上 下
10 / 46

過去の大戦

しおりを挟む
 一息ついたカールは再び話し出す。

「さて、【ツリー】に集まった人外達は、さすがにこのまま放置していては、いずれ国に攻め込まれるのではないかと危機感を持ったんだ。
 攫われた人達を救出する際、【ロウキ】に攻め込んだ方が良いんじゃないかという意見も出たそうだよ。でも、争い事は基本的に好きじゃない人達が多くてね。

 勿論戦ったら自分達が勝つと思っているけど、戦うと自分達の方だって無傷で済むわけがない。勝った後も戦後の財政や食料問題に医療対策、【ツリー】には悪い事しかないからね。

 それに、【ロウキ】の国が人外を攫っているっていう証拠がなかったんだ。正当な理由なく戦う事に対して、侵略になるんじゃないかという意見も出たんだ。
 会議が紛糾して時間だけが過ぎる中、次郎さんが周囲を凄まじい殺気で睨みながら言ったそうだ。

「まず救出はすぐにでもするべき事ですよね。これは決定事項でよろしいでしょうか。」
 全員賛成。人外の代表が震えてたって伝わってるよ。

「では、盗賊たちの居場所の特定。失踪者の失踪した場所と人数を調べて、地図にまとめる作業等、各種族から人を出して取り掛かって下さい。
 エルフ族は【ツリー】の防御、各種族へ何が必要でどんな事をしてほしいのか等の要望書を代表達に渡してください。人数が増え、食料に住居等の問題も出てるでしょう。
 
 後で戦争に関して決めましょう。先程から揉めてるだけで何も決まらない、時間の無駄です。
じゃ動いて下さい。1時間以内で終わらせて、再度集合しましょう。」

 その後30分で地図が出来て、各種族の役割や協力体制も決まった。
地図には、盗賊の拠点と失踪者の村の近くにある怪しい集落を合わせた数が30個近くあって、
「いつの間にこんな事にって」皆唖然としたそうだよ。

 戦争をするかしないかの会議が始まった時、次郎さんが言ったそうだ。

「皆様は私よりずっと経験も豊富ですし素晴らしいご意見をお持ちでしょう。
皆様のご意見の後ですと言いにくいので、若輩の私の案を先に述べてもよろしいでしょうか。」ってね。
 何も決められない皆に怒ってて嫌味を言っている気もするよね。皆すぐ頷いたそうだよ。

「まず、【ロウキ】と【ラト】の近くに監視者とその護衛を置く。次【ツリー】の防衛と戦闘準備に盗賊と失踪者の受け入れ準備。そして一斉救出作戦を行い、盗賊と失踪者、あったら証拠と一緒に【ツリー】に戻る。
 最後【ロウキ】又は【ロウキ】と【ラト】が攻撃してくれば、そのまま反撃。
 してこなければ、救出した者や盗賊から事情聴取した証言と拠点にある証拠を集めて【ロウキ】に抗議、結果必要となれば戦争。

 皆様、お分かりになっておられないようですが、人外を攫い、人外への恐怖を自国民に植え付けている時点で、敵対行為を行っているんです。
 このまま人外の人数が減ったら、人間や獣人の数に勝てると思いますか? 魔法が使えても人数や戦略で負けることだってあると思います。
 魔法や力が強い等、自分達を上に見過ぎて、彼らの能力を過小評価しすぎでは? 危機感がなさすぎるように思います。油断なんてできる状況じゃないんですよ。
 実際、我々は異世界人と鬼族が訴えてくるまで何も気づけなかったんですから。」

 話を聞いた代表達は、結局、彼の案をもとに作戦を練って総力を挙げて救出作戦を行ったんだ。

 救出作戦を終えて騎士や参加者達が戻ってきたんが、助かった失踪者達は薬品や拷問などで体の一部が無くなっていたり、酷い傷を負っていたり、無理やり妊娠させられた人外やすでに生まれた【ムーン】がいる等、壮絶な様子だったそうだ。

 彼らの証言を基に【ロウキ】に抗議すると、勿論【ロウキ】は認めず、逆に【ラト】に「盗賊たちが人外を攫っていたのを【ロウキ】の所為にして【ツリー】が侵略しようとしている。」といったんだ。【ロウキ】は「次は【ラト】だ。一緒に戦わないと国が亡びる」と言って同盟を持掛け、【ラト】は【ロウキ】と一緒に宣戦布告したんだ。

 【ラト】は、【ロウキ】の話が事実かどうか調べもしなかった。戦争時に調べないってあり得ないから、これを機に【ツリー】の領土が欲しいとか何か思惑があったんだろうね。

 戦争の時、人間と獣人の中には誘拐事件の事を知って人外と一緒に戦う為に集まってくれた人達もいたんだ。そして皆で連合軍を作って戦ったんだよ。

 その結果、戦争は連合軍の圧勝で終わった。我々連合軍は負傷者は出たけれど戦争での死者は出ずにすんだんだ。対して【ロウキ】に【ラト】は負傷者は少なかったが大在の死者を出したんだ。両国もかなり破壊されたそうだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。 しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。 修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!? 乗客たちはどこへ行ったのか? 主人公は森の中で一人の精霊と出会う。 主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。

落ちこぼれが世界を脅かす魔女と呼ばれるようになった結果

ごりもやし
ファンタジー
魔法使いのスーパーエリートが集うアルテミュラ学園。 そこに入学することになった、結崎あいら。しかし、入学してから落ちこぼれの烙印を押された彼女は常に独りぼっち。 だかしかし、ひょんな事から自分にかけられてた呪いが解け、自分の力を解放することが出来た。 それ以降彼女は魔法で無双し始めるのだが····· えっ? 魔王にブチギレられた? えっ? 聖女を虐げた!? えつ!?人類の裏切り者!? 色んな悪評が飛び交い彼女は魔女と呼ばれるようになってしまった! ちょっと調子にのっただけだったのに·····こんなのってないよ! 後悔してももう遅い、これは彼女が誤解を解く物語である。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

処理中です...