上 下
29 / 73

29話 上位種5

しおりを挟む

コツコツと階段の降り、十層へと向かう。

「俺の予想だと、ゴブリン種の上位種だと思うんだよな。上の層ではスライム種よりもゴブリン種の方が多く出てきたし」

フロアボスに出てくる魔物は、ほとんどの場合がそのそう以前に多く出てくる魔物関連の魔物が出てくるらしい。もちろん、何事も例外はあるらしいが。

「となると、ゴブリンジェネラルか?ジェネラルを飛ばしてキングは出てこなさそうだよな。ジェネラルは将軍級ってことになるから、強い魔物だと倒し甲斐があるよな」

以前ではそういう思考にもならなかった、強い魔物と戦える楽しさを想像しながら、少し早足になりつつも十層へと向かうと、十層へと辿り着いた。

「あの先がフロアボスの出るフロアか?」

十層へ降り立った俺の目の前には、数十人は人が入れるスペースが空いており、その奥には10メートルはある扉が存在していた。

ダンジョンのフロアボスがいる層では、セーフティーゾーンと呼ばれる場所がある。おそらく、俺の見ている扉の前のスペースがセーフティーゾーンとなる。

このセーフティーゾーン、つまり安全圏は、なぜ安全と言えるのか?その理由は、フロアボスが扉を通れないという事と魔物は上下層に移動できないという2つの点からきているもので、階段と扉に挟まれる、目の前のスペースは魔物の侵入できない唯一の場所ということが分かったため、冒険者が休めるセーフティーゾーンと名付けられた。

「これがセーフティーゾーンか、まぁ俺には関係なさそうだな」

このセーフティーゾーンは、寝泊まりや休憩をする場所という認識がほとんどだが、実際には、フロアボスを倒す為の順番待ちをする場所という意味合いの方が、冒険者の中では強い。

フロアボスは、常に一体しか存在しない。つまり誰かがフロアボスに挑んでいる間、他の冒険者は待つしか方法がなくなる。宝箱の出現率が高くなるフロアボスとの戦いは、とても人気だ。ただでさえ多くの冒険者が潜るダンジョンで、人気の場所となるフロアボスの出る層は人がとても集まるのに、一度に挑戦できるのは1パーティーのみとなると、必然的に順番待ちとなる。

ほんな冒険者達が待つ為の場所として、セーフティーゾーンは多くの冒険者に利用されているらしい。

「このダンジョンは俺しかいないからな。フロアボスを倒すのに順番待ちをすることもない。多少の休憩をする為の場所として利用するかもしれないが、寝泊まりをするくらいならフロアボスを倒した方が早いからな、俺が利用する機会も少ないってわけだ」

そんな事を考えながら、俺はフロアボスのいる場所に繋がる扉に近づいていく。

「どんな魔物がいるのか、楽しみだ!」

その言葉と共に扉を開く。

バァン!

「おぉ!」

勢いよく扉を開くと、そこには1つの辺が30メートルはある正方形の形をした場所が広がっていた。そして、その場所に存在していたのは、多くのゴブリン達。ざっと30体はいる。

その多くのゴブリンの奥に存在し、1番圧のある存在を見つけた。そいつは緑色の肌を持ち、少し前に戦った変異種ゴブリンよりも大きく、体長5メートルはありそうなほどだった。その手には、その体格に見合う程の大剣が握られていた。

「おぉ、とうとう剣を持つ魔物が現れたか、たしか、キングは魔法を使う為、手には杖を握っているらしいからな。てことは、あの奥にいるゴブリンはジェネラルか」

俺が冷静に状況整理していると、ジェネラルが手を挙げた。

「ん?なんだ?」

ジェネラルが挙げた手を下ろすと、ゴブリンの軍団の中にいたアーチャー3体、メイジ3体が、俺に向かって矢や魔法を放ってくる。

「へぇ、きちんとしてるな」

アーチャーやメイジとは、何度も戦っている為、特に慌てる事なく反射(盾)を使う。俺に向かっていた矢や魔法は、放たれた場所へ戻っていく。ここまではいつもと変わらない。違っていたのは、戻って行った矢や魔法でアーチャーやメイジは息絶えるどころか、きちんと躱していた。

「!避けるのか、つまり上の層で相手していた奴らよりも手強いってことか。単純に下の層に行くと強くなるのか、それともジェネラルという上位の存在の指揮下にいるから、強くなっているのか?また考えることが増えたな」

そんな事を考えていると、俺がはじめの攻撃で死ななかったことが不服なのか、ジェネラルが大きな声で威嚇してきた。

「グギャアアア!!!」

威嚇による威圧も、変異種ゴブリンよりも強い。

「まぁ、ステータスの高くなった俺には効かないけどな」

威嚇による威圧で、俺は怯むことはなかったが、ジェネラルの前にいたホブゴブリンやゴブリン達が一斉に俺に向かって、襲いかかってくる。それと同時に、アーチャーやメイジも攻撃を合わせてくる。

「やっぱり統制が取れてるな、こういう状況はまず、頭を落とすのが基本だろうが、あえて正面から蹴散らすか!反転!」

俺は腰から抜いた古びたナイフに反転(付与)を使い、迫ってくるゴブリン達に突っ込んでいく。

シュッ!シュ!シュッ!

俺は一振りで、同時に数体のゴブリンやホブゴブリンを仕留めながら、俺に向かってくる矢や魔法を避けていく。

ドスンドスンドスン!

俺がゴブリン達を蹂躙していると分かったのか、とうとうジェネラルが俺に向かってきた。

「来い!」

俺は残っているゴブリン達を狩りながらも、その目は、ジェネラルを捉えていた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。

阿吽
ファンタジー
 クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった! ※カクヨムにて先行投稿中

落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!

酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。 スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ 個人差はあるが5〜8歳で開花する。 そのスキルによって今後の人生が決まる。 しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。 世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。 カイアスもスキルは開花しなかった。 しかし、それは気付いていないだけだった。 遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!! それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!

ダンジョン世界で俺は無双出来ない。いや、無双しない

鐘成
ファンタジー
世界中にランダムで出現するダンジョン 都心のど真ん中で発生したり空き家が変質してダンジョン化したりする。 今までにない鉱石や金属が存在していて、1番低いランクのダンジョンでさえ平均的なサラリーマンの給料以上 レベルを上げればより危険なダンジョンに挑める。 危険な高ランクダンジョンに挑めばそれ相応の見返りが約束されている。 そんな中両親がいない荒鐘真(あらかねしん)は自身初のレベルあげをする事を決意する。 妹の大学まで通えるお金、妹の夢の為に命懸けでダンジョンに挑むが……

クラス転移でハズレ職を押し付けられた『ガチャテイマー』、実は異世界最強 〜俺だけ同じ魔物を合成して超進化できる〜

蒼月浩二
ファンタジー
突然高校のクラス丸ごと異世界に召喚され、一人に一つ職業が与えられた。クラス会議の結果、旭川和也はハズレ職である『ガチャテイマー』を押し付けられてしまう。 当初は皆で協力して困難を乗り越えようとしていたクラスだったが、厳しい現実を目の当たりにすると、最弱の和也は裏切られ、捨てられてしまう。 しかし、実は最弱と思われていた『ガチャテイマー』は使役する魔物を《限界突破》することで際限なく強化することのできる最強職だった! 和也は、最強職を駆使して無限に強くなり、いずれ異世界最強に至る。 カクヨム・なろうで クラス転移でハズレ職を押し付けられた『ガチャテイマー』、《限界突破》で異世界最強 〜★1魔物しか召喚できない無能だと思われていたが、実は俺だけ同じ魔物を合成して超進化できる〜 というタイトルで連載しているものです

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

処理中です...