怠惰の魔王

sasina

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9.部下を呼びます

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 ルシア姉さんに、家族全員に地球には手を出さないでほしいと伝える様に頼んだ。

 まあ、傲慢たるルシア姉さんが兄弟とは言え、無条件で俺の言う事を聞いてくれるとは思えないし、実際に条件を付けられた。

 ルシア姉さんの出してきた条件は、一つだけ仕事を手伝う事だった。

 どの様な仕事かも、いつ手伝うのかもルシア姉さんは教えてくれなかっだが。
 これは、実質ルシア姉さんに貸しを一つ作ったのと同じだな。

 だが、それと同時に傲慢の魔王であるルシア姉さんだからこそ、絶対に約束は守るし他の家族達にも守らせてくれる事だろう。

 ルシア姉さんは俺との話を終えると、飛行機にはあまり興味が無いのか、さっさと飛行機から出て自分の領域に帰っていった。



ーーー



 さて、どうしたものか? 折角助けたんだから見捨てる事はしたくないな。

 地球に戻してやるべきかなって、そう言えばどうしてこの飛行機はイデアに落ちてきたんだ?

 飛行機の旅客機が飛ぶ高度は、高度1万メートルだってテレビで言っていた様な気がするが、ここから地球までの距離は100㎞もあり10倍、高度としても半分の5倍もの距離がある筈なんだけどな。

 イデアと地球がこんなにも近いのにも関わらず衝突しないのが原因かもしれない。普通は重力で引かれ合い衝突する筈が衝突していない、違う宇宙の惑星同士だから当たり前かもしれないがその所為でイデアと地球の間の重力が狂っていてイデアに飛行機が落ちてきたのかもな。

 まあ、今はそんな事は良いか。それよりもこの飛行機以外にも飛行機がイデアに落ちていたらマズイな。

 未開領域に落ちていたら、まず助からないだろう。せめて俺たち魔王の領域なら助ける事も出来るかもしれないけど。

 ルシア姉さんから、家族全員に繋がった世界が俺の生まれ故郷である事やこの金属の塊が人が乗っている乗り物だって事も伝わっている筈だから、見つけても無闇に攻撃したりしないで俺を呼んでくれるだろう。

 もし気が向いていたら、自ら助ける事もしれくれるかもしれない。特にアラン兄さんなら。

 しかし、領域内では無く人種の領地なら問題は別だ。イデアの人類は歴史だけは長いが、魔物の影響か文明レベルはそこまで高くない。

 魔物がいる世界だからか、王制の国が殆どを占めていて貴族社会でもあるので、いきなり現れた異なる世界の住人にまともな扱いをする者がどれくらい居るだろうか?

 事故とは言え、いきなり領土に入ってきた言葉も満足に通じない他世界の住人。例え理性的で人道的な人に保護されたとしても、この世界イデアで上手く生きていけるだろうか?

 この異なる世界同士を渡るには、高度5万メートルでも大丈夫な備えとそこまで行ける能力がないと行き来は不可能だ。

 地球の方では分からないが、イデアではランク7以上の実力の魔法使いなら、繋がっている世界の移動も出来ない事は無いと思う。

 まあ、今考えるのは、目の前にいる人達の事が最初か。

 この人達の世話をするなんて、とても出来ないし出来ても面倒くさいのでやらないけど。

 さっきも言った通り見捨てる事は、地球に居るだろう家族に顔向けが出来なくなる上に、異世界転移してきた俺が助けてもらった事を否定する事にもなるので助けようと思う。

 まずは

逆転送 リバース トランスファー

 この魔法は【転送】を使った事のある物や人を召喚する事が出来る魔法だ。

 まあ、便利ではあるんだが、生き物を引き寄せる場合は相手の同意がないといけないので、拒否されたら魔法は発動しないし、相手が直ぐに転移出来る状態じゃない場合は魔法が待機状態になり待たないといけない。

 それに魔法の待機状態は転移座標を固定する為に魔法の使用者はその場から動けない。もし動いたりしたら転移場所が狂い、転移して来る人が空中に現れたり地面に埋まったり、最悪は他の生き物とミックスされてキメラになってしまったりするかもしれない。
 これ攻撃に使えないかな?

 キメラになってしまったら、今の魔法文明ではどうしようもないな。諦めてもらおう。俺はキメラの解体なんて面倒な仕事はしたくないからね。

 【逆転送】を使って5分もすると、トリシアが送られてきた。

「ただいま、参りました」

転送 トランスファー

 来て早々のトリシアに【転送】を掛けて目の前にもう一度転移させる。

 こうしておかないと、次に【逆転送】をする為のマーキングが無くて発動する事が出来ないので、いつも【逆転送】を使った後は【転送】を忘れない内に使って魔力のマーキングを付けている。

「ご苦労さん、早速だがシア、伝言を頼まれてくれないか?」

「畏まりました。で、どの様な事をどなたに?」

「カラミタ母さんに少し里帰りしてくるからって伝えておいて、そう言う訳だから俺が戻るまで引き続き領域を頼むぞ」

「畏まりました。では行って参ります」

 トリシアは飛行機や里帰りの話に全くツッコミを入れずに俺に向かって一礼した後走り去っていった。






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