多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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ChapterⅧ:FinalZone

No139.Branch

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 清心将角が生命再起会を立ち上げる時、裏社会表社会関係なしに、様々な分野から招集された。
 聖薇、凍白、柊などと並ぶ慧芽けいが一族が出自の俺は、生命再起会に雇われた。
 大犯罪横行の時代より以前から暗躍していた暗殺者の一族であった。何なら、一族自体がこの業界に染まった初の事例だった。
 慧芽はグレたか金に釣られたからの暗殺者とは訳が違う。ここに生まれたら、殺戮のプロフェッショナルになる事が強要される。
 あまりに歴史が長いため、何が一族をそうしたのか、いつからこうなったのかすら分からない。
 
 
 育てられるがまま、俺はすぐに重大任務に選抜されるほどの暗殺者となった。「Guiltyギルティー」という名の利益を求める大規模犯罪組織に一族全体で所属していたが、Guiltyはサイレンスに裁かれた。
 トップシークレットの待遇を受けていた慧芽は、Guilty崩壊の兆しが見えた頃すぐに独立し、逮捕を免れた。


 しかし、勘が鋭い歯サイレンスは残党がいないかの調査を始め、我々の一族の居場所が特定されてしまった。
 当時中学生だった俺は潰れゆく両親、兄上方に逃され、路頭を迷う事となった。最早、捕まるのも殺されるのも時間の問題だ。



 「迷える才能が辿り着く先に宛はあるのか?」

 そんな夜、清心に会った。

 「………。」

 「無いじゃないか。居場所を奪ったサイレンスが憎いか?」

 「………。」

 「……居場所と小遣いを与えてやろう。その代わり、どんな任務でもしっかり働いてもらう。」

 「…例えば……?」

 「邪魔者の排除だ。社会運営に支障をきたす連中だ。」

 「……悪くないですね。」

 行く宛の無かった俺は、あっさりと清心に就いた。



 だが、あくまでも俺の立場は雇われ人形に過ぎない。どれだけ優秀であろうとも、それだけは永久不変の原理だ。








 「………違う、俺は……“君と同じ立場に囚われ殺戮を繰り返した奴”だ。変われなかった失敗例、分岐の片割れだ。」

 「……そうか。だったら、哀しいな。俺達。」

 刹那、薊は神経を集中させるように、計算された動きでこちらとの距離を詰めてきた。
 待ち構えていた俺はすぐに奴を視界内でターゲットし、隙を伺いながらナイフによる追撃を避けた。

 「境遇ってのは、何故こんなにも何処かで分岐するものなのか。……最初にターゲットとしての君の情報を閲覧した時、何とも言えない感情に襲われた。」

 そう言って奴はバタフライナイフを凄い高度な軌道を描いて迫らせてきたが、俺はそれを片方の拳銃で受け止め、もう片方の拳銃で撃った。
 しかし、奴は至近距離にも関わらず、銃弾が身体を貫通するより先に、位置をズラした。

 「最初に会った時言ったよね?……君が邪魔な存在だって。それは任務上の意味もあり、単なる私怨でもあった。……あの時、俺は殺さなかった。記憶消去という警告で済ませたのに、君は未だこの場に立っている。……消えればいいだけの話だった。俺の視界から。」

 そうして、奴は俺に追加の毒を打ち込んだ。発砲直後の至近距離であったため、回避は間に合わなかった。
 しかもかなり深く刺さり、血が滲む。当たりどころによっては死んでいたし、毒もじわじわと命の秒針を加速させていた。
 
 「はぁ…………なんでお前の自虐が、俺にも刺さってくるんだか……。」

 「………。」

 俺は薊を振り払い、着地際に手足を撃った。すると、奴も血でまみれた。
 既に奴からは闘志も覇気も消え失せており、俺自身もこれ以上続けても両者くたばるのは目に見えていた。
 精神体力が先に尽きた方が実質的に負ける。それは共通認識だ。

 
 俺は奴に銃口を突き付けた。奴もまだ抵抗しようとバタフライナイフを構えたが、銃口が額と接触すると、ナイフを捨てた。

 「白薔薇………鍵だ。」

 そう言って、奴は鍵を投げてきたので、俺はキャッチして口を開いた。

 「薊の本当の名は……」

 「慧芽紫雨しぐれ。白薔薇は?」

 「聖薇歪。……清心の目的は一体……」

 「それは、近々嫌でも知る事になる。……俺から言えるのは、奴に就いた事を恥じたいくらいには、肯定される事ではない。……開放を果たしても、油断だけはするな。そこからが本番だ。」

 「……肝に命じておく。」

 そう言って、俺は引き金を引いた。
 視線を下に落とすと、あの薊の覇気は見る影も無かった。
 毒と刺し傷による痛みで視界がぼやける中、俺はあの扉の部屋に向かった。銃声が鳴り止んでいる。もし蝋燭が勝ち残っていたら、終わる。
 我々の完全勝利を祈り、瀕死の身体を動かした。
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