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03
温かい場所
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無事に打ち上げを終えた翌朝。
みんなと一緒に宿を出る。
そして、ホットドッグの屋台でゆっくりと朝食を取ったあと、のんびりおしゃべりを楽しみながら馬房へと向かった。
各自が荷物を積み込み王都の門をくぐる。
やがて、街道の分岐点まで来ると、そこでみんなとしばし別れの挨拶を交わした。
「次に会うのはチト村で、だね」
「ええ。そうなりそうね」
「うふふ。どんな村なのか楽しみだわ」
「あはは。普通の田舎だよ」
「ええ。家の準備が出来てたら連絡をちょうだい。すぐに向かうわ」
「もちろん。帰ったらすぐに手紙を出すわね」
と会話を交わしてチト村での再会を約束する。
それぞれがそれぞれの道を行き、私もいつものようにチト村へと続く裏街道へと入って行った。
何事も無く順調に進む事4日。
いつものようにチト村の手前で野営の準備に取り掛かる。
(ここでの野営にもずいぶん慣れてきたわね)
と感慨にふけりながら、荷物の中から適当に取り出した食材で夕食を作り始めた。
肉と野菜を切り、米と一緒に炒める。
今日はトマトピラフにすることにした。
(ユナ、料理が上手になってたな)
と思いながら、ユナの得意料理を作っていく。
やがて、トマトの甘い香りと米が炊ける良い匂いが漂ってきて、私の食欲を刺激してきた。
(もうちょっと蒸らしてから…)
と自分に言い聞かせ、その間に粉スープをお湯で溶く。
うずうずする気持ちを落ち着けるように、まずはひと口スープを口にした。
「ふぅ…」
と息を吐いて空を見上げる。
(結局聖魔法ってなんなんだろう…)
と、今回の冒険で得たあの検証結果と謎だらけの聖魔法について少し考えを巡らせてみた。
斬るわけでも、焼くわけでもない。
触れることなく魔物を弱体化させてしまう魔法。
当たり前だが、そんなもの聞いたことがない。
(きっかけはあのオーク戦だったわね…)
と、あの時のオーク戦を思い出す。
それと同時に私があの「烈火」と一緒に初めて見たオークの印象も思い出した。
(今の私たちで、弱体化していないオークはいけるかしら?いえ、少し難しいかも…。でも、あの新しい武器をみんなが使いこなせるようになれば…)
と想像を巡らせる。
今の自分たちの実力は「烈火」には及ばない。
しかし、ずいぶんと成長することが出来た。
そう思って少し胸を張るような気持ちになりつつも、
(それでもまだまだなのよね…)
と思って少ししょんぼりとしたような気持ちになる。
すると、そんな私の鼻を香ばしい匂いがくすぐった。
「おっと…」
と慌てて鍋の蓋を取る。
(ちょっと焦げちゃったかな?)
と心配してみてみたが、ピラフにはほんの少し焦げ目がついて、むしろ美味しそうに出来上がっていた。
(よかった)
と思いながら、そのままスプーンを入れて口に運ぶ。
(あふっ…)
と心の中でつぶやき、口をはふはふさせながら味わった。
優しい甘さと適度な香ばしさでなかなかのピラフに舌鼓を打つ。
そして、ふいに実家で食べた父さんの味を思い出した。
(みんなと食べたお店の味も、久しぶりに家族で食べた朝ごはんのシチューも美味しかったな…。それにあのちょっと変わったまかないの親子丼。あれはなかなかの味だったわね)
と、初めて食べたお店のまかないご飯の味を思い出す。
すると、今度はリリエラ様と一緒に食べたあの高級な親子丼のようなもの味を思い出した。
(あの親子丼みたいな料理も美味しかったわよね)
と、私と同じものを食べられて嬉しそうに微笑んでいたリリエラ様の笑顔を思い出す。
しかし同時に、
(リリエラ様、元気になったかしら…)
と、私は友達の今を思って少ししんみりとした気持ちになった。
私はそんな不安を振り払うかのように、小さく頭を横に振り、
(ううん。きっと大丈夫よね。だってエリオット殿下が付いてるんだから)
とあの妹思いのエリオット殿下のことを思い出す。
そして、つい、
「ふふっ」
と思わず笑ってしまった。
あのいきなり招待された午餐の席でのみんなの顔。
(まさかみんなと一緒にあんな席に呼ばれるなんてね…)
と気さくな王族の気まぐれというかちょっとずれた行動を思い出して、ひとり微笑む。
(みんなにはちょっと申し訳なかったかな。変なことに巻き込んじゃったし。ふふ。でも、一緒に食事をしたのがただの貴族様じゃなくて王子様だって知ったらみんなどんな顔をするかしら?)
と、ちょっとしたいたずら心を覗かせつつも、
(いやいや。それを言うのはさすがにまずいわよね)
と、思い直して、スープをすすった。
「ふぅ…」
と一つ息を吐く。
(帰ったらまたジミーと稽古ね)
と、あの騎士団長のザインさんとの出会いから、毎朝ジミーと稽古をするようになった日常を思い出して気を引き締めなおした。
(きっと、あの気を練って…っていうやり方をきちんと身につければ次の道が見えると思うんだけどなぁ…)
とぼんやり考える。
私はあのやり方をみんなにも教えたが、みんなもまだ何となくしか使えていないようだった。
(きっとあれはみんなにも役立つと思うんだけど…)
と考え、
(あ、でも、もうすぐみんなチト村に来ることになるんだから、みんな一緒に稽古できるわね。うん。そしたらきっともっと上達するわ)
と、これから始まるであろう新しい生活のことを思って期待に胸を膨らませる。
(みんなチト村のこと気に入ってくれるかしら?…ユリカちゃんとはきっとすぐに仲良しになれるわよね。だってあんなに可愛らしい子なんですもの、みんなもきっと可愛がってくれるわ)
と思って微笑み、また、トマトピラフを口に運んだ。
ほんのりと甘い味が私のお腹と心を満たしていく。
そして、
(ああ。最近はけっこう美味しい物ばっかり食べてるわね)
とここ最近で食べた美味しい物のことを思い出した。
(蕎麦も美味しかったし、焼き肉も良かったわね。ついつい食べ過ぎちゃったけど。ああ、あとみんなでラーメン屋にも行ったし、あのピザ屋は美味しかったな。うん。あそこの店はまたみんなで行こう。あと、ラクレット。結局、アイカは2回おかわりしてたわね。…またエリシアでの依頼があればいいけど。あ、そうそう。次回はあのチーズフォンデュっていうのに挑戦してみなくっちゃ。食べ終わった後に品書きを見て気になったのよね。たしか、溶けたチーズにいろんな具材を付けて食べるんだったかしら。…考えただけでも美味しそうだわ)
とここ最近で食べた物を振り返る。
すると、なぜか私のお腹が、
「きゅるる」
と小さな音を立てた。
(もう…。食事中なのにお腹が空くってなによ)
と自分で自分の食欲に苦笑いを浮かべ、またトマトピラフを口に運ぶ。
そしてふと、あの象の魔物と戦ったあとみんなで食べたカレーの味を思い出し、
「仲間かぁ…」
とつぶやいた。
共に戦う仲間。
しかし、みんなとの関係はそれだけじゃないように思う。
成長を喜び合える友達でもあり、一緒にご飯を食べて笑い合う家族のような存在。
私はそんなかけがえのない仲間と巡り会う事ができた。
それがどんなに幸せなことだろうかと考える。
きっと、これまで通りひとりで行動していたら、今進んでいる私の道に巡り合うことは出来なかっただろう。
私はそのことを思い、自分の幸運に、そしてみんなの存在に感謝した。
トマトピラフを食べ終わり、お茶を飲む。
「ふぅ…」
と満足げに息を吐き、チト村で待っていてくれるユリカちゃんとアンナさんのことを思った。
(お土産のチーズ喜んでくれるかな?)
と思い、肉や野菜にあの溶けたチーズがとろりとかかる様子を見て、はしゃぐユリカちゃんを想像する。
(ふふっ。きっと喜んでもらえるわね)
と想像して微笑みながら、またひと口温かいお茶を飲んだ。
(ふふっ。これから楽しみね)
と心の中でつぶやく。
私たちはまだまだこれから。
それは、これから先の道がまだまだ続くことを意味している。
きっと、躓くこともあるだろう。
でも、大丈夫。
私には頼れる仲間と温かい家族がいるんだから。
私は心の中でそう考えて、晩春の星空を見上げた。
相変わらず南の空にはあの動かない星が一番明るく輝いている。
私はその星を見て、
(いよいよ明日はあの家に帰れるのね)
と思った。
いつでも変わらずにいてくれるもの。
迷ったときに私に道を指し示してくれるもの。
あの家は私にとってそういう大切な存在になっている。
私はそう思ってまた静かにお茶を口に運んだ。
夜は静かに更けていく。
私はそんな静かな夜の中でほっと息を吐き、今回の冒険も無事に終わったのだという実感を噛みしめた。
みんなと一緒に宿を出る。
そして、ホットドッグの屋台でゆっくりと朝食を取ったあと、のんびりおしゃべりを楽しみながら馬房へと向かった。
各自が荷物を積み込み王都の門をくぐる。
やがて、街道の分岐点まで来ると、そこでみんなとしばし別れの挨拶を交わした。
「次に会うのはチト村で、だね」
「ええ。そうなりそうね」
「うふふ。どんな村なのか楽しみだわ」
「あはは。普通の田舎だよ」
「ええ。家の準備が出来てたら連絡をちょうだい。すぐに向かうわ」
「もちろん。帰ったらすぐに手紙を出すわね」
と会話を交わしてチト村での再会を約束する。
それぞれがそれぞれの道を行き、私もいつものようにチト村へと続く裏街道へと入って行った。
何事も無く順調に進む事4日。
いつものようにチト村の手前で野営の準備に取り掛かる。
(ここでの野営にもずいぶん慣れてきたわね)
と感慨にふけりながら、荷物の中から適当に取り出した食材で夕食を作り始めた。
肉と野菜を切り、米と一緒に炒める。
今日はトマトピラフにすることにした。
(ユナ、料理が上手になってたな)
と思いながら、ユナの得意料理を作っていく。
やがて、トマトの甘い香りと米が炊ける良い匂いが漂ってきて、私の食欲を刺激してきた。
(もうちょっと蒸らしてから…)
と自分に言い聞かせ、その間に粉スープをお湯で溶く。
うずうずする気持ちを落ち着けるように、まずはひと口スープを口にした。
「ふぅ…」
と息を吐いて空を見上げる。
(結局聖魔法ってなんなんだろう…)
と、今回の冒険で得たあの検証結果と謎だらけの聖魔法について少し考えを巡らせてみた。
斬るわけでも、焼くわけでもない。
触れることなく魔物を弱体化させてしまう魔法。
当たり前だが、そんなもの聞いたことがない。
(きっかけはあのオーク戦だったわね…)
と、あの時のオーク戦を思い出す。
それと同時に私があの「烈火」と一緒に初めて見たオークの印象も思い出した。
(今の私たちで、弱体化していないオークはいけるかしら?いえ、少し難しいかも…。でも、あの新しい武器をみんなが使いこなせるようになれば…)
と想像を巡らせる。
今の自分たちの実力は「烈火」には及ばない。
しかし、ずいぶんと成長することが出来た。
そう思って少し胸を張るような気持ちになりつつも、
(それでもまだまだなのよね…)
と思って少ししょんぼりとしたような気持ちになる。
すると、そんな私の鼻を香ばしい匂いがくすぐった。
「おっと…」
と慌てて鍋の蓋を取る。
(ちょっと焦げちゃったかな?)
と心配してみてみたが、ピラフにはほんの少し焦げ目がついて、むしろ美味しそうに出来上がっていた。
(よかった)
と思いながら、そのままスプーンを入れて口に運ぶ。
(あふっ…)
と心の中でつぶやき、口をはふはふさせながら味わった。
優しい甘さと適度な香ばしさでなかなかのピラフに舌鼓を打つ。
そして、ふいに実家で食べた父さんの味を思い出した。
(みんなと食べたお店の味も、久しぶりに家族で食べた朝ごはんのシチューも美味しかったな…。それにあのちょっと変わったまかないの親子丼。あれはなかなかの味だったわね)
と、初めて食べたお店のまかないご飯の味を思い出す。
すると、今度はリリエラ様と一緒に食べたあの高級な親子丼のようなもの味を思い出した。
(あの親子丼みたいな料理も美味しかったわよね)
と、私と同じものを食べられて嬉しそうに微笑んでいたリリエラ様の笑顔を思い出す。
しかし同時に、
(リリエラ様、元気になったかしら…)
と、私は友達の今を思って少ししんみりとした気持ちになった。
私はそんな不安を振り払うかのように、小さく頭を横に振り、
(ううん。きっと大丈夫よね。だってエリオット殿下が付いてるんだから)
とあの妹思いのエリオット殿下のことを思い出す。
そして、つい、
「ふふっ」
と思わず笑ってしまった。
あのいきなり招待された午餐の席でのみんなの顔。
(まさかみんなと一緒にあんな席に呼ばれるなんてね…)
と気さくな王族の気まぐれというかちょっとずれた行動を思い出して、ひとり微笑む。
(みんなにはちょっと申し訳なかったかな。変なことに巻き込んじゃったし。ふふ。でも、一緒に食事をしたのがただの貴族様じゃなくて王子様だって知ったらみんなどんな顔をするかしら?)
と、ちょっとしたいたずら心を覗かせつつも、
(いやいや。それを言うのはさすがにまずいわよね)
と、思い直して、スープをすすった。
「ふぅ…」
と一つ息を吐く。
(帰ったらまたジミーと稽古ね)
と、あの騎士団長のザインさんとの出会いから、毎朝ジミーと稽古をするようになった日常を思い出して気を引き締めなおした。
(きっと、あの気を練って…っていうやり方をきちんと身につければ次の道が見えると思うんだけどなぁ…)
とぼんやり考える。
私はあのやり方をみんなにも教えたが、みんなもまだ何となくしか使えていないようだった。
(きっとあれはみんなにも役立つと思うんだけど…)
と考え、
(あ、でも、もうすぐみんなチト村に来ることになるんだから、みんな一緒に稽古できるわね。うん。そしたらきっともっと上達するわ)
と、これから始まるであろう新しい生活のことを思って期待に胸を膨らませる。
(みんなチト村のこと気に入ってくれるかしら?…ユリカちゃんとはきっとすぐに仲良しになれるわよね。だってあんなに可愛らしい子なんですもの、みんなもきっと可愛がってくれるわ)
と思って微笑み、また、トマトピラフを口に運んだ。
ほんのりと甘い味が私のお腹と心を満たしていく。
そして、
(ああ。最近はけっこう美味しい物ばっかり食べてるわね)
とここ最近で食べた美味しい物のことを思い出した。
(蕎麦も美味しかったし、焼き肉も良かったわね。ついつい食べ過ぎちゃったけど。ああ、あとみんなでラーメン屋にも行ったし、あのピザ屋は美味しかったな。うん。あそこの店はまたみんなで行こう。あと、ラクレット。結局、アイカは2回おかわりしてたわね。…またエリシアでの依頼があればいいけど。あ、そうそう。次回はあのチーズフォンデュっていうのに挑戦してみなくっちゃ。食べ終わった後に品書きを見て気になったのよね。たしか、溶けたチーズにいろんな具材を付けて食べるんだったかしら。…考えただけでも美味しそうだわ)
とここ最近で食べた物を振り返る。
すると、なぜか私のお腹が、
「きゅるる」
と小さな音を立てた。
(もう…。食事中なのにお腹が空くってなによ)
と自分で自分の食欲に苦笑いを浮かべ、またトマトピラフを口に運ぶ。
そしてふと、あの象の魔物と戦ったあとみんなで食べたカレーの味を思い出し、
「仲間かぁ…」
とつぶやいた。
共に戦う仲間。
しかし、みんなとの関係はそれだけじゃないように思う。
成長を喜び合える友達でもあり、一緒にご飯を食べて笑い合う家族のような存在。
私はそんなかけがえのない仲間と巡り会う事ができた。
それがどんなに幸せなことだろうかと考える。
きっと、これまで通りひとりで行動していたら、今進んでいる私の道に巡り合うことは出来なかっただろう。
私はそのことを思い、自分の幸運に、そしてみんなの存在に感謝した。
トマトピラフを食べ終わり、お茶を飲む。
「ふぅ…」
と満足げに息を吐き、チト村で待っていてくれるユリカちゃんとアンナさんのことを思った。
(お土産のチーズ喜んでくれるかな?)
と思い、肉や野菜にあの溶けたチーズがとろりとかかる様子を見て、はしゃぐユリカちゃんを想像する。
(ふふっ。きっと喜んでもらえるわね)
と想像して微笑みながら、またひと口温かいお茶を飲んだ。
(ふふっ。これから楽しみね)
と心の中でつぶやく。
私たちはまだまだこれから。
それは、これから先の道がまだまだ続くことを意味している。
きっと、躓くこともあるだろう。
でも、大丈夫。
私には頼れる仲間と温かい家族がいるんだから。
私は心の中でそう考えて、晩春の星空を見上げた。
相変わらず南の空にはあの動かない星が一番明るく輝いている。
私はその星を見て、
(いよいよ明日はあの家に帰れるのね)
と思った。
いつでも変わらずにいてくれるもの。
迷ったときに私に道を指し示してくれるもの。
あの家は私にとってそういう大切な存在になっている。
私はそう思ってまた静かにお茶を口に運んだ。
夜は静かに更けていく。
私はそんな静かな夜の中でほっと息を吐き、今回の冒険も無事に終わったのだという実感を噛みしめた。
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