怠惰の魔王

sasina

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18.器物破損されます?

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 今度こそ、彼女を置いて家に帰ってきた。

 イデアから来たのがモンスターじゃなくて良かったよ。モンスターならわざわざ出向いて始末しないといけない所だったけど、みんな俺と同じで唯の里帰りみたいだったしね。

 家に入ったら自室でゆっくりと寛ぐ事にするか。

「お帰り、鈴」

「ただいま」

 自室に入りベットに倒れ込む。

「疲れた、精神的に」

 まさか、地球から召喚された人が居たとはね。人類の国なんて気にしていなかったから、そんな情報が全く入って来なかったよ。

 カラミタ母さん達は知っていたのかな?

 それにしても、さっきのコスプレ少女(名前を聞いてないので仮名)は、魔力がランク9の英雄級ってだけじゃなく、あの長剣を抜いた立ち姿はかなりの実力を感じさせるものがあった。

 2年前に召喚されたみたいな事を言っていたが、その2年間でかなりの実戦経験を積んだんだなと思わせた。

 もしかしたら、地球で元々何かをやっていた人かもしれないな。武術とか? 曲がりなりにも人類にとって未開領域でもある俺の領域に入って会いに来れたぐらいの実力だしな。全然覚えてないけど。

 それにしても、俺とは状況がかなり違ったみたいだ。俺の場合の異世界転移で原因は分からないがコスプレ少女は人為的な召喚でイデアに来た人達だからな。

 俺と同じなんじゃないかな? と最初は期待したが全然そんな事は無かったよ。まあだからなんだって話なんだけどね。

 さて、疲れたし晩ご飯が出来るまで寝ようかな。

 おやすみ。

 何かあるまで、起こさないでくれよ琴音姉さん。



ーーー



 ベットで寝ていると窓を軽く叩く音が聞こえてきて目が覚めたが眠たいのでシカトする。

 が、当たり前の様に気付かれなかったと思っている窓の音の原因は、叩く力を強くしていき窓がもうそろそろ持たないかな?と感じたのでちゃんと対応してやるかと俺が起き上がったと同時に窓ガラスに罅が入った。

 窓の外を見ると、コスプレ少女が居た。ってランク9の魔力持ちが早々いる訳が無いから見なくても分かっていたけどね。

 と言うか、窓に罅を入れる前に気付けよ。このコスプレ少女もイデア暮らしに慣れ過ぎて力加減を忘れているのかね。

 窓の外のコスプレ少女は窓に罅を入れた事に慌てており、俺が既に起き上がっている事にも気付いていない。
 そして窓に罅を入れた事がバレる前に引き上げようとでも思ったのかコスプレ少女は窓に背を向けてベランダの手摺りに足を掛ける。

「おい」

 今にも、跳びたとうとしているコスプレ少女のドレスアーマーを掴んで止める。

 掴まれた事で、罅を入れたのがバレた事が分かったようで、観念して後ろを振り返る。

「あはは」

 コスプレ少女は誤魔化すように苦笑いしながら頬をかいている。

「いや、割るつもりは無かったんだよ?本当に。でも気付いてくれなかったから、ほんの少し強く叩いたら割れちゃいました。すみません」

 最初は言い訳をしようとしていたが、俺がジト目でガン見していたら頭を下げて謝った。

「入れ」

「はい、失礼します」

 コスプレ少女を部屋に入れてやり、俺は椅子に座ってコスプレ少女をベットの方に座らせる。

 と言うか、公園で出会った時から数時間は経っているのにずっとドレスアーマーのままなのか?

 家には帰らないのかな? 

 2年振りだから帰りづらいとか?

「住所は?」

 そう、俺はこのコスプレ少女に家の住所は教えてないのによく俺のいる場所が分かったな。

 まあ、代わりに交番の住所を教えてやったけどね。

「そうでした! 家の住所全然違うじゃないですか!交番に行ってしまった時には職務質問されそうになったので逃げてきたんですよ!」

 逃げちゃったのかよ。

「何故逃げる」

「剣を持っているのを忘れていたからです!」

 そんな胸を張って言われてもね。

 まあ、明らかに銃刀法違反に引っ掛かる長剣を持っていたら逃げたくもなるか。

 今の状況では、どのような事になるかも予想が付かないもんな。

 イデアからの侵略者扱いか。それとも拉致被害者として無罪放免か。どうなるかは分からないが親が捜索願いを出していたら、後者側になり長剣の没収ぐらいで片がつくんじゃないのか?

 あとで警察に行く事を進めるか。

 自首は方が罪が軽くなるからな。

「どうして分かった」

 どうやって、俺の住所を特定したんだ?

「それは簡単ですよ、今の段階ではランク3以上の魔力保有者の人は少ないので、あとは虱潰しに」

「魔力?」

「ああ、分かりませんよね、今度魔法の使い方を教えてあげます、窓のお詫びに」

 7歳児に魔法を使わせようとするな。俺だから良いけど。

「何と無く分かった。要するに厨二病」

「全然分かってません!」

「冗談、ファンタジーって事」

「そう、要するにそんな感じで私は魔法が使える訳です」

 どんな訳だ。ちゃんと召喚があった事を伝えないと、君は唯のコスプレをした日本人少女にしか見えないぞ?

 話が進まなくなるので、突っ込まないがな。

「それで、どうしてウチに来た?」

 そう、一番の問題はどうしてウチに来たかだ。さっき知り合ったばかりの俺に何の用があると言うんだい?

 僕は怠惰の魔王なんて知らないよ~?

「泊めてください」

 コスプレ少女はベッドの上で土下座をすると、そう言って頼み込んできた。
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