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第六章〜自分だけの道を〜

25.帰還

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 一悶着はあったが、結末的には俺達の理想通りとなった。結果良ければ全て良し、とは言えないが、ここで戦った甲斐はあっただろう。

「了解、状況は掴めました。」

 取り敢えず経緯を軽く機械人間ヒューマノイド、シータに説明した。
 そもそも俺達の事や、ここに来た理由、そして上でまだ、ケラケルウスが戦っていることもだ。

「嘲笑、確かにケラケルウスなら時間がかかるでしょう。」

 そう言って階段をシータは上っていく。
 さっきから思っていたのだが、喋り方がおかしい。それに表情もずっと固まっている。本当に機械みたいだ。
 だが、流石に初対面ではそこまで聞き出せず、何も言えないまま地上へと近付いていった。

「勧告、ここで三人とも止まってください。」
「……それは、危険だからか?」
「肯定、ケラケルウスなら当たっても死亡しませんが、貴方達には死亡する確率があります。」

 そう言って、一人で階段を上り、地上へと出た。俺達は地上には出ないものの、後ろから外の様子をよく見る。
 ドラゴンの亡骸がいくつか転がっているが、数が減ったようには見えなかった。

「おい、出てくるなって――お前か。」
「侮蔑、子供を危険な場所に連れてくるのは、倫理観に欠けていると断言します。」
「うるせえ、寝坊したお前が悪い。」
「否定、論点をズラさないでください。」

 軽口を叩き合い、どこか隙があるように見えるが、ドラゴンは一匹たりとて襲いかかることはない。
 そしてそのまま襲いかからない内に、シータはその眼でドラゴンの姿を捉える。

「面倒、聞きたい事もあるので手早く終わらせます。」

 そう言った瞬間に数十の魔法陣が、互いに作用し合うように緻密に、綺麗に、それでいて異様な速度で書き上げられる。
 俺があの魔法陣を作るならきっと五分はかかるだろう。それほどの量と緻密さだ。

「『術式展開ハール・パーゼ02ゼロニ』」

 その魔法陣は急激に光を発し、そして目を開けないほどの眩い光が溢れる。

「『対軍用光属性殲滅魔法ライトニング』」

 光は一瞬にして周囲の空間を。出るなと言われていた理由を、今更ながらに理解した。
 そもそもの話だが、光属性と闇属性は魔法の中でも別分類に入る。光の闇の大精霊がいないことからも、それは想像がつきやすいだろう。
 そもそも光というのは重さがないし、どう考えても人にダメージが与えられない。だから光属性魔法というのは、光みたいなものを使う魔法だ。
 神の神秘とも言って良く、その力は目の前に広がる光景そのままであろう。

「十二体撃破、四十六体負傷、百二十七体逃亡。」

 さらりとそう言ってのけた。
 どんな攻撃だったかは、負傷したドラゴンを見たら分かりやすい。消滅しているのだ、光を喰らった部分が。あれでは生き残っている個体もそう長くないだろう。
 加えて言うなら地面の方も少し削れている。これだけ強力なのに範囲魔法なんだから恐ろしい。だが、仲間であるのなら頼もしい。

「いってえぇぇっ!」

 そう言えばと、ちょっと体周りが焦げてしまったケラケルウスへ目を移した。
 当然と言えば当然だ。明らかに範囲内にいたし、逃げろとも言わずにいきなり打ち込んだのだ。というか痛いで済む方がおかしい。

「おい、シータ……もっと他にいい魔法があったろうが!」
「否定、完璧でした。ドラゴンと同時並行で憂さ晴らしを行えます。」
「わざとかよ!その陰湿なところは欠片も変わりやしないな!」

 そう言ってケラケルウスは斧を背負い直し、何故かそのまま淡い光となって消えていった。確か神器なんだっけ。

「……話したいことは色々あるが、まあ、後だ。街に戻るぞ。頼んだぜ、シータ。」
「不満、人の事を交通手段のように扱わないでください。」
「わかったわかった、わかったから早くしてくれ。あんまりここに長居したくねえ。」

 そう言われて渋々とシータは片膝をつき、手を地面につける。

「大型変型、飛行形態へ移行。」

 体が独特な機械音を立てて、姿を変えていく。
 黒い両翼に流動的なフォルム。それは異世界という世界観には合うものではないが、間違いなく男心をくすぐるものだった。

「え、かっこよ。」

 戦闘機だ。どう見ても戦闘機だ。黒い戦闘機だ。ただ戦闘機と言うには、人が座るスペースがしっかり確保されているように感じる。
 そのせいかちょっと形は見慣れないが、いや、それでも戦闘機だ。

「よし、乗り込むぞ。これで街まで戻る。」

 ちょっと動揺している。いや、だけど男でこういうのを見て興奮しない奴はいないだろう。むしろ興奮しない方がおかしい。
 俺はそんな感じで、終始興奮しながら街まで戻る事になった。
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