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アイカとユナ04
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3人で初めての野営を終えた朝。
さっそく私は携帯用の浄化の魔導石を地面に突き立て、魔力を流す。
私にとってはいつものことだが、アイカとユナは物珍しそうにそれを眺めていた。
やがて、地脈を読み終えた私が、
「あっちね」
と方向を示す。
すると、ユナが、
「便利な魔法ねぇ…」
と感心したような顔で言い、アイカも、
「探し回らなくていいなんて楽ちんだよ」
と笑いながらそう言った。
さっそく地図で簡単に地形を確認する。
地脈の大きな淀みは無かったが、村に設置してあった浄化の魔導石があまり機能していなかったことを考えると、油断はできない。
そのことを2人も伝えると、昨日とは打って変わって、3人とも引き締まった表情で森の奥へと進んで行った。
途中も小休止も兼ねて地脈を読みながら着実に進んで行く。
すると、徐々に初夏の爽やかさの中に重たい空気が混じり始めた。
「なんか近づいてる感じがするわね」
というユナの言葉にうなずいて、
「おそらくもう少し行けば何かの痕跡があるはずよ。…時間的に、今日はその辺りまでかしら」
と、空を見上げながら答える。
そして、
「そうだね。無茶して深入りしたら危険かも。ちょっとだけ慎重に進もう」
と言うアイカの言葉にうなずくと、さらに気を引き締めて地脈の淀みが指し示す方角へと歩を進めた。
進むことしばし。
そろそろ野営地を探した方がいいだろうかという頃。
先行していたユナがふと足を止める。
獣道のような痕跡に突き当たった。
「ゴブリンかしら…」
というユナに続いてその痕跡を見てみると、確かにそれらしく見える。
「うげぇ…」
とアイカがあからさまに嫌そうな顔をした。
気持ちはわからないでもない。
あれは臭いし気持ち悪い。
そんなアイカにユナが苦笑いを浮かべながら、
「安心して、燃やすのは得意だから」
と声を掛けた。
私も、
「浄化は任せて、ついでに血の処理もできるから匂いも気にする必要は無いわ」
と続く。
すると、アイカとユナはきょとんとした顔を私に向けてきた。
そんな2人に私は、
「ああ。浄化の副作用っていうのかな?なぜかはわからないけど、私があの携帯型の浄化の魔導石を使って周囲を浄化すると、魔物の血が消えるのよ」
と簡単に説明する。
すると、2人の顔がぱぁっと綻び、
「「ありがとう!」」
と前のめりにお礼を言われてしまった。
どうやら、2人とも多くの冒険者同様、あの匂いと汚れには手を焼いていたようで、
「いやぁ、あの匂い嫌いなんだよね」
とアイカが眉をしかめながら言うと、ユナも、
「そうそう。それにシミになるからいつもお洗濯に手を焼いていたのよ」
と困ったような顔で続く。
そんな2人に向かって私は少し笑いながら、
「安心して、今回は洗濯いらずよ」
と軽口を叩いた。
「あははっ」
「ふふっ」
と2人が笑い、先ほどまで張り詰めていた空気が緩む。
本来ならいけないことかもしれないが、この場合はこの空気が正解のような気がした。
私はそのまま笑顔で、
「じゃぁ、明日はさっさと片づけて村に戻りましょう」
と明るい言葉を掛ける。
「うん!」
「ええ」
とこちらも楽しそうに答える2人の笑顔に私もなんだか安心して、
「じゃぁ、ちょっと移動したらさっそく野営の準備に取り掛かりましょう」
と言うと、やや慎重に、しかし、ある程度軽い気持ちでその場を離れた。
交代で慎重に見張りをしながらその夜を過ごした翌日。
少し気を引き締めて丹念に痕跡を追っていく。
追うごとに空気は重たくなり、ついには腐臭までしてきた。
「うげぇ…」
とアイカが本当に嫌そうな顔をする。
よほど苦手なのだろう。
私もあの醜悪な姿を思い出してしまい、一瞬身震いしてしまった。
しかし、気を取り直して追跡を続ける。
そして、ついに巣を発見した。
森の中にある小さな窪地。
そこに数十匹のゴブリンがたむろしている。
獲物だろうか。
何かの動物だったと思われるものを貪る姿に怖気が走った。
慎重に辺りを窺うが、周りに散らばっている様子はない。
それでも丹念に周辺を探り、私たちも小休止を挟んだ。
干し果物をかじり、水を飲みながら、
「どうする?」
と聞く私に、ユナが、
「最初の打ち合わせ通りいきましょう」
と答えて、それにアイカもうなずく。
私は短く、
「わかった」
とだけ答えると、さっそく薙刀の革鞘を取った。
ユナの矢を合図に私とアイカが突っ込む。
「グギャッ!」
と醜い声を上げて1匹が倒れた。
慌てふためく様子のゴブリンたちにまずは私が一撃を入れる。
「守りは任せて!」
というアイカの声が後ろから聞こえたので、私は、
「任せた!」
と短く叫んで前方のゴブリンに集中した。
突きを入れ、下から払う。
続けざまに右へ一閃し、2匹まとめて斬り捨てた。
私の左でまた、
「グギャッ!」
という声がする。
後からも聞こえた。
(ああ、誰かと一緒っていいな…)
そんなことを思いながらも目の前の敵に薙刀を突き入れる。
徐々に乱戦の様相を呈してきたその場の主導権を奪うように前進すると、大きく左へ薙刀を振って何匹か斬り払い、右から来た気配へ柄を叩き込んだ。
そのまま前を突いてさらに一歩踏み込む。
くるりと薙刀を回して袈裟懸けに一閃。
そして、また一歩踏み出すと、次々に飛び掛かって来るゴブリンたちを右に左に素早く撫で斬っていった。
時々後ろや横から聞こえてくる醜い声を聞きながら時に踏み込み、時にその場で回転するように立ち回りながら、切り進む。
私は順調にゴブリンの数を減らしていった。
その時、後方に少し大きな気配を感じて振り返る。
その刹那、リーダーと思しき個体がアイカに向かってこぶしを振り下ろした。
ぐちゃり、と音が聞こえてそのこぶしがアイカの盾に受け止められる。
私はその隙を逃さずアイカの横から飛び出すと、そのままリーダーの横をすり抜け、その足を斬り払った。
倒れたリーダーの首元にアイカの短剣が刺さる。
そうして、私たちの初戦が終わった。
「パンッ」
アイカとハイタッチを交わす。
やがて、
「うふふ」
と笑いながらこちらにやって来たユナともハイタッチを交わした。
「さて、次はお掃除ね」
と私が冗談めかして言うと、
ややげんなりした顔でアイカが、
「はーい」
と言って、ユナも、
「そうね」
と困ったような笑顔を浮かべる。
私もやれやれといった顔になりながらも、さっそく3人でゴブリンを一か所に集め始めた。
やがてゴブリンの山ができると、
「じゃぁ、焼くわね」
とユナが軽くそう言って、さっそく短いロッドを取り出した。
何事かつぶやくとユナの魔力が一気に増大する。
そして、ゴブリンの山が下から吹き上げるような強い炎に包まれると、数舜の間に黒焦げになった。
私がその光景をややあっけにとられながら見ていると、アイカから、
「ジル。次はお洗濯よろしく!」
と声がかかる。
私はその声にハッとして、
「ええ。ちょっと待ってて」
と言うと、さっそく荷物を取りに行った。
すぐに戻って来て浄化に取り掛かる。
「じゃぁ、近くにいてね。その方が早いと思うから」
と言うと近寄ってきたアイカとユナに背を向けてさっそくいつものように携帯用の魔導石を地面に突き立てた。
いつものように魔力を流すとその場が青白い光に包まれる。
背後から、
「おお…」
「まぁ…」
と言う声が聞こえた。
おそらく血が消えたのだろう。
私はその声を聞いて嬉しく思いながらも、慎重にその場を浄化していく。
丹念に調べてみたが、この場の淀みはそれほど大きなものでは無かった。
そのことにほっとして集中を解き、
「ふぅ…」
と息を吐きながら振り返ると、なぜか2人が拍手をしている。
私はその称賛の拍手を送ってくれる2人を見て、
「え?えぇ??」
と慌てて変な声を出してしまった。
「すごいね!」
「ええ。すごいわ」
「匂いが無い!」
「ええ。シミも」
と嬉しそうに笑う2人を見て、私も笑顔をこぼす。
「よかった」
私が心の底からそう言うと、
「「ありがとう!」」
と2人の声がそろい、みんなの笑顔が弾けた。
さっそく私は携帯用の浄化の魔導石を地面に突き立て、魔力を流す。
私にとってはいつものことだが、アイカとユナは物珍しそうにそれを眺めていた。
やがて、地脈を読み終えた私が、
「あっちね」
と方向を示す。
すると、ユナが、
「便利な魔法ねぇ…」
と感心したような顔で言い、アイカも、
「探し回らなくていいなんて楽ちんだよ」
と笑いながらそう言った。
さっそく地図で簡単に地形を確認する。
地脈の大きな淀みは無かったが、村に設置してあった浄化の魔導石があまり機能していなかったことを考えると、油断はできない。
そのことを2人も伝えると、昨日とは打って変わって、3人とも引き締まった表情で森の奥へと進んで行った。
途中も小休止も兼ねて地脈を読みながら着実に進んで行く。
すると、徐々に初夏の爽やかさの中に重たい空気が混じり始めた。
「なんか近づいてる感じがするわね」
というユナの言葉にうなずいて、
「おそらくもう少し行けば何かの痕跡があるはずよ。…時間的に、今日はその辺りまでかしら」
と、空を見上げながら答える。
そして、
「そうだね。無茶して深入りしたら危険かも。ちょっとだけ慎重に進もう」
と言うアイカの言葉にうなずくと、さらに気を引き締めて地脈の淀みが指し示す方角へと歩を進めた。
進むことしばし。
そろそろ野営地を探した方がいいだろうかという頃。
先行していたユナがふと足を止める。
獣道のような痕跡に突き当たった。
「ゴブリンかしら…」
というユナに続いてその痕跡を見てみると、確かにそれらしく見える。
「うげぇ…」
とアイカがあからさまに嫌そうな顔をした。
気持ちはわからないでもない。
あれは臭いし気持ち悪い。
そんなアイカにユナが苦笑いを浮かべながら、
「安心して、燃やすのは得意だから」
と声を掛けた。
私も、
「浄化は任せて、ついでに血の処理もできるから匂いも気にする必要は無いわ」
と続く。
すると、アイカとユナはきょとんとした顔を私に向けてきた。
そんな2人に私は、
「ああ。浄化の副作用っていうのかな?なぜかはわからないけど、私があの携帯型の浄化の魔導石を使って周囲を浄化すると、魔物の血が消えるのよ」
と簡単に説明する。
すると、2人の顔がぱぁっと綻び、
「「ありがとう!」」
と前のめりにお礼を言われてしまった。
どうやら、2人とも多くの冒険者同様、あの匂いと汚れには手を焼いていたようで、
「いやぁ、あの匂い嫌いなんだよね」
とアイカが眉をしかめながら言うと、ユナも、
「そうそう。それにシミになるからいつもお洗濯に手を焼いていたのよ」
と困ったような顔で続く。
そんな2人に向かって私は少し笑いながら、
「安心して、今回は洗濯いらずよ」
と軽口を叩いた。
「あははっ」
「ふふっ」
と2人が笑い、先ほどまで張り詰めていた空気が緩む。
本来ならいけないことかもしれないが、この場合はこの空気が正解のような気がした。
私はそのまま笑顔で、
「じゃぁ、明日はさっさと片づけて村に戻りましょう」
と明るい言葉を掛ける。
「うん!」
「ええ」
とこちらも楽しそうに答える2人の笑顔に私もなんだか安心して、
「じゃぁ、ちょっと移動したらさっそく野営の準備に取り掛かりましょう」
と言うと、やや慎重に、しかし、ある程度軽い気持ちでその場を離れた。
交代で慎重に見張りをしながらその夜を過ごした翌日。
少し気を引き締めて丹念に痕跡を追っていく。
追うごとに空気は重たくなり、ついには腐臭までしてきた。
「うげぇ…」
とアイカが本当に嫌そうな顔をする。
よほど苦手なのだろう。
私もあの醜悪な姿を思い出してしまい、一瞬身震いしてしまった。
しかし、気を取り直して追跡を続ける。
そして、ついに巣を発見した。
森の中にある小さな窪地。
そこに数十匹のゴブリンがたむろしている。
獲物だろうか。
何かの動物だったと思われるものを貪る姿に怖気が走った。
慎重に辺りを窺うが、周りに散らばっている様子はない。
それでも丹念に周辺を探り、私たちも小休止を挟んだ。
干し果物をかじり、水を飲みながら、
「どうする?」
と聞く私に、ユナが、
「最初の打ち合わせ通りいきましょう」
と答えて、それにアイカもうなずく。
私は短く、
「わかった」
とだけ答えると、さっそく薙刀の革鞘を取った。
ユナの矢を合図に私とアイカが突っ込む。
「グギャッ!」
と醜い声を上げて1匹が倒れた。
慌てふためく様子のゴブリンたちにまずは私が一撃を入れる。
「守りは任せて!」
というアイカの声が後ろから聞こえたので、私は、
「任せた!」
と短く叫んで前方のゴブリンに集中した。
突きを入れ、下から払う。
続けざまに右へ一閃し、2匹まとめて斬り捨てた。
私の左でまた、
「グギャッ!」
という声がする。
後からも聞こえた。
(ああ、誰かと一緒っていいな…)
そんなことを思いながらも目の前の敵に薙刀を突き入れる。
徐々に乱戦の様相を呈してきたその場の主導権を奪うように前進すると、大きく左へ薙刀を振って何匹か斬り払い、右から来た気配へ柄を叩き込んだ。
そのまま前を突いてさらに一歩踏み込む。
くるりと薙刀を回して袈裟懸けに一閃。
そして、また一歩踏み出すと、次々に飛び掛かって来るゴブリンたちを右に左に素早く撫で斬っていった。
時々後ろや横から聞こえてくる醜い声を聞きながら時に踏み込み、時にその場で回転するように立ち回りながら、切り進む。
私は順調にゴブリンの数を減らしていった。
その時、後方に少し大きな気配を感じて振り返る。
その刹那、リーダーと思しき個体がアイカに向かってこぶしを振り下ろした。
ぐちゃり、と音が聞こえてそのこぶしがアイカの盾に受け止められる。
私はその隙を逃さずアイカの横から飛び出すと、そのままリーダーの横をすり抜け、その足を斬り払った。
倒れたリーダーの首元にアイカの短剣が刺さる。
そうして、私たちの初戦が終わった。
「パンッ」
アイカとハイタッチを交わす。
やがて、
「うふふ」
と笑いながらこちらにやって来たユナともハイタッチを交わした。
「さて、次はお掃除ね」
と私が冗談めかして言うと、
ややげんなりした顔でアイカが、
「はーい」
と言って、ユナも、
「そうね」
と困ったような笑顔を浮かべる。
私もやれやれといった顔になりながらも、さっそく3人でゴブリンを一か所に集め始めた。
やがてゴブリンの山ができると、
「じゃぁ、焼くわね」
とユナが軽くそう言って、さっそく短いロッドを取り出した。
何事かつぶやくとユナの魔力が一気に増大する。
そして、ゴブリンの山が下から吹き上げるような強い炎に包まれると、数舜の間に黒焦げになった。
私がその光景をややあっけにとられながら見ていると、アイカから、
「ジル。次はお洗濯よろしく!」
と声がかかる。
私はその声にハッとして、
「ええ。ちょっと待ってて」
と言うと、さっそく荷物を取りに行った。
すぐに戻って来て浄化に取り掛かる。
「じゃぁ、近くにいてね。その方が早いと思うから」
と言うと近寄ってきたアイカとユナに背を向けてさっそくいつものように携帯用の魔導石を地面に突き立てた。
いつものように魔力を流すとその場が青白い光に包まれる。
背後から、
「おお…」
「まぁ…」
と言う声が聞こえた。
おそらく血が消えたのだろう。
私はその声を聞いて嬉しく思いながらも、慎重にその場を浄化していく。
丹念に調べてみたが、この場の淀みはそれほど大きなものでは無かった。
そのことにほっとして集中を解き、
「ふぅ…」
と息を吐きながら振り返ると、なぜか2人が拍手をしている。
私はその称賛の拍手を送ってくれる2人を見て、
「え?えぇ??」
と慌てて変な声を出してしまった。
「すごいね!」
「ええ。すごいわ」
「匂いが無い!」
「ええ。シミも」
と嬉しそうに笑う2人を見て、私も笑顔をこぼす。
「よかった」
私が心の底からそう言うと、
「「ありがとう!」」
と2人の声がそろい、みんなの笑顔が弾けた。
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