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29話 上位種5
しおりを挟むコツコツと階段の降り、十層へと向かう。
「俺の予想だと、ゴブリン種の上位種だと思うんだよな。上の層ではスライム種よりもゴブリン種の方が多く出てきたし」
フロアボスに出てくる魔物は、ほとんどの場合がそのそう以前に多く出てくる魔物関連の魔物が出てくるらしい。もちろん、何事も例外はあるらしいが。
「となると、ゴブリンジェネラルか?ジェネラルを飛ばしてキングは出てこなさそうだよな。ジェネラルは将軍級ってことになるから、強い魔物だと倒し甲斐があるよな」
以前ではそういう思考にもならなかった、強い魔物と戦える楽しさを想像しながら、少し早足になりつつも十層へと向かうと、十層へと辿り着いた。
「あの先がフロアボスの出るフロアか?」
十層へ降り立った俺の目の前には、数十人は人が入れるスペースが空いており、その奥には10メートルはある扉が存在していた。
ダンジョンのフロアボスがいる層では、セーフティーゾーンと呼ばれる場所がある。おそらく、俺の見ている扉の前のスペースがセーフティーゾーンとなる。
このセーフティーゾーン、つまり安全圏は、なぜ安全と言えるのか?その理由は、フロアボスが扉を通れないという事と魔物は上下層に移動できないという2つの点からきているもので、階段と扉に挟まれる、目の前のスペースは魔物の侵入できない唯一の場所ということが分かったため、冒険者が休めるセーフティーゾーンと名付けられた。
「これがセーフティーゾーンか、まぁ俺には関係なさそうだな」
このセーフティーゾーンは、寝泊まりや休憩をする場所という認識がほとんどだが、実際には、フロアボスを倒す為の順番待ちをする場所という意味合いの方が、冒険者の中では強い。
フロアボスは、常に一体しか存在しない。つまり誰かがフロアボスに挑んでいる間、他の冒険者は待つしか方法がなくなる。宝箱の出現率が高くなるフロアボスとの戦いは、とても人気だ。ただでさえ多くの冒険者が潜るダンジョンで、人気の場所となるフロアボスの出る層は人がとても集まるのに、一度に挑戦できるのは1パーティーのみとなると、必然的に順番待ちとなる。
ほんな冒険者達が待つ為の場所として、セーフティーゾーンは多くの冒険者に利用されているらしい。
「このダンジョンは俺しかいないからな。フロアボスを倒すのに順番待ちをすることもない。多少の休憩をする為の場所として利用するかもしれないが、寝泊まりをするくらいならフロアボスを倒した方が早いからな、俺が利用する機会も少ないってわけだ」
そんな事を考えながら、俺はフロアボスのいる場所に繋がる扉に近づいていく。
「どんな魔物がいるのか、楽しみだ!」
その言葉と共に扉を開く。
バァン!
「おぉ!」
勢いよく扉を開くと、そこには1つの辺が30メートルはある正方形の形をした場所が広がっていた。そして、その場所に存在していたのは、多くのゴブリン達。ざっと30体はいる。
その多くのゴブリンの奥に存在し、1番圧のある存在を見つけた。そいつは緑色の肌を持ち、少し前に戦った変異種ゴブリンよりも大きく、体長5メートルはありそうなほどだった。その手には、その体格に見合う程の大剣が握られていた。
「おぉ、とうとう剣を持つ魔物が現れたか、たしか、キングは魔法を使う為、手には杖を握っているらしいからな。てことは、あの奥にいるゴブリンはジェネラルか」
俺が冷静に状況整理していると、ジェネラルが手を挙げた。
「ん?なんだ?」
ジェネラルが挙げた手を下ろすと、ゴブリンの軍団の中にいたアーチャー3体、メイジ3体が、俺に向かって矢や魔法を放ってくる。
「へぇ、きちんとしてるな」
アーチャーやメイジとは、何度も戦っている為、特に慌てる事なく反射(盾)を使う。俺に向かっていた矢や魔法は、放たれた場所へ戻っていく。ここまではいつもと変わらない。違っていたのは、戻って行った矢や魔法でアーチャーやメイジは息絶えるどころか、きちんと躱していた。
「!避けるのか、つまり上の層で相手していた奴らよりも手強いってことか。単純に下の層に行くと強くなるのか、それともジェネラルという上位の存在の指揮下にいるから、強くなっているのか?また考えることが増えたな」
そんな事を考えていると、俺がはじめの攻撃で死ななかったことが不服なのか、ジェネラルが大きな声で威嚇してきた。
「グギャアアア!!!」
威嚇による威圧も、変異種ゴブリンよりも強い。
「まぁ、ステータスの高くなった俺には効かないけどな」
威嚇による威圧で、俺は怯むことはなかったが、ジェネラルの前にいたホブゴブリンやゴブリン達が一斉に俺に向かって、襲いかかってくる。それと同時に、アーチャーやメイジも攻撃を合わせてくる。
「やっぱり統制が取れてるな、こういう状況はまず、頭を落とすのが基本だろうが、あえて正面から蹴散らすか!反転!」
俺は腰から抜いた古びたナイフに反転(付与)を使い、迫ってくるゴブリン達に突っ込んでいく。
シュッ!シュ!シュッ!
俺は一振りで、同時に数体のゴブリンやホブゴブリンを仕留めながら、俺に向かってくる矢や魔法を避けていく。
ドスンドスンドスン!
俺がゴブリン達を蹂躙していると分かったのか、とうとうジェネラルが俺に向かってきた。
「来い!」
俺は残っているゴブリン達を狩りながらも、その目は、ジェネラルを捉えていた。
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