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エリシア共和国へ02
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順調に旅路を重ね、5日目の夕方。
エリシア共和国との国境の宿場町ギンプの町に到着する。
私はそこで宿をとり、念のためにギルドへ行って依頼が張り出してある掲示板に目をやった。
宿場町のことだけあって、護衛の依頼が多いようだが、魔物討伐の依頼もちらほらと見受けられる。
しかし、今の所順調に受けられているようだ。
特に異常事態を示すようなものは無い。
私はそのことにほっとして、ギルドを後にした。
安らいだ気持ちで銭湯に向かう。
着くとさっそく体を洗いゆっくりと湯船に浸かっていつものように、
「ふいー…」
と声を漏らした。
(さて、どんな冒険になるのかしら)
というこれからへの期待と同時に、
(リリエラ様のためにも頑張らなくっちゃ)
という緊張感も湧いてくる。
私はお湯をパシャンとやると、十分に体が温まったのを見計らって湯船から上がった。
翌朝。
さっそくギンプの町の門を出て街道を行く。
首都メイエンまでは2日の旅。
大きな街道沿いを行くことになるので、ここからは野営の心配をしなくてもいいだろう。
私はエルバルド王国とは違ってどこか牧歌的な雰囲気のある濃い緑の中を通る街道を順調に進んでいった。
予定通り2日後。
夕方前。
首都メイエンに到着する。
林業の盛んな地域だけあって、木造の可愛らしい建物が並ぶ街並みを通り私はさっそくギルドへと向かった。
受付で聖女のバッチを見せながら、
「教会の依頼で来た聖女ジュリエッタよ。仲間の冒険者とこの町で落ち合うことになってるんだけど、来てるかしら?」
と聞くと、まだ着いていないという。
そこで私はいつものように適当な安宿を紹介してもらうと、そこに宿泊しているから到着したら教えてやって欲しいとお願いして、さっそく宿へと向かった。
宿で風呂を使いさっそく町に繰り出す。
(エリシアと言えば牧畜が盛んだし、果物も多いっていう印象だけど、料理はどんなのがあるのかしら?)
と興味津々で町をぶらつく。
エルバルド王国とは違う町の雰囲気になんとなく観光気分を味わいながら店を物色していると、いかにも田舎風の外観に、チーズの絵が描いてある看板が掲げられている店を発見した。
(お。なんか良さそうね)
と思ってさっそく扉を開ける。
「いらっしゃいませ」
「ひとりだけどいい?」
といういつものやり取りを交わして、店の隅にある2人掛けの席に座った。
さっそく水を持ってきてくれた店員に、
「ねぇ。この国はほぼ初めてなんだけど、何がおススメなの?」
と素直に聞いてみる。
すると、店員は少し考えてから、
「ラクレットなんていかがです?肉や野菜にチーズをたっぷりかけたものなんですけどね。ボリュームもありますし、お酒にも合いますよ」
と、にこやかな顔でおススメを教えてくれた。
私はなんとなく想像できるようなできないような料理に、
(まぁ、肉と野菜とチーズで間違うことはないわね)
と考え、
「じゃぁ、それで。ちなみに、お酒は何を合わせるのが一番美味しいの?」
と、そのおススメのラクレットなるものを注文しつつ聞く。
私はその質問に微笑みながら、
「白ワインと合わせるのが一番のおススメですね。あ、でもビールにも良く合いますよ」
と答えてくれる店員のおススメに従って、
「じゃぁ、ワインは後から頼むから最初はビールを頂戴」
と、風呂上がりでほんのりと温かい体のことを考えてまずはビールを注文した。
やがてやってきたビールと、
「おつまみにどうぞ」
と言って出されたピクルスをかじりながらそのラクレットとやらを待つ。
そうやってしばらく待っていると、先ほどの店員が、
「お待たせしました」
と言いつつ、なにやら工具のような機械のようなものに大きなチーズの塊が乗った物を持ってやって来た。
思わず、
「え?」
と驚いてぽかんとしてしまう。
店員が、
「うふふ。これからこの機械でチーズを炙って表面を少し溶かしてからお肉とお野菜にかけるんですよ」
と説明してくれるが、どうにもよくわからない。
そこで私は、
「へぇ…」
と言いつつ、とりあえずこれから行われることをじっくりと観察してみることにした。
どうやらその機械の上部からは熱が出ているらしい。
にこやかな表情でチーズを見ている店員と一緒にチーズを見る。
しばらく経つと、チーズの表面がとろりと溶けてきた。
やがて頃合いになったらしく、
「じゃぁ、かけますね」
と言って店員が包丁のようなものでチーズの表面を器用に削って肉や野菜がたっぷりと乗った皿にどろりと掛けていく。
私は、
(うわ…。そんなにかけるの!?)
と内心驚きつつ、その様子をやや目を丸くしながら見守った。
「お待たせいたしました」
という店員から料理を受け取り、その威容にやや圧倒されながらも、
「ああ、そう言えば白ワインが合うんだったわね。おススメのやつをお願いできる?」
とかろうじてお酒のことを思い出して注文する。
「かしこまりました」
と言って店員が下がっていくと、私はさっそくそのラクレットという料理に手を付けた。
(うっわ…。とろとろ…)
皿に盛ってあるのは厚切りのベーコンとジャガイモ、それにニンジンとカボチャが添えられている。
(あ、もしかしてピクルスってこの料理の添え物でもあるのかな?)
と何となくこってりとしていそうな料理の添え物としてさっぱりとしたピクルスがあるのではないかと想像しながら、さっそくたっぷりとチーズがかかったジャガイモを口に運んだ。
(あふっ…)
と心の中で言いつつ、はふはふしながら食べる。
(んー!?なにこの濃厚な味…。さすが本場ね。チーズの味が違うわ…)
と感動しながら味わっていると、そこへ白ワインがやってきた。
さっそくひと口飲む。
(お。なるほど。この酸味がチーズでちょっとくどくなった口をさっぱりさせてくれるのね…。これって無限に行けちゃうやつじゃん)
と思いながら、次にベーコンを口に運んだ。
カリッとした表面とじゅわりとしみ出してくる脂のうま味がチーズのうま味と口の中で合わさってなんとも言えないコクを生み出す。
(こりゃたまらんわ…)
とおじさん臭い感想を持ちつつ、
(ボリュームがあるからお腹もいっぱいになりそうだし、お酒にも合う…。今の私の欲求を満たす完璧な料理ね。…今回のお土産はこのチーズかしら)
と考えながら満面の笑みでその完璧な料理を食べ進めた。
2杯の白ワインでたっぷりと初めてのラクレットを堪能し、
(そう言えば、この国は果物も特産よね)
と思い出し、近くにいた店員を呼ぶ。
「ねぇ、ちょっとデザートが欲しいんだけど、おススメは何?」
と聞くと、店員は、
「お酒が大丈夫なら、ツーガー・キルシュトルテなんていかがです?」
と、これまた聞きなれないお菓子の名前を出してきた。
(お酒?お菓子にお酒が入っているってこと?キルシュって…。ああ、サクランボの事だったかしら?)
と思いながら、
「じゃぁ、それとお茶をちょうだい」
と注文する。
(さて、どんなものが来るのかしら)
と思ってけっこうお腹いっぱいになったお腹をさすりながら、待っていると、すぐに可愛らしい見た目のケーキがやってきた。
(ぴ、ピンク?)
とそのあまりにも可愛らしい見た目にたじろいでしまう。
(私にピンク色のケーキって)
と、やや恥ずかしくなりながらもさっそくひと口食べてみた。
(むっ!これって…)
と、その甘さもさることながら、意外にもたっぷりと使われているお酒の酒精に驚いてしまう。
私は、
(これ、お酒が弱い人が食べたら倒れちゃうんじゃないかしら…)
と変な心配をしながら、そのこってりとした甘さにもかかわらず酒精のおかげでさっぱりと食べられる大人の味を堪能した。
まさかのデザートにもお酒が使われているという衝撃もあったのか、いつも通りと言えばいつも通り、ふわふわとした足取りで気持ちよくその店を出る。
(うふふ…。思いがけず驚きのご飯になったわね…)
と私はどちらも衝撃的だった地元の味を思い出し、ひとり悦に入りながら宿屋を目指した。
エリシア共和国との国境の宿場町ギンプの町に到着する。
私はそこで宿をとり、念のためにギルドへ行って依頼が張り出してある掲示板に目をやった。
宿場町のことだけあって、護衛の依頼が多いようだが、魔物討伐の依頼もちらほらと見受けられる。
しかし、今の所順調に受けられているようだ。
特に異常事態を示すようなものは無い。
私はそのことにほっとして、ギルドを後にした。
安らいだ気持ちで銭湯に向かう。
着くとさっそく体を洗いゆっくりと湯船に浸かっていつものように、
「ふいー…」
と声を漏らした。
(さて、どんな冒険になるのかしら)
というこれからへの期待と同時に、
(リリエラ様のためにも頑張らなくっちゃ)
という緊張感も湧いてくる。
私はお湯をパシャンとやると、十分に体が温まったのを見計らって湯船から上がった。
翌朝。
さっそくギンプの町の門を出て街道を行く。
首都メイエンまでは2日の旅。
大きな街道沿いを行くことになるので、ここからは野営の心配をしなくてもいいだろう。
私はエルバルド王国とは違ってどこか牧歌的な雰囲気のある濃い緑の中を通る街道を順調に進んでいった。
予定通り2日後。
夕方前。
首都メイエンに到着する。
林業の盛んな地域だけあって、木造の可愛らしい建物が並ぶ街並みを通り私はさっそくギルドへと向かった。
受付で聖女のバッチを見せながら、
「教会の依頼で来た聖女ジュリエッタよ。仲間の冒険者とこの町で落ち合うことになってるんだけど、来てるかしら?」
と聞くと、まだ着いていないという。
そこで私はいつものように適当な安宿を紹介してもらうと、そこに宿泊しているから到着したら教えてやって欲しいとお願いして、さっそく宿へと向かった。
宿で風呂を使いさっそく町に繰り出す。
(エリシアと言えば牧畜が盛んだし、果物も多いっていう印象だけど、料理はどんなのがあるのかしら?)
と興味津々で町をぶらつく。
エルバルド王国とは違う町の雰囲気になんとなく観光気分を味わいながら店を物色していると、いかにも田舎風の外観に、チーズの絵が描いてある看板が掲げられている店を発見した。
(お。なんか良さそうね)
と思ってさっそく扉を開ける。
「いらっしゃいませ」
「ひとりだけどいい?」
といういつものやり取りを交わして、店の隅にある2人掛けの席に座った。
さっそく水を持ってきてくれた店員に、
「ねぇ。この国はほぼ初めてなんだけど、何がおススメなの?」
と素直に聞いてみる。
すると、店員は少し考えてから、
「ラクレットなんていかがです?肉や野菜にチーズをたっぷりかけたものなんですけどね。ボリュームもありますし、お酒にも合いますよ」
と、にこやかな顔でおススメを教えてくれた。
私はなんとなく想像できるようなできないような料理に、
(まぁ、肉と野菜とチーズで間違うことはないわね)
と考え、
「じゃぁ、それで。ちなみに、お酒は何を合わせるのが一番美味しいの?」
と、そのおススメのラクレットなるものを注文しつつ聞く。
私はその質問に微笑みながら、
「白ワインと合わせるのが一番のおススメですね。あ、でもビールにも良く合いますよ」
と答えてくれる店員のおススメに従って、
「じゃぁ、ワインは後から頼むから最初はビールを頂戴」
と、風呂上がりでほんのりと温かい体のことを考えてまずはビールを注文した。
やがてやってきたビールと、
「おつまみにどうぞ」
と言って出されたピクルスをかじりながらそのラクレットとやらを待つ。
そうやってしばらく待っていると、先ほどの店員が、
「お待たせしました」
と言いつつ、なにやら工具のような機械のようなものに大きなチーズの塊が乗った物を持ってやって来た。
思わず、
「え?」
と驚いてぽかんとしてしまう。
店員が、
「うふふ。これからこの機械でチーズを炙って表面を少し溶かしてからお肉とお野菜にかけるんですよ」
と説明してくれるが、どうにもよくわからない。
そこで私は、
「へぇ…」
と言いつつ、とりあえずこれから行われることをじっくりと観察してみることにした。
どうやらその機械の上部からは熱が出ているらしい。
にこやかな表情でチーズを見ている店員と一緒にチーズを見る。
しばらく経つと、チーズの表面がとろりと溶けてきた。
やがて頃合いになったらしく、
「じゃぁ、かけますね」
と言って店員が包丁のようなものでチーズの表面を器用に削って肉や野菜がたっぷりと乗った皿にどろりと掛けていく。
私は、
(うわ…。そんなにかけるの!?)
と内心驚きつつ、その様子をやや目を丸くしながら見守った。
「お待たせいたしました」
という店員から料理を受け取り、その威容にやや圧倒されながらも、
「ああ、そう言えば白ワインが合うんだったわね。おススメのやつをお願いできる?」
とかろうじてお酒のことを思い出して注文する。
「かしこまりました」
と言って店員が下がっていくと、私はさっそくそのラクレットという料理に手を付けた。
(うっわ…。とろとろ…)
皿に盛ってあるのは厚切りのベーコンとジャガイモ、それにニンジンとカボチャが添えられている。
(あ、もしかしてピクルスってこの料理の添え物でもあるのかな?)
と何となくこってりとしていそうな料理の添え物としてさっぱりとしたピクルスがあるのではないかと想像しながら、さっそくたっぷりとチーズがかかったジャガイモを口に運んだ。
(あふっ…)
と心の中で言いつつ、はふはふしながら食べる。
(んー!?なにこの濃厚な味…。さすが本場ね。チーズの味が違うわ…)
と感動しながら味わっていると、そこへ白ワインがやってきた。
さっそくひと口飲む。
(お。なるほど。この酸味がチーズでちょっとくどくなった口をさっぱりさせてくれるのね…。これって無限に行けちゃうやつじゃん)
と思いながら、次にベーコンを口に運んだ。
カリッとした表面とじゅわりとしみ出してくる脂のうま味がチーズのうま味と口の中で合わさってなんとも言えないコクを生み出す。
(こりゃたまらんわ…)
とおじさん臭い感想を持ちつつ、
(ボリュームがあるからお腹もいっぱいになりそうだし、お酒にも合う…。今の私の欲求を満たす完璧な料理ね。…今回のお土産はこのチーズかしら)
と考えながら満面の笑みでその完璧な料理を食べ進めた。
2杯の白ワインでたっぷりと初めてのラクレットを堪能し、
(そう言えば、この国は果物も特産よね)
と思い出し、近くにいた店員を呼ぶ。
「ねぇ、ちょっとデザートが欲しいんだけど、おススメは何?」
と聞くと、店員は、
「お酒が大丈夫なら、ツーガー・キルシュトルテなんていかがです?」
と、これまた聞きなれないお菓子の名前を出してきた。
(お酒?お菓子にお酒が入っているってこと?キルシュって…。ああ、サクランボの事だったかしら?)
と思いながら、
「じゃぁ、それとお茶をちょうだい」
と注文する。
(さて、どんなものが来るのかしら)
と思ってけっこうお腹いっぱいになったお腹をさすりながら、待っていると、すぐに可愛らしい見た目のケーキがやってきた。
(ぴ、ピンク?)
とそのあまりにも可愛らしい見た目にたじろいでしまう。
(私にピンク色のケーキって)
と、やや恥ずかしくなりながらもさっそくひと口食べてみた。
(むっ!これって…)
と、その甘さもさることながら、意外にもたっぷりと使われているお酒の酒精に驚いてしまう。
私は、
(これ、お酒が弱い人が食べたら倒れちゃうんじゃないかしら…)
と変な心配をしながら、そのこってりとした甘さにもかかわらず酒精のおかげでさっぱりと食べられる大人の味を堪能した。
まさかのデザートにもお酒が使われているという衝撃もあったのか、いつも通りと言えばいつも通り、ふわふわとした足取りで気持ちよくその店を出る。
(うふふ…。思いがけず驚きのご飯になったわね…)
と私はどちらも衝撃的だった地元の味を思い出し、ひとり悦に入りながら宿屋を目指した。
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