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第六章〜自分だけの道を〜
28.リクラブリア王国
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グレゼリオン王国の王城は何度にも渡り改修が常に行われている。権威を保つためである。常に最新の豪華絢爛な王城に保つために、国家予算のいくつかは毎年王城の為に使われている。
故に最古の王国という二つ名を持ちながら、王城は常に奇麗で美しい。
まあ、それは今回の話に全く関係ないので、忘れて構わない。
今回必要な情報としては、王城に王族の全員が住んでいるという事だ。
王族を全員そこに集めるのは一見危険に感じる、というか普通に危険だ。だが数百年前からあるだけあって、この城はいくつもの魔法によって防護されている。
文字通りネズミ一匹すら入る隙間もないほどの堅牢な城塞としての役割を持つのだ。
だからこうやって、皇太子であるアースの友人で、尚且つ賢神でもない限りは容易に入れはしないのだ。
「お久しぶりですね、アルス様。」
そして案内をするのはアースの専属メイドの、四年前、アースが裁判にかけられた時にアースの部屋へ案内してくれた人だ。
門を通るとこの人が直ぐに出てきてくれた。あれから一度も会ってはいないが、印象は未だに深く、俺も覚えてはいた。
「元気そうでよかった。もう辞めているんじゃないかって心配だったから。」
見た感じかなり歳を取っているように感じていたし、辞めていた可能性はあると思う。
それが心配だったというのは、彼女がアースの数少ない理解者であったと思ったからだ。時折アースの口から聞くこともあったし、信頼できる人間であったのには違いないだろう。
「……実のところ、私も辞めるつもりであったのですが、殿下に止められまして。老い先短いのですが、子供の頃から見ている分、私も辞められず、こうやってまだメイドをやらせて頂いております。」
「結婚はしてないのか?」
「国が恋人ですので。結婚などできませんよ。」
やっぱりこの人、ただのメイドじゃない気がする。というか王城のメイドなんて元貴族がやっているとしか考えられない。
となれば元々はかなり高位の貴族である可能性が高いと思うけど。
「それでは、そろそろ殿下の部屋へ案内いたします。どうぞこちらに。」
そう言ってこちらに背を向けて歩き始めるその人に着いて行く。
そう言えば名前を聞き損ねた。だが、流石にアースが知っているだろうし、案内を止めてまで聞くことでもないだろう。
そう思い、そのまま着いて行く。そう遠い位置にアースの部屋がないのは、前回来た時に知っている。というか、わざわざ自室に移動するのに時間がかかるのでは不便であろう。
そんなわけで、割と直ぐにアースの部屋の前まで俺は辿り着いた。
「こちらです。恐らくそのまま入っても問題ないでしょう。」
「ありがとう。」
「いえいえ、それでは失礼致します。」
そう言ってこの場を離れていった。
専属メイドってどんな仕事をしているのだろうと、少し疑問になるが、俺が気にする事ではないだろう。思考を端の方に追いやり、ドアをノックする。
だが許可を待つのも癪なので、中には一人しか魔力を感じないし、そのままドアを開けた。
「入ってもいい……開けるの早くねーか?」
「気のせいだ。それに俺は賢神だし、権力体制から独立してるからな。礼儀はいらない。」
「法律には縛られるだろーが。」
「俺とお前の仲だろ?」
「親しき仲にも礼儀あり、だ。」
アースが座っている椅子の向かいにある、机を挟んだ位置にある椅子に勝手に座る。
俺とアースは対等だ。互いを励まし合うのではなく、互いの欠点を突き付け続け、そして更に強くなっていく。
俺達が出会った時から、正確に言うなら俺がエルディナに負けた日から、それはずっと変わりない。
「それで、戻って来たって事は賢神になれたらしいな。何で帰りがこんなに遅かったかを聞きたいんだが?」
「それは後でゆっくり話す。話せば長くなるしな。」
「ガレウ関連で何かあったか。名も無き組織を独断で追ったりはしねーだろうし……何か困ってる奴でもいて、そいつの面倒でも見てたって感じか?」
こいつ本当は全部知ってるんじゃないだろうな。
流石に困っている奴がケラケルウスだっていうことまでは分からなかったみたいだが、そこまで分かるか普通。
「その表情を見るに当たりか。ガレウは不穏な感じがあったし、何かしら秘密事をしてそうってのは想像がついていたけどな。」
「……依頼の話をしようぜ。何かしらはあるんだろ?」
「そんなに急ぎでもねーけどな。お前が気になるなら話してもいーがよ。」
そう言ってそこら辺にある適当な引き出しから紙を取り出して、机の上に置く。
「俺様からの依頼ってことは、国からの依頼ってわけだ。心して聞け。」
置かれた紙はどうやら依頼書のようで、報酬やら依頼内容やらが書いてあるのが、少し見た範囲ではわかった。
その内容を取り敢えず流し見していくと、一つの単語が目に止まる。
リクラブリア王国と書かれている。リクラブリア王国は最初に行った魔導の国と、シータがいたヴァルバーン連合王国の間にある国だ。
「リクラブリア王国への調査。それがお前への依頼だ。」
「あそこは大国ってわけでもないだろ。それこそ、今は落ち目じゃなかったか?」
「確かにそうだ。だが、これはあっちからの要請でもある。」
リクラブリアからか?リクラブリアなんて全くと言っていいほど、関係はないはずだ。そもそも何故俺の事を知っているのだろう。
学内大会を見て知ったとしても、色々と疑問は残る。
あっちから要請するからには金を払う必要があるだろう。そこまでして俺を呼ぶ必要性があるのか。どうせ金を払うなら実績がある賢神が他にいるだろう。
「実はお前が第二学園にいる時から、ずっと要請は来ていた。アルス・ウァクラートを我が国にくれ、とな。」
「え、やだ。」
「だろーよ。だから勝手に断ってたし、勝手にお前の名義をこの国に置いておいた。役職上は国の魔導騎士だから、用向きがあるならうちの国を通さなくちゃならない。」
色々やってたんだな。俺にとっては得になるし、構わないどころか、嬉しいことではあるけど。
どちらにせよアースの依頼を受けながら世界を回るというのが、当分の動き方だ。それなら殆ど国のお抱えに違いない。
「学園にいる間は学業中だからって断れたが、賢神になった今、断る理由もねーからな。狙いがわからねーし、表向きは友好の印としての行使だ。」
「裏向きは?」
「何かを絶対に隠してる。気になる所を挙げればキリがねーから、王城に潜入して色々と調べてこい。」
それは、大役だな。シルード大陸出身が、随分と成り上がったものだ。ウァクラートの血筋と考えるのなら、むしろ妥当ではあるけど。
「主に調査して欲しい事は三つ。一つは悪政と言われる政治体制。二つ目はグレゼリオン王国、つまりこの国に敵意がないか。三つ目は……」
そこで急に言葉が詰まる。というか言いあぐねている、というようであった。
「あー……民衆の間で広がっていた噂、勇者が王城にいるっていうのを調査してきてくれ。」
故に最古の王国という二つ名を持ちながら、王城は常に奇麗で美しい。
まあ、それは今回の話に全く関係ないので、忘れて構わない。
今回必要な情報としては、王城に王族の全員が住んでいるという事だ。
王族を全員そこに集めるのは一見危険に感じる、というか普通に危険だ。だが数百年前からあるだけあって、この城はいくつもの魔法によって防護されている。
文字通りネズミ一匹すら入る隙間もないほどの堅牢な城塞としての役割を持つのだ。
だからこうやって、皇太子であるアースの友人で、尚且つ賢神でもない限りは容易に入れはしないのだ。
「お久しぶりですね、アルス様。」
そして案内をするのはアースの専属メイドの、四年前、アースが裁判にかけられた時にアースの部屋へ案内してくれた人だ。
門を通るとこの人が直ぐに出てきてくれた。あれから一度も会ってはいないが、印象は未だに深く、俺も覚えてはいた。
「元気そうでよかった。もう辞めているんじゃないかって心配だったから。」
見た感じかなり歳を取っているように感じていたし、辞めていた可能性はあると思う。
それが心配だったというのは、彼女がアースの数少ない理解者であったと思ったからだ。時折アースの口から聞くこともあったし、信頼できる人間であったのには違いないだろう。
「……実のところ、私も辞めるつもりであったのですが、殿下に止められまして。老い先短いのですが、子供の頃から見ている分、私も辞められず、こうやってまだメイドをやらせて頂いております。」
「結婚はしてないのか?」
「国が恋人ですので。結婚などできませんよ。」
やっぱりこの人、ただのメイドじゃない気がする。というか王城のメイドなんて元貴族がやっているとしか考えられない。
となれば元々はかなり高位の貴族である可能性が高いと思うけど。
「それでは、そろそろ殿下の部屋へ案内いたします。どうぞこちらに。」
そう言ってこちらに背を向けて歩き始めるその人に着いて行く。
そう言えば名前を聞き損ねた。だが、流石にアースが知っているだろうし、案内を止めてまで聞くことでもないだろう。
そう思い、そのまま着いて行く。そう遠い位置にアースの部屋がないのは、前回来た時に知っている。というか、わざわざ自室に移動するのに時間がかかるのでは不便であろう。
そんなわけで、割と直ぐにアースの部屋の前まで俺は辿り着いた。
「こちらです。恐らくそのまま入っても問題ないでしょう。」
「ありがとう。」
「いえいえ、それでは失礼致します。」
そう言ってこの場を離れていった。
専属メイドってどんな仕事をしているのだろうと、少し疑問になるが、俺が気にする事ではないだろう。思考を端の方に追いやり、ドアをノックする。
だが許可を待つのも癪なので、中には一人しか魔力を感じないし、そのままドアを開けた。
「入ってもいい……開けるの早くねーか?」
「気のせいだ。それに俺は賢神だし、権力体制から独立してるからな。礼儀はいらない。」
「法律には縛られるだろーが。」
「俺とお前の仲だろ?」
「親しき仲にも礼儀あり、だ。」
アースが座っている椅子の向かいにある、机を挟んだ位置にある椅子に勝手に座る。
俺とアースは対等だ。互いを励まし合うのではなく、互いの欠点を突き付け続け、そして更に強くなっていく。
俺達が出会った時から、正確に言うなら俺がエルディナに負けた日から、それはずっと変わりない。
「それで、戻って来たって事は賢神になれたらしいな。何で帰りがこんなに遅かったかを聞きたいんだが?」
「それは後でゆっくり話す。話せば長くなるしな。」
「ガレウ関連で何かあったか。名も無き組織を独断で追ったりはしねーだろうし……何か困ってる奴でもいて、そいつの面倒でも見てたって感じか?」
こいつ本当は全部知ってるんじゃないだろうな。
流石に困っている奴がケラケルウスだっていうことまでは分からなかったみたいだが、そこまで分かるか普通。
「その表情を見るに当たりか。ガレウは不穏な感じがあったし、何かしら秘密事をしてそうってのは想像がついていたけどな。」
「……依頼の話をしようぜ。何かしらはあるんだろ?」
「そんなに急ぎでもねーけどな。お前が気になるなら話してもいーがよ。」
そう言ってそこら辺にある適当な引き出しから紙を取り出して、机の上に置く。
「俺様からの依頼ってことは、国からの依頼ってわけだ。心して聞け。」
置かれた紙はどうやら依頼書のようで、報酬やら依頼内容やらが書いてあるのが、少し見た範囲ではわかった。
その内容を取り敢えず流し見していくと、一つの単語が目に止まる。
リクラブリア王国と書かれている。リクラブリア王国は最初に行った魔導の国と、シータがいたヴァルバーン連合王国の間にある国だ。
「リクラブリア王国への調査。それがお前への依頼だ。」
「あそこは大国ってわけでもないだろ。それこそ、今は落ち目じゃなかったか?」
「確かにそうだ。だが、これはあっちからの要請でもある。」
リクラブリアからか?リクラブリアなんて全くと言っていいほど、関係はないはずだ。そもそも何故俺の事を知っているのだろう。
学内大会を見て知ったとしても、色々と疑問は残る。
あっちから要請するからには金を払う必要があるだろう。そこまでして俺を呼ぶ必要性があるのか。どうせ金を払うなら実績がある賢神が他にいるだろう。
「実はお前が第二学園にいる時から、ずっと要請は来ていた。アルス・ウァクラートを我が国にくれ、とな。」
「え、やだ。」
「だろーよ。だから勝手に断ってたし、勝手にお前の名義をこの国に置いておいた。役職上は国の魔導騎士だから、用向きがあるならうちの国を通さなくちゃならない。」
色々やってたんだな。俺にとっては得になるし、構わないどころか、嬉しいことではあるけど。
どちらにせよアースの依頼を受けながら世界を回るというのが、当分の動き方だ。それなら殆ど国のお抱えに違いない。
「学園にいる間は学業中だからって断れたが、賢神になった今、断る理由もねーからな。狙いがわからねーし、表向きは友好の印としての行使だ。」
「裏向きは?」
「何かを絶対に隠してる。気になる所を挙げればキリがねーから、王城に潜入して色々と調べてこい。」
それは、大役だな。シルード大陸出身が、随分と成り上がったものだ。ウァクラートの血筋と考えるのなら、むしろ妥当ではあるけど。
「主に調査して欲しい事は三つ。一つは悪政と言われる政治体制。二つ目はグレゼリオン王国、つまりこの国に敵意がないか。三つ目は……」
そこで急に言葉が詰まる。というか言いあぐねている、というようであった。
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