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番外編

七夕記念

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7月7日

それは、織姫と彦星が一年に一度だけ会うことが許された日。

現代では、短冊にお願い事を書き、笹の葉に括り付けると、願いが叶うという。



それはある日のことだった。

「おかあさま!わたくしもたんざくかいてみたいわ!」

シエンの部屋に入ってくるなり、そう言い放ったうちの娘アルシェ=クラウン
確か今は、歴史の勉強の時間のはずだと思うんだけど…

「どうしたの、アルシェ?…あぁ、本読んでたのね。偉いわ」
「ふふふっ!おかあさま!みてください!」

アルシェが目をキラキラさせて見せてくるのは1冊の絵本だった。

「ん?『おりひめさまとひこぼしさま』?あぁ、そういえば今日は七夕ね」
「そうなの!わたしもたんざくかいてみたいわ!」
「…アルシェ、お勉強は?」
「きょうのぶんはおわり、ってせんせいがいってたの。」
「そう…」

うちの娘は大変優秀なようだ。誰に似たのやら。

「じゃあ、短冊書いてみましょうか」
「やったぁ!!」
「紙とペンと笹を準備してもらいましょう?」

メイドに持ってくるように言いつけ、息子シルニス=クラウンも呼び、テーブルを囲んで座る。

「アルシェとシルは何をお願いするの?」
「ないしょなの!」
「しるも!」

興奮しているせいか、口調も砕け、可愛らしい笑顔を向けてくる。

アルシェもシルニスも嬉しそうにペンを握り、文字を書いている。

「おかあさま!できました!」
「たぁ!」
「あら、はやいわね」
「おかあさまは、なにをおねがいしたの?」
「たの?」
「ふふっ、『家族みんなが笑顔で暮らせますように』よ?」
「もっとかきたい!」
「しるも!」
「いいわよ、はい」

2人に新しい紙を渡し、シエン自身ももう一枚書くために準備する。







「あとは、紐を通してこの笹にくくったら、おしまいよ?」

説明しながら、自分が書いた二枚の短冊を飾る。

「ままぁ~!」
「どうしたの?シル…紐通せないのね。ほら貸して?」

シルニスのにも紐を通し笹に飾る。

ついでに、折り紙で片手間で作ったものも手際よく飾って行く。

「お母様!できましたわ!」

アルシェは、自分で出来たようで満足そうに笑っている。

辺りはもうすっかり暗くなっている。

「王太子妃様、夕食の準備が整いました。」
「夕食の時間よ?行きましょう?」
「はい、おかあさま」
「あい!」




「おとうさま!きょうはね、たんざくをつくったのよ!」
「短冊?…あぁ7月7日だったな」
「しるとね、おかあさまとね、つくったの!」
「へぇ…アルシェは何をお願いしたんだい?」
「ふふっ…『おとうさまとおかあさまとしるとあそべますように』ってかいたの!」
「「(うちの子が可愛いすぎる!!)」」
「…他には?」
「『いもおとがほしいです』のよ!」
「ぶふっぉ…」
「……」

シエンが飲みかけていた食後のワインを若干吹いたのを横目に捉える、アルフレッド。

「そっか、お願い事叶うといいな。…シルは、って寝てる」
「あ、あら、ほんとね。寝かせてくるわ!」

妙に慌てたシエンがシルニスを抱き上げようとするが…アルフレッドに遮られてしまった。

「メイドに任せればいい…ほら、アルシェも寝る時間だ。部屋に行きなさい」
「はぁーい」

アルシェも自室へと帰って行く。

部屋に残ったのは、アルフレッドとシエンだけになった。

「…シエン」
「な、なぁに?アル」
「アルシェはな?妹が欲しいって言ってるよ?」
「…」
「今日もがんばろうか、うちの愛娘アルシェの為に…ね?」

抱き上げられ、寝室に運ばれるシエン。

「ま、まって!?」
「ん?待たない。大人しく…俺に喰わせろ」
「~~っ!!」





笹には、7つの短冊がつけられていた。

シエンが書いた二つ
「家族が笑顔で暮らせますように」
「幸せに生きられますように」

アルシェが書いた二つ
「おとうさまとおかあさまとしるとあそべますように」
「いもうとがほしいです」

シルニスが書いた二つ(読めない)
「ぱぱ、まま、おねえちゃん、しる」
「だいすき」

アルフレッドが書いた一つ(実は書いてた)
「長生きし、シエンとアルシェとシルニスとこれから生まれてくるだろう子、家族がみんな笑って暮らせますように」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レイです。

七夕編ですね!
アルシェの願い事の一つはすでに叶えられてたりします。はい、「お気に入り登録200」ですね。
皆さんは何を願いましたか??


『皆様の願い事が叶いますように』


引き続きよろしくお願いします。


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