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第三章〜剣士は遥かなる頂の前に〜
11.決勝戦
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まるで定められたかのように、決勝へと二人が駒を進めた。
他の生徒が競った試合をする中、この二人だけはそれがない。文字通り、格が違ったのだ。
『さて、いよいよ決勝戦です。ここで戦う生徒の紹介を致しましょう!』
日が暮れ始める頃、決勝は始まる。
翌日の5年生の試合ほどではないが、一年の決勝戦は人が集まる。
一日目最後の試合にして、一年生の最強を決める戦いだ。注目度も高い。
更にこの時間帯は仕事が終わる頃。そういう理由もあって決勝戦だけは見ようと人が集まる。娯楽の少ないこの世界において、これは数少ない最高級のイベントだ。
人が集まらない方がおかしい。
『一人はあの賢神、『最強の魔女』オーディン・ウァクラートの曾孫! 即ちそれは今は亡き『神秘の魔法使い』ラウロ・ウァクラートの息子である証明!』
会場はざわめき立つ。
血筋で考えるなら賢神になれるほどの逸材であり、その魔法を期待せずにはいられないだろう。
『自分の体を魔法に変えれるという特殊体質を武器に、最強の魔法使いの座を奪いに来た!』
会場へ一人の少年が入る。
白い髪と目、軽く尖った耳。エルフの血が混ざっているが故に整った顔立ち。
その内包する魔力は既に賢神クラス。
『アルス・ウァクラート!!』
歓声が鳴り響く。しかし人々は危惧する。そこまで強い魔法使いならば決勝戦も一瞬で終わるのではないかと。
しかしその危惧を払うように、闘技場に声が響いた。
『しかし、まだ勝敗は決まらない! 聞いたことはないでしょうか! 四大公爵家が一つ、ヴェルザード家に魔導に愛された少女がいると!』
その少女は有名だった。
魔導を使えること、武器を扱えること。それは貴族の中でもステータスになる。だからこそ、彼女の魔法の才はよく知られていた。
『次代の賢神十冠とも噂される程の才能! たった十歳で並の魔法使いを凌駕する技量を持ち、それを支える極まった戦闘センス!』
明るい緑色の髪が暗闇に映る。青い双眸が煌き、その顔は慢心ではなく確固たる実力からの自信に満ち溢れていた。
『エルディナ・フォン・ヴェルザード!!』
観客は歓声をあげるが、会場の二人は気にせず真っ直ぐ中央まで進む。
「覚悟しなさい、私が勝つわ!」
「まあ、精々足掻きますよ。」
二人は魔力を練る。その練度は既に学生の域を抜けている。
互いに将来は賢神へと到れるとすら思える程のポテンシャル。どちらが強いかなど、誰だって気になるに決まっている。
『それではこれより、アルス・ウァクラート対エルディナ・フォン・ヴェルザードの試合を行います!』
アルスは若干姿勢を低く、エルディナは特に体勢は変えず、そのままアルスの行動を観察する。
『始め!』
決勝の幕が開いた。
同刻、闘技場の地下通路。
選手しか通れないはずの場所であり、必然的に人通りも少ない。そこにフランがいた。
無論、決勝戦を行うためにだ。
だがそれ以外にも二つの人影が。それは騎士だった。腰に剣を差し、騎士の礼服を着込んだ二人の騎士だ。
「ここから先は通行止めだぜ、坊主。」
「悪いことは言わねえ、帰りな。」
フランは足を止める。
見覚えがあった。昼間、勝ちを譲れと言ったあの子供。二人はその騎士であったのだ。
「断る。」
「そうかい、なら仕方ねえな。」
勿論、答えは決まっていた。だからこそ騎士も迷いなく剣を抜く。
聞いたのは最終通告というものだろう。
「恨まないでくれよ、これも仕事なんだ。」
「あの人をどんな手を使っても一位にしろって言われててね。本当に申し訳ないけど、2位で我慢してくれ。」
確かにフランは強い。下手な剣士なら簡単に倒せるぐらいには強いだろう。
しかし、それは子供にしてはという話だ。
大人となれば体格の問題もあり、フラン程度の剣士なら腐るほど存在する。
しかも騎士は二人。例え一人ずつならフランでも対処できても、一流の騎士の連携は二人以上の力を発揮するものだ。
「外道が、恥を知れ。」
「この仕事が一番稼ぎがよくてね。」
「別に命は取らねえんだから大人しくしてな。」
フランも剣を抜く。無骨な剣だ。
フランには不正をして勝つ人間の気持ちが分からないわけではなかった。
元々自分がスラムの出身であり、生き残るために法を破ってきたからだ。
そう、非難はしない。フランはありあらゆる不正を認める。
それを真正面から全て喰い破ってこその強者だと。心の底からそう考えているのだ。
「お前らを倒して、俺は決勝に行く。」
「舐めんじゃねえぞ!お前はここでリタイアだ!」
「数ヶ月は剣を握れないようにしてやる!」
決勝の幕は、まだ開かない。
他の生徒が競った試合をする中、この二人だけはそれがない。文字通り、格が違ったのだ。
『さて、いよいよ決勝戦です。ここで戦う生徒の紹介を致しましょう!』
日が暮れ始める頃、決勝は始まる。
翌日の5年生の試合ほどではないが、一年の決勝戦は人が集まる。
一日目最後の試合にして、一年生の最強を決める戦いだ。注目度も高い。
更にこの時間帯は仕事が終わる頃。そういう理由もあって決勝戦だけは見ようと人が集まる。娯楽の少ないこの世界において、これは数少ない最高級のイベントだ。
人が集まらない方がおかしい。
『一人はあの賢神、『最強の魔女』オーディン・ウァクラートの曾孫! 即ちそれは今は亡き『神秘の魔法使い』ラウロ・ウァクラートの息子である証明!』
会場はざわめき立つ。
血筋で考えるなら賢神になれるほどの逸材であり、その魔法を期待せずにはいられないだろう。
『自分の体を魔法に変えれるという特殊体質を武器に、最強の魔法使いの座を奪いに来た!』
会場へ一人の少年が入る。
白い髪と目、軽く尖った耳。エルフの血が混ざっているが故に整った顔立ち。
その内包する魔力は既に賢神クラス。
『アルス・ウァクラート!!』
歓声が鳴り響く。しかし人々は危惧する。そこまで強い魔法使いならば決勝戦も一瞬で終わるのではないかと。
しかしその危惧を払うように、闘技場に声が響いた。
『しかし、まだ勝敗は決まらない! 聞いたことはないでしょうか! 四大公爵家が一つ、ヴェルザード家に魔導に愛された少女がいると!』
その少女は有名だった。
魔導を使えること、武器を扱えること。それは貴族の中でもステータスになる。だからこそ、彼女の魔法の才はよく知られていた。
『次代の賢神十冠とも噂される程の才能! たった十歳で並の魔法使いを凌駕する技量を持ち、それを支える極まった戦闘センス!』
明るい緑色の髪が暗闇に映る。青い双眸が煌き、その顔は慢心ではなく確固たる実力からの自信に満ち溢れていた。
『エルディナ・フォン・ヴェルザード!!』
観客は歓声をあげるが、会場の二人は気にせず真っ直ぐ中央まで進む。
「覚悟しなさい、私が勝つわ!」
「まあ、精々足掻きますよ。」
二人は魔力を練る。その練度は既に学生の域を抜けている。
互いに将来は賢神へと到れるとすら思える程のポテンシャル。どちらが強いかなど、誰だって気になるに決まっている。
『それではこれより、アルス・ウァクラート対エルディナ・フォン・ヴェルザードの試合を行います!』
アルスは若干姿勢を低く、エルディナは特に体勢は変えず、そのままアルスの行動を観察する。
『始め!』
決勝の幕が開いた。
同刻、闘技場の地下通路。
選手しか通れないはずの場所であり、必然的に人通りも少ない。そこにフランがいた。
無論、決勝戦を行うためにだ。
だがそれ以外にも二つの人影が。それは騎士だった。腰に剣を差し、騎士の礼服を着込んだ二人の騎士だ。
「ここから先は通行止めだぜ、坊主。」
「悪いことは言わねえ、帰りな。」
フランは足を止める。
見覚えがあった。昼間、勝ちを譲れと言ったあの子供。二人はその騎士であったのだ。
「断る。」
「そうかい、なら仕方ねえな。」
勿論、答えは決まっていた。だからこそ騎士も迷いなく剣を抜く。
聞いたのは最終通告というものだろう。
「恨まないでくれよ、これも仕事なんだ。」
「あの人をどんな手を使っても一位にしろって言われててね。本当に申し訳ないけど、2位で我慢してくれ。」
確かにフランは強い。下手な剣士なら簡単に倒せるぐらいには強いだろう。
しかし、それは子供にしてはという話だ。
大人となれば体格の問題もあり、フラン程度の剣士なら腐るほど存在する。
しかも騎士は二人。例え一人ずつならフランでも対処できても、一流の騎士の連携は二人以上の力を発揮するものだ。
「外道が、恥を知れ。」
「この仕事が一番稼ぎがよくてね。」
「別に命は取らねえんだから大人しくしてな。」
フランも剣を抜く。無骨な剣だ。
フランには不正をして勝つ人間の気持ちが分からないわけではなかった。
元々自分がスラムの出身であり、生き残るために法を破ってきたからだ。
そう、非難はしない。フランはありあらゆる不正を認める。
それを真正面から全て喰い破ってこその強者だと。心の底からそう考えているのだ。
「お前らを倒して、俺は決勝に行く。」
「舐めんじゃねえぞ!お前はここでリタイアだ!」
「数ヶ月は剣を握れないようにしてやる!」
決勝の幕は、まだ開かない。
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