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ChapterⅧ:FinalZone
No147.For reopening
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恋音を連れて、俺は歪の元から離れた。そして、そっと抱えていた恋音を床に降ろす。
「失っても取り返す。……もう、この連鎖が絶ち切れているといいな…。」
刹那、緊張が俺を襲う。実証した所を見ていないため、万が一があるかもしれないから。
「……そんなの気にしても仕方ねぇか。」
かと言って、このままにしておいても先に進まない。
瓶のキャップを外し、俺は恋音を起こす。
「……撫戯…?…撫戯!」
起きるや否や、彼女は俺に飛びついて来た。
「ファンに見られたらどうする気だ?」
「嘘だね。君は周りからの目なんて気にも止めてないって知ってるから!」
「まぁな。………不安な思いをさせてすまない。」
「気にしてないよ。信じてたから。」
「恋音……。」
俺は彼女を抱き返した。今の俺達の関係はマネージャーとアイドルじゃない。昔みたくの、仲の良い幼馴染としての関係だ。
そして、蜥蜴の乱入により途絶えてしまったあの日の続きを始める。
「相思相愛…それは変わらいんだよな?恋音。」
そう聞くと、彼女は耳元でこう言った。
「この気持ちだけは、ずっと変わらないよ。」
「……なら、良かった。」
お互いの気持ちは充分だ。しかし、彼女と付き合う上ではいくつか問題がある。その中で理由の大半を占めるのが、彼女が割と売れたアイドルであるという事。そして、俺がこの職を離れなければいけないという事。
マネージャーという仕事は種田に雇われて成り立っている。転職するにしても、元暗殺者が公になった状態じゃ、どこにも就けやしない。
今回の一件で、事実上多くの命を救った俺達だが、所詮は陰の英雄に過ぎない。
更に、その社会に属する俺が彼女と付き合おうものなら、彼女の評価に直結する。そうでなくても世を動かしかねないというのに。
正直、俺が破滅するだけなら構わない。殺される?構わない。死と隣合わせの社会で生きた俺には些細な問題だ。
ただ、恋音が危険な目に遭うのは許せない。折角救ったというのに、また振り出しになる。
互いの幸せは、一体何なのだろうか。
「恋音。……これからどうしたいのか。正直に答えてほしい。」
「え…?私は撫戯と一緒に……」
「今、そうして後悔しないか?」
「ッ!」
そう言うと、彼女は驚いたような、寂しいような表情を浮かべた。
少々心が傷むが、構わず俺は続ける。
「散々やってきて今更言うのもあれだが、これ以上に“孤高”を極めるのはリスクが高すぎる。俺一人が負うだけならいいが、もし恋音に火の粉が降り掛かったらと思うと、……俺にこれ以上は無理だ。」
彼女は涙目になっている。なんだか昔に戻ったような、そんな不思議な感覚だ。
「………我儘だってのは分かってる。だけど……だけど!……私は撫戯と一緒に居たいんだよ……。」
涙を零してそう言う恋音。
ああ、俺だって付き合いたいさ。お互いの気持ちが確認出来ているのに、先に進めないなんてもどかし過ぎる。
だが、自己中心的な世界はそれを許さない。双方相手を“悪”だと認識し、叩き潰し合う。それは、本来あるべき形ではないはずだ。
それでも、それに適応できなければ、破滅するだけだ。少なくとも、“暗殺者”という経歴を自信を持って言える時代が来るまでは。
「ごめん…。俺だって愛してるけど、付き合えない。……今は。」
俺も涙が一滴流れる。それを拭き取り、決心した目で俺は彼女を目を見た。
「だから、俺は他にとやかく言われる筋合いはない立場まで、磨き上げる。国宝を育て上げた男だぞ?…不可能はねぇよ。」
「それって……。」
「その通りだ。……俺も芸能界で生きてやる。裏方としてではなく、変革者として。……暗殺者。最初は煙たがれるとは思うが、俺達が伝説を残したのは紛れもない事実。サイレンスの面々は、必ず我々への眼差しを変えてくれると信じている。……恋音。文句の付け所がないほどお前に相応しい男になったら、迎えに行く。それまで……どうか待っていてほしい。」
そう熱弁し、俺は頭を深々と下げた。
すると、クスッと口角が上がる音が聞こえ、彼女は俺の手を握った。
そして、自身の髪飾りを握らせた。
「これは……。」
「分かった。待ってるから、その時を。だから……音信不通にだけは、絶対にならないでよね!」
「あはは……承知。」
それからしばらくいちゃついて、俺達はそれぞれの道を歩むべく、一時の別れを告げた。
「それじゃあな。」
「うん!」
「「……また、会う日まで。」」
「失っても取り返す。……もう、この連鎖が絶ち切れているといいな…。」
刹那、緊張が俺を襲う。実証した所を見ていないため、万が一があるかもしれないから。
「……そんなの気にしても仕方ねぇか。」
かと言って、このままにしておいても先に進まない。
瓶のキャップを外し、俺は恋音を起こす。
「……撫戯…?…撫戯!」
起きるや否や、彼女は俺に飛びついて来た。
「ファンに見られたらどうする気だ?」
「嘘だね。君は周りからの目なんて気にも止めてないって知ってるから!」
「まぁな。………不安な思いをさせてすまない。」
「気にしてないよ。信じてたから。」
「恋音……。」
俺は彼女を抱き返した。今の俺達の関係はマネージャーとアイドルじゃない。昔みたくの、仲の良い幼馴染としての関係だ。
そして、蜥蜴の乱入により途絶えてしまったあの日の続きを始める。
「相思相愛…それは変わらいんだよな?恋音。」
そう聞くと、彼女は耳元でこう言った。
「この気持ちだけは、ずっと変わらないよ。」
「……なら、良かった。」
お互いの気持ちは充分だ。しかし、彼女と付き合う上ではいくつか問題がある。その中で理由の大半を占めるのが、彼女が割と売れたアイドルであるという事。そして、俺がこの職を離れなければいけないという事。
マネージャーという仕事は種田に雇われて成り立っている。転職するにしても、元暗殺者が公になった状態じゃ、どこにも就けやしない。
今回の一件で、事実上多くの命を救った俺達だが、所詮は陰の英雄に過ぎない。
更に、その社会に属する俺が彼女と付き合おうものなら、彼女の評価に直結する。そうでなくても世を動かしかねないというのに。
正直、俺が破滅するだけなら構わない。殺される?構わない。死と隣合わせの社会で生きた俺には些細な問題だ。
ただ、恋音が危険な目に遭うのは許せない。折角救ったというのに、また振り出しになる。
互いの幸せは、一体何なのだろうか。
「恋音。……これからどうしたいのか。正直に答えてほしい。」
「え…?私は撫戯と一緒に……」
「今、そうして後悔しないか?」
「ッ!」
そう言うと、彼女は驚いたような、寂しいような表情を浮かべた。
少々心が傷むが、構わず俺は続ける。
「散々やってきて今更言うのもあれだが、これ以上に“孤高”を極めるのはリスクが高すぎる。俺一人が負うだけならいいが、もし恋音に火の粉が降り掛かったらと思うと、……俺にこれ以上は無理だ。」
彼女は涙目になっている。なんだか昔に戻ったような、そんな不思議な感覚だ。
「………我儘だってのは分かってる。だけど……だけど!……私は撫戯と一緒に居たいんだよ……。」
涙を零してそう言う恋音。
ああ、俺だって付き合いたいさ。お互いの気持ちが確認出来ているのに、先に進めないなんてもどかし過ぎる。
だが、自己中心的な世界はそれを許さない。双方相手を“悪”だと認識し、叩き潰し合う。それは、本来あるべき形ではないはずだ。
それでも、それに適応できなければ、破滅するだけだ。少なくとも、“暗殺者”という経歴を自信を持って言える時代が来るまでは。
「ごめん…。俺だって愛してるけど、付き合えない。……今は。」
俺も涙が一滴流れる。それを拭き取り、決心した目で俺は彼女を目を見た。
「だから、俺は他にとやかく言われる筋合いはない立場まで、磨き上げる。国宝を育て上げた男だぞ?…不可能はねぇよ。」
「それって……。」
「その通りだ。……俺も芸能界で生きてやる。裏方としてではなく、変革者として。……暗殺者。最初は煙たがれるとは思うが、俺達が伝説を残したのは紛れもない事実。サイレンスの面々は、必ず我々への眼差しを変えてくれると信じている。……恋音。文句の付け所がないほどお前に相応しい男になったら、迎えに行く。それまで……どうか待っていてほしい。」
そう熱弁し、俺は頭を深々と下げた。
すると、クスッと口角が上がる音が聞こえ、彼女は俺の手を握った。
そして、自身の髪飾りを握らせた。
「これは……。」
「分かった。待ってるから、その時を。だから……音信不通にだけは、絶対にならないでよね!」
「あはは……承知。」
それからしばらくいちゃついて、俺達はそれぞれの道を歩むべく、一時の別れを告げた。
「それじゃあな。」
「うん!」
「「……また、会う日まで。」」
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