてんの?」
こちらに向かってくる3人の若い男。年齢は俺と同じかそれよりも下だろう。髪は派手で、これからダンジョンに潜る為の服装とは思えないほど、軽装な格好をしていた。この男達の言葉から、集合時間に遅れた最後の受験者だろう。
「あ?なんだお前ら」
冒険者の男は、若い男達に向かって圧をかける。
「なんだじゃねーんだよ、おっさん」
「俺たちにそんな口聞いて良いのか?」
「お前らなんて所詮底辺にいる奴らだろ?」
冒険者の圧を受けても、若い男達は特に気にした様子もない。
(こいつら実力はあるのか?圧には屈してないみたいだが、それとも圧に気づかないほど、実力がないのか?)
正直、若い男達がなんでこんなに強気なのかが分からなかった。だから俺は、もしかしたらこいつらは高い実力を持っているのか?と一瞬思ったが、その考えを捨てた。若い男達を見ても、特に感じるものがなかったからだ。
「お前らはな、もう冒険者試験に落ちてんだよ。だから、お前達を待つ必要など俺達にはない」
冒険者の男が若い男達に対してそう言い切る。そして、俺たちに対して向き合い、謝罪の言葉を口にした。
「皆、止めてすまかったな。気を取り直して、試験をする為にダンジョンに行くぞ」
(へぇ、冒険者の中にも、こういう人はいるんだな。まぁ、ダメなやつはダメ、良い人は良いってことか)
そんな事を考えながら、歩き出した冒険者の男の後を追う。このまま試験に入ってほしいと思っていると、またしても行動を止めるような声が聞こえた。
「お、おい!俺達が試験に落ちたって!?お前如きが、何ほざいてやがる!俺たちはな、既にクランから誘いが来てるんだよ、そんな優秀な俺達を試験に落として良いのかよ?」
若い男の中のリーダーらしき奴がそう喚きだした。
(あーなるほど、だからこいつらは妙に自信があるのか。クランに入るって事は、それなりに良いステータスか、ユニークスキルを持っているってことか?この状況、冒険者の人はどう対処するんだろうか)
そんな事を思っていると、先頭にいた男は、素早く若い男達の元に移動した。
「さっきからごちゃごちゃとうるせーな?お前達は試験に落ちたって言っただろ?それ以上はないんだよ。分かったならさっさと帰りやがれ。クランに入るだがなんだか知らねーが、これ以上邪魔をするようなら容赦しないぞ?」
冒険者の男は若い男達のに、どすの利いた声で圧をかける。この圧には流石に気付いたのか、3人とも少し怯えた顔をした。しかしリーダーの男は、すぐに怒りの表情を浮かべた。
(うわー、本当に面倒くさくなってきたな)
「黙れ!俺はな、選ばれた男なんだよ!お前みたいな底辺冒険者に指図されるいわれはねーぞ!!」
「は?」
冒険者の男が発したより重い圧で、リーダーの男の表情は完全に怯えていたが、自分が底辺の男だと罵った奴に怯えてしまったという事が癪に触ったのか、リーダーの男は懐に手を入れた。そして取り出したのは、刃渡20センチ程のナイフだった。
俺の周りにいる、冒険者志願の人達の間に緊張した雰囲気が流れるが、冒険者達は特段普通と変わりない雰囲気だった。
(まー、たかがナイフにびびってちゃ、魔物なんて相手にできねーよな)
「ッ!くそが!舐めんじゃねーぞ!牙突!」
若い男はナイフ片手に、冒険者に向かってナイフを突き出す。しかし、普通に突き出されたナイフではなく、そのナイフは、風によって強化されているように見えた。
(あの牙突ってのはスキルか?効果は風魔法による突きの強化か何かだろうな)
「危ない!!」
風によって強化された突きが冒険者の男に向かう。その光景を見た、冒険者を志願する受験者の何人かが、悲鳴のような声を上げた。
(まぁでも、あの人なら平気だろう)
俺はステータスが上がったおかげか、ダンジョンに潜って、敵の力をよく観察していたからなのかは分からないが、なんとなくその人の強さが分かるようになっていた。あくまで直感的なものだが、その直感で言うと、試験監督の冒険者は皆、それなりの実力を持っており、その中でも1番強い冒険者が、あの程度の攻撃を避けれないわけがない。
そう思っていた俺は、特に慌てる事なく、ことの成り行きを見守っていた。
(はぁ、早く冒険者試験やらねーかな)
そんな事を考えているその間も事態は進み、リーダーの男が放った突きが、冒険者の男に届くかと言った所で、小さな呟きが聞こえた。
「鉄壁」
ガキン!
冒険者の体に届いた筈のナイフは、体を貫く事なく、甲高い音を鳴らしながら弾かれた。
「なっ!」
「お前、手ぇ出したよな?」
「ぶへぇ!!」
驚くリーダーの男は、驚くあまり口を開いて固まってしまった。そして、その無防備な顔を、冒険者の男は半分ほどの力で殴り飛ばした。半分といっても、リーダーの男にとっては十分以上の威力は出ていそうだった。
「ちっ、また面倒ごとになったな。こりゃ怒られるか?すまんが、俺はこの事態の経緯をギルドに説明してくっから、お前達は待っていてくれ」
冒険者の男は、俺たちに断りを入れると、冒険者ギルドに向かって歩いて行った。その後に残ったものは、殴り飛ばされたことで、顔が腫れ上がるリーダーの男と、その現実が受け止められないのか、口が開いて塞がらない2人の若い男だけだった。
(このくらいの力でもクランに入れるのか)
その間も俺は、自分の思考の中にいた。
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