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鏡の中の魂
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長閑な田園地帯を抜けて籠は小さな村へ着いた。辺りは日が落ちて真っ暗になっていたが、尼僧は迷うこともなく月明りを頼りに小さな山の上にあるお寺の中へ入っていった。
寺では尼僧の帰りが遅くなり心配していたのだろう、尼僧達が出迎えてくれた。
「お帰りなさい。蓮様、町の様子はどうでしたか。」
「ただいま、皆さん。詳しい事は後で説明しますけれど、この後5体のご遺体が運ばれてくるので葬儀の準備をお願いします。」
尼僧達は驚いた顔になる。
「まあ、5体も。分かりました。すぐに準備します。」
尼僧達は葬儀の準備をする為に急いで走っていった。蓮は鏡を持ったまま自室に向かう。
「さてと、準備が整うまでの間、あなたのお話を聞かせてくださいね。」
自室に戻ると蓮は、鏡を机の上に置いて真剣な眼差しで見つめながら問う。
「私の名前は蓮と言います。ここは京から少し離れた村の尼寺ですよ。どうしてこのような事になったのか教えてください。」
鏡が震える。
「レンサマ、ワタクシ、シンダノ?」
鏡から弱弱しい小さな声が聞こえてきた。
「ええ、あなたは亡くなりました。あなたもあなたのご家族も、この尼寺で供養して埋葬します。」
「アリガトウ、ゴザイマス。」
お札がはられた鏡から、泣き声のような呻き声のような音が聞こえてくる。鏡はカタカタと音を立てて震えていた。暫くすると鏡も落ち着いたのか、震えが止まり静かになる。
鏡は小さな声で語り始める。
「チチウエ ツミニトワレ スベテ ナクシタ
ワタクシ コンヤクハキ ミンナデ ドグヲノンデ ジガイシタ
ワタクシ ノンダノニ ナゼカ イキテイテ」
その時の様子を思い出しているのか、鏡が凄い勢いで震えだした。鏡から黒い靄のようなものが出てきている。
「アノオトコガ ワライナガラ ヤッテキタ チチウエヲ ワナニカケテ ツミヲキセタ コンヤクハキ」
レンは宥めるように鏡を優しく撫でて、お札をもう一枚張る。途端に静かになった鏡が語り続ける。
「ユルセナイ ソレデ ノロオウトシタ アトハ オボエテナイ」
話を聞いて辛そうに顔を歪めている蓮。
「そうでしたか。まさか、わざわざ見に来るだなんてなんて人間なんでしょう。あなたの気持ちは分かりますが、呪いは駄目ですよ。呪いをかけた本人が苦しむ事になるだけですから。」
「ハイ」
「ご遺体が到着したようですね。今夜はここまでにしましょう。明日、鏡の呪いと今のあなたの状況について説明しますね。」
「ハイ」
「今日はこの箱の中で休んでいて下さい。」
蓮は鏡を赤い布でくるむと、木の箱に入れて部屋を出て行った。
外では尼僧達がご遺体を清めて葬儀を執り行う。村人達は話を聞いて弔問に訪れてくれていた。風に乗って蓮の部屋にもお経の声と線香の香、お悔やみを言う人々の言葉が届く。
鏡の入っている箱からは、悲しそうな泣き声が響いていた。
寺では尼僧の帰りが遅くなり心配していたのだろう、尼僧達が出迎えてくれた。
「お帰りなさい。蓮様、町の様子はどうでしたか。」
「ただいま、皆さん。詳しい事は後で説明しますけれど、この後5体のご遺体が運ばれてくるので葬儀の準備をお願いします。」
尼僧達は驚いた顔になる。
「まあ、5体も。分かりました。すぐに準備します。」
尼僧達は葬儀の準備をする為に急いで走っていった。蓮は鏡を持ったまま自室に向かう。
「さてと、準備が整うまでの間、あなたのお話を聞かせてくださいね。」
自室に戻ると蓮は、鏡を机の上に置いて真剣な眼差しで見つめながら問う。
「私の名前は蓮と言います。ここは京から少し離れた村の尼寺ですよ。どうしてこのような事になったのか教えてください。」
鏡が震える。
「レンサマ、ワタクシ、シンダノ?」
鏡から弱弱しい小さな声が聞こえてきた。
「ええ、あなたは亡くなりました。あなたもあなたのご家族も、この尼寺で供養して埋葬します。」
「アリガトウ、ゴザイマス。」
お札がはられた鏡から、泣き声のような呻き声のような音が聞こえてくる。鏡はカタカタと音を立てて震えていた。暫くすると鏡も落ち着いたのか、震えが止まり静かになる。
鏡は小さな声で語り始める。
「チチウエ ツミニトワレ スベテ ナクシタ
ワタクシ コンヤクハキ ミンナデ ドグヲノンデ ジガイシタ
ワタクシ ノンダノニ ナゼカ イキテイテ」
その時の様子を思い出しているのか、鏡が凄い勢いで震えだした。鏡から黒い靄のようなものが出てきている。
「アノオトコガ ワライナガラ ヤッテキタ チチウエヲ ワナニカケテ ツミヲキセタ コンヤクハキ」
レンは宥めるように鏡を優しく撫でて、お札をもう一枚張る。途端に静かになった鏡が語り続ける。
「ユルセナイ ソレデ ノロオウトシタ アトハ オボエテナイ」
話を聞いて辛そうに顔を歪めている蓮。
「そうでしたか。まさか、わざわざ見に来るだなんてなんて人間なんでしょう。あなたの気持ちは分かりますが、呪いは駄目ですよ。呪いをかけた本人が苦しむ事になるだけですから。」
「ハイ」
「ご遺体が到着したようですね。今夜はここまでにしましょう。明日、鏡の呪いと今のあなたの状況について説明しますね。」
「ハイ」
「今日はこの箱の中で休んでいて下さい。」
蓮は鏡を赤い布でくるむと、木の箱に入れて部屋を出て行った。
外では尼僧達がご遺体を清めて葬儀を執り行う。村人達は話を聞いて弔問に訪れてくれていた。風に乗って蓮の部屋にもお経の声と線香の香、お悔やみを言う人々の言葉が届く。
鏡の入っている箱からは、悲しそうな泣き声が響いていた。
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