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未定
116.準備不足(涙)
しおりを挟む「春、準備終わったか?」
春は焦った様にゴソゴソと自分の鞄の中を漁り何かを探していた。
その焦り方と鞄をひっくり返さんばかりに漁っている様子から、春も既にもう自分が探している物が鞄の中には無い事に気付いているな。さっさと諦めろ。
「春」
「お姉ちゃん、ライト忘れた」
何で泣きそうなんだよ。
ああ、そう言えば、今日の朝、ダンジョンに入る時に必要な物を忘れたらダンジョン入れないからなとメールで書いて送った。
昨日は着替えの服を忘れていたからな。
他にもライトの電池の話やスクロールを不用意に使うなと言った事もついでに書いたので、多分その所為でライトの電池を替えた時に机にでも置いたままにしていたんだろう。
「はあ、時間が無い。今日は俺のライトを使え」
春を置いていく訳にはいかない。
マジックポーチからヘッドライトとLEDランタンを取り出して春に渡す。
「ありがとう」
「それと今度からは道具忘れたら、本当にダンジョンには入れないからな」
「うん」
「これでも命賭けてダンジョンに入っているんだから、万全の準備が出来ない様なら入る資格はない」
「うん」
よし、結構落ち込んでいる様だ。これで俺の言った事をきちんと聞いて肝に命じてくれるだろう。
自分の言葉のブーメランが脳天に突き刺さりそうな勢いで戻ってきたが、実際に春がダンジョンで痛い目に遭って死ぬよりはいいだろう。
「さて、慶達を迎えに行くか」
「うんっ」
ーーー
さて、どのルートで慶達を探しに行くべきか?
まあ、このダンジョンで今の処目印になる様な場所は隠し部屋くらいだ。
それに1階層で隠し部屋以外に佐久間道場組メンバーが足止めを食らうとは思えない。
まさか好奇心で階段を降りて2階層に行ったとか、まだ見つけた事は無いが落とし穴の様なトラップに嵌って下の階層に落とされたなんて間抜けな事は他の3人なら兎も角、慶は無いと思いたい。
でも、そうするとダンジョンから一度も出てこなかったか謎だな。
まあ、一つだけ嫌な予感はあるがな。
まずは3つの隠し部屋を回って、それから考えるか。
ーーー
「ここが一つ目の隠し部屋がある場所だ」
「と言ってもここって入り口から一番遠い場所にある隠し部屋でしょ?」
まあ、そうだ。勿論わざわざ入り口から1番遠いこの隠し部屋から回るルートを選んだのには理由がある。
「ここに来たのはすれ違いを出来るだけ防ぐ為だ。ダンジョンに入る時に、慶についでに隠し部屋の近くを見回って来てほしいと頼んでおいたからな。慶は多分入り口から1番近い隠し部屋から順に回って行く筈だから俺達をその逆を行こうという訳だ」
「成る程ね。でもここ隠し部屋って何処にあるの?」
春の言う様に、今俺達が居るのはダンジョンの通路だ。
しかも行き止まりとか分かりやすい場所では無く通路の途中。
「この壁の向こう側に隠し部屋がある筈だが、入り口は前にも言ったが他のダンジョンの壁と見分けがつかない。後は手当たり次第に壁を叩いたり蹴ったりして壊せそうな場所を探すしかない」
「ふ~ん、こんな感じに? エイッ!」
そんな掛け声を出しながら春が目の前の壁に蹴りを入れると、足は壁を突き抜け崩れていった。
「え?」
春は自分が何気無く蹴った壁がいきなり当たり引いた事にポカンッと惚ける。
「まあ、そんな感じで本当に普通の壁と見分けがつかないからな。それとさっきの蹴りだと足を痛めるぞ。今は偶々入り口だったから良かったが、普通のダンジョンの壁は不思議な力で守られていて見た目程柔らかくはない。こんな風に」
俺は実演の為、春が蹴り壊した直ぐ隣の壁をちょっと力を入れて蹴りを入れた。
ドゴッ!という凄い音が通路内に響いたがダンジョンの壁には罅一つ付いていなかった。
「す、凄い。お姉ちゃんってlvいくつ?」
鎌掛けのつもりか? いや、春に限ってそんな事はないか。
「lvと言われてもな。春も自分のlv知らないだろ?」
「そうだった」
「まあ、それでも1階層のモンスターなら数百体は倒していると思うぞ」
「数百。私の10倍以上も倒しているって事だよね? お姉ちゃんっていつからダンジョンに入っているの?」
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